配当で貴族入り? 米国株の長期投資だからこそなせる業
提供元:岡三証券
「昨晩のNY市場は上昇!本日の日本株も好調な出足となりそうだ」。朝の投資情報番組などでよく聞くフレーズだ。このように日本株に投資する上でも、動向が見逃せない米国株。日本株投資の風見鶏としての役割だけにとどめず、投資対象として考えてみるのはいかがだろうか。
米国株式市場は世界最大の時価総額を誇り、バラエティに富む企業群が揃っていることから世界の投資マネーをひきつけている。そのため長期的なトレンドで見た場合、米国株はリーマン・ショックなどの一時的な調整局面を挟むものの、基本的には50年以上にわたり上昇を続けている。米国株投資は、銘柄選びを大きく間違えることなく長期保有を行うことで、保有資産が増える可能性が比較的高い市場といえよう。
その証左といえる人物が、ウォーレン・バフェット氏だろう。世界的な著名投資家の一人で、世界最大の投資持ち株会社バークシャー・ハザウェイの会長を務める同氏は、主に優良な米国株を保有し続けることで巨額の富を築いた。
米国株式市場の魅力は、多種多様な業種が揃う銘柄層の厚さに加えて、世界を舞台にするグローバル企業からアメリカ国内に強みを持つ企業まで、様々な特性を持つことにある。どの銘柄に投資しようか目移りしてしまいそうだ。S&P500指数やNYダウ指数連動のETFなどに投資することで、限られた手元資金でもこうした企業に分散投資をすることが可能である。
また、米国企業は日本企業に比べ株主還元に積極的である点も株主としては嬉しいところだ。日本では「企業は経営者や社員のもの」との考えが根強い。一方、米国では「企業は株主のもの」という考えが浸透しており、これが米国企業の高い株主還元率につながっている。
配当利回りが高いかどうかだけでなく、「連続増配」も注目すべきポイントだろう。米国企業は堅調な業績動向を背景に継続的な増配が多くみられる。長年にわたって増配を実施するには、どのような市場環境でも安定的に収益を生み出すことが必要だ。言い換えれば、連続増配は将来の業績に対する自信の裏返しともいえ、現在のような世界景気に対する減速懸念が高まる場面でも有望な投資対象となろう。
そうしたなかで、米国には25年以上連続して増配を行う企業で構成されるS&P500配当貴族指数なるものがある。日本の東証でも同指数連動のETFが上場している。この指数は、長年に亘って上昇トレンドが続いている。低金利局面においては配当の魅力が高まることから、好配当銘柄に資金が向かいやすいが、2004年以降の利上げ局面においても、配当の魅力に陰りはみられず、S&P500指数を上回るパフォーマンスが続いた。S&P500配当貴族指数には、景気動向に左右されにくい生活必需品やヘルスケアセクターなどが多く組み入れられていることも一因とみられる。配当も、パフォーマンスも。なんともいいとこ取りに聞こえるものだが、これも米国株への長期投資だからこそなせる業か。
岡三証券株式会社 投資戦略部 グローバル株式戦略グループ長 忍足 眞理