教えて!『指数将軍』その5
時価総額指数の役割
さて、指数がどのように算出されているかを説明したので、次に、現在主流になっている「時価総額加重平均型指数」について、資産運用におけるその価値を詳しく見ていきましょう。今回の説明を理解していただければ、指数が資産運用にいかに役立っているのかを理解していただけると思います。
前回書いた通り、時価総額は「株価×上場株式数」です。つまり、上場株式の時価が時価総額です。
では、上場株式数とは何でしょうか?これは東証などの証券取引所に上場している株式の総数で、通常は企業が発行している全株式数と同じです。(つまり、上場株式数=発行済株式数。例外はNTTなどで、発行済株式数の一部は政府が保有していて、市場に上場していないものがあります。)
株式投資家は、様々な投資戦略を駆使して、株式売買をし、株式を所有しています。個人投資家は、テクニカル分析や証券会社のアドバイス、あるいは配当利回りからの魅力などの投資戦略を使うでしょう。あるいは、身近な銀行で販売されている投資信託に運用を委託している方も多いでしょう。
一方、機関投資家は、資産運用会社に委託して、パッシブ運用やアクティブ運用(個別銘柄リサーチによるファンダメンタル運用や計量手法を駆使したクォンツ運用など様々な運用戦略があります)、あるいはヘッジファンドなどが得意とするロング・ショートやマーケット・ニュートラル等々、多種多様な運用戦略で株式投資を行っています。
さて、このような株式投資家が様々な投資を通じて、何を最終的に所有しているかと言えば、株式になります。(当たり前ですね。)投資信託の場合は、投資信託が個別銘柄の株式を所有していますし、個人投資家では直接個別銘柄の株式を所有しています。
この「すべての投資家の所有する株式を足し合わせたもの」が上場株式数になります。上場する株式は必ず誰かに所有されており、誰にも所有されていない株式は存在しません。
あらためて時価総額に戻ります。
時価総額とは、つまり、「その時点の株式投資家が全体として所有する富の時価を表している」と言えます。これが、時価総額指数が機関投資家(特に長期的な投資をする年金基金など)にとって重要な役割を持っている理由です。
機関投資家は一つの運用商品や特定の銘柄だけに投資しているわけではありません。様々な運用商品に同時に投資しながら、リターンを上げようとします。
その投資の結果を測定する上で、時価総額指数をどの程度上回ったのか・下回ったのか、というのが最も合理的な方法です。なぜなら、時価総額指数は全投資家の投資結果の動きを表しており、まさに「市場平均」だからです。「TOPIXが3%上がった」時に自分の株式ポートフォリオが2%上がっていた場合、その投資家は「平均以下」の成績だったと客観的に言うことができます。
株式投資は「ゼロ・サム・ゲーム」です。株式で儲けた人の裏にはかならず損をした人がいます。(株が割高になったところで売り抜けた人の裏には、そこで株を買った人がいなければなりません。)これを「ゼロ・サム・ゲーム(合計すると全体はゼロになるゲーム)」と言います。(遊び、と言う意味でゲームと言っているわけではありませんので。念のため)
そのような株式投資なので、機関投資家の株式ポートフォリオの投資結果が時価総額指数を上回っていれば「投資計画が正しかった」となり、下回っていれば「投資計画で修正すべき点はどこかを考える」ことになります。(その結果、成績の悪かった運用者が解雇されたりします。)
従って、機関投資家にとっては時価総額指数が非常に重要な投資基準となり、また投資計画を立てる際の出発点にもなります。
(指数将軍)