深センの魅力
提供元:東洋証券
「紅いシリコンバレー」「華南の次世代型都市」などと形容される中国華南の大都市、深センが昨今話題になっている。
株式の投資対象としても注目されており、深セン上場銘柄を組み込んだ投資商品も売られている。
しかしながら、その深セン株式市場の実態はそれほど知られてはいないだろう。
深セン市場は上海同様、A株(人民元建て)とB株(香港ドル建て)に分かれている。かつて外国人投資家はB株投資のみが認められていたが、2016年12月に深港通(深センと香港の株式取引の相互乗り入れ)がスタートし、深セン市場の個別株への投資が可能になった。
深セン市場の18年1月末時点での時価総額は21兆7356億元(約370兆円、流通時価総額は15兆6777億元)で、上海市場の約3分の2の規模だ。
一方、上場銘柄数は2098銘柄で上海市場(1452銘柄)を大きく上回る。深セン市場にはメインボードに加え、中小企業市場、創業板があり、幅広い企業に門戸が開かれているのがその理由の一つだ。
それゆえ、売買代金も多く、直近では1日当たり2000億~3000億元前後(約3兆4000億~5兆1000億円)の商いが行われている。
深セン株はニューエコノミー分野の成長企業が多い。この点、金融やゼネコン、また過剰生産能力などが懸念される重工業や資源などいわゆるオールドエコノミーが主体の香港や上海市場とは大きく異なる。
主要500銘柄で構成される深セン成分指数を見ると、産業別ウエートでは「情報技術」が2割超と最も多い。
「一般消費財・サービス」「資本財・サービス」を加えると全体の半分以上を占める。バイオやフィンテックなど、広義のハイテクセクターの企業は7割超とも言われている。
高成長の期待できる企業ほどバリュエーションは高くなる傾向があるため、深セン成分指数の平均PER(2018年2月14日時点)は21.8倍と、香港ハンセン指数(14.2倍)や上海総合指数(16.2倍)と比べてやや割高感がある。
銘柄選定に際してはこの点に注意を払うべきだが、真の成長株かどうかを見極めることがより大事とも言える。
深セン上場の代表的な銘柄は、監視カメラで世界最大手の杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)、人工知能(AI)大手の科大訊飛(アイフライテック)、家電大手でロボット事業も強化中の美的集団などが挙げられる。
このほかにも、米アップルのiPhone向け部品を製造する歌爾などの新興企業も多い。宅急便大手の順豊HD、EC大手の蘇寧易購集団、三元系リチウム電池に強みを持つ国軒高科など特色ある企業も多く上場している。
深センは街全体が急速に成長している。17年の域内総生産(GDP)は2兆2000億元に達し、前年3位の香港を抜き、上海市(3兆元)、北京市(2兆7200億元)に次ぐ中国第三の規模の都市に浮上した。
外資を積極的に導入し、サービス業を重視し、近年はハイテク産業の強化に乗り出している。
1979年に誕生した新しい都市は、わずか40年足らずでイノベーションの街に変化を遂げている。
成長企業が多く上場している深セン市場。A株はこれまで外国人投資家にとって「未知なる世界」だったが、これからは有望な投資先としてますます注目されていくだろう。
今年は中国A株がMSCI新興国
指数に組み入れられる予定で、世界の機関投資家にとって「外せない」マーケットになると思われる。
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