投資信託ではできないETFの追加的な2つの収益機会
提供元:ウィズダムツリー・ジャパン
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ETFは単にコストの安い投資信託というわけではありません。
上場していることにより個別銘柄の株式と同様の手法を用いることで、一般的な投資信託にはできないような追加的な収益の機会を作り出すことができます。その代表例としてETFの空売りと貸株(セキュリティーズ・レンディング)を取り上げます。
空売り
ETFは株式と同じように空売りをすることが可能です。株式を借りてきて売りたてるのとまったく同じ手法でETFを空売りすることが出来ます。
ETFの空売りは個別銘柄ではなくある特定の株式または債券のバスケットのエクスポージャーを売りたてることになります。そのため、個別銘柄ではなくその対象市場全体が下落することに対する賭けをすることが出来ますし、また様々なヘッジの目的で利用されます。
例えば、先進国よりも新興国の方がよりよいパフォーマンスになると考えているのであれば、新興国のETFを買いたて、先進国のETFを売りたてることにより、その差による収益を狙うことが出来ます。
米国のETFは空売り残が定期的に公開されていますが、図表1で見られるように、市場環境によって空売り残も変動しています。これには、受け渡しの際に一時的に発生する貸し借り(所謂オペレーショナル・ショート)も含まれていますが、いずれにせよETFのショートポジション及び受益権の貸し借りというものが活発になされている様子が分かります。
図表1:HEDJの終値と空売り残の推移(出所:Bloomberg)
貸株(セキュリティーズ・レンディング)
株式またはETFなどの証券を空売りするということは、どこからかその証券を借りてくる必要があり、借り手は貸し手に借り入れのための手数料を支払う必要があります。
ETFを買い持ち(ロング)している投資家はこの貸し手の方に回ることにより、ETFの受益権の貸出による手数料を受け取る立場になることができます。
この受益権のレンディングは上場しているETFという形態をとっているファンドだからこそ可能であり、非上場の一般的な投資信託の受益権を貸し出すことは不可能です。そのため、投資信託には出来ないETFならではの追加的な収益機会といえます。
ETFの二重のレンディング
ETFについて解説している資料などには、ETFには二重のレンディングの機会があると書かれている場合があります。これはどういうことなのでしょう。
投資信託やETFなどはファンドで保有している証券を貸し出しているケースが多いです。この貸出による収益の一部はファンドに還元され、それは基準価額(NAV)に反映されることで投資家のリターンに貢献しています。これは通常の投資信託もETFも同様です。
しかし、上記で説明した受益権の貸し出しはETFにだけ可能な特徴です。ファンド内における保有証券の貸出とファンドの受益権自体の2つの貸出ができるということが通常の投資信託と比べてETFに新たな収益機会をもたらしているのです。
低コストだけではない
コストが低廉であるということはETFの特徴ですが、これだけではありません。空売りの可能性や受益権の貸出を利用することで、より柔軟に様々な収益機会を追求することや長期投資に追加の収益をもたらすことが可能です。
最近では日本の個人投資家に対しても、国内上場のETFはもちろん、海外のETFのレンディングサービスを提供する証券会社も出てきましたので、より幅広い活用の余地が広がってきています。ETFの受益権の貸出は、長期にETFを買い持ちしているような投資家にとっては、(税制面やリスクを勘案した上で)検討に値するのではないでしょうか。