創設50周年を迎えるASEAN
好調な周辺国もASEANの成長に寄与
提供元:アイザワ証券
今年8月8日にASEANは創設50周年の節目を迎える。設立当初は5か国(シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン)であったが、その後ベトナムやミャンマーなど5ヶ国が加わり、現在の加盟国は10ヶ国となっている。2015年末にはASEAN経済共同体(AEC)が発足し、ASEAN域内の関税自由化や人材交流などを進め、ASEAN全体がひとつとなって経済発展を目指そうとしている。
ASEANの優位点を挙げるとすれば、まず一番に注目されるのが人口だ。ASEAN10ヶ国の人口を合計すると、約6.3億人と、世界でみれば、中国、インドに次ぐ第3位の規模となる。シンガポール、マレーシア、タイは近年人口増加率が鈍化傾向にあるものの、全体には人口増加率も高く、人口の面での魅力は大きい。
また、もう一つの魅力が周囲に豊富な市場の大国を持っている、という地理的な特性だ。中国、インドとは隣接しているうえ、韓国、台湾、日本などとの結びつきも強い。ASEANが発展するうえで、周辺国も重要な役割を果たしているといえよう。
8月8日の50周年を迎えるにあたって、ASEANが力を入れているのが、観光促進だ。「Visit ASEAN@50」と称したキャンペーンで、ASEAN域外からの観光客を呼び込もうとしている。ASEANにおける観光大国であるタイでは、昨年10月のブミポン国王死去以来、まだ完全には立ち直っていないが、政策効果で完全復活が期待できそうだ。観光、消費は2017年のASEANの重要テーマになると思われる。
また、各国固有の材料として挙げられるのが、格上げの動きだ。5月19日には、大手格付け会社であるS&Pグローバルレーティングが、インドネシアの信用格付けをこれまでの「BB+」から「BBB―」に1段階引き上げた。
これにより、インドネシアが投資適格級に引き上げられたことになる。すでに、他の大手格付け機関であるムーディーズやフィッチは格付けを投資適格級としているが、S&P社も、インドネシアの財政赤字拡大のリスクは後退していると評価しているようだ。インドネシアでは、2015年秋より経済対策パッケージと称した景気対策を相次いで実施しているほか、金融緩和も継続的に実施しており、格付け機関からの評価替えにつながった一因といえよう。ASEAN最大の人口を持つインドネシアに対する投資が拡大すれば、ASEAN全体の発展に大きく寄与すると予想される。
なお、ASEAN域内ではないが、7月1日には英国から中国に香港が返還されてから20周年を迎える。ASEAN創設50周年を含めて、「アジア」に対する注目が高まりやすい1年になりそうだ。