予想より多い少ないがあります
上場投資信託(ETF)の収益分配について考えてみましょう
提供:日興アセットマネジメント
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7月は、残高の大きい上場投資信託(ETF)の決算、分配があります。この時期になると、機関投資家、個人投資家を問わず分配金を気にされる方も多いのではないでしょうか。
金利が低金利の最中、ETFの分配金に注目される投資家も増えていることと思われます。
そこでETFの収益分配について考えてみたいと思います。
ETFの収益分配
ETFの決算時には収益分配金が払われます(※)。収益分配原資はETFの発行済口数に応じて均等に分割、分配されます。よって収益分配金の増減は、①収益分配原資の増減、②ETFの発行済口数の増減に拠ります。
この原則を押さえておくことが重要です。
※分配原資が無い場合は当然に分配されません。
そこで、収益分配原資の範囲について確認してみましょう。
ETFは、信託の計算期間中に、信託財産について生じた配当、受取利息その他これらに類する収益の額から、支払利子、信託報酬その他これらに類する費用の合計額を控除した額の全額について行われることとなっています。
留意点としては、ETF内で株式を売買したことによる収益(キャピタルゲイン)が発生した場合は収益分配原資の範囲に入らないということです。当該収益はファンド内に留め置かれ再投資されます。ETFの収益分配原資は非上場投資信託と大きく違うのはここにあります。
とすると、代表的なTOPIXや日経225のETFは株式の配当利回りから信託報酬等のコストを差し引いた水準の分配が出てくることになります。しかしながら、実際に出てきた配当利回りが、結構ずれていることがあります。その仕組みについてご説明したいと思います。
収益分配金の希薄化、濃縮化とは
ETFは日々設定・償還(交換)が行われ、発行済口数が変動してゆきます。
収益分配原資がETFの発行済口数に応じて均等に分割、分配されるという制度は、特に決算期直前に大きな設定や償還(交換)が行われると、収益分配金の希薄化、濃縮化という現象が起きてしまいます。
まず、希薄化についてですが、当初1口あたり100の資産のETFに10の分配原資が溜まって、1口あたりの純資産額が110になっていたとします。ここで1口追加設定をすると110の価額で追加設定することになり、110の資産を払って220の純資産総額(資産210と分配原資10)になります。
ここでは分配原資はあくまでも10しかありません。決算、分配時にはこの10を2口で分け合い、1口あたりの分配金は5となってしまいます。これが希薄化です。
分配金を10得られるところが5となってしまったことから損をしたように受け止められることがありますが、ETFには210の純資産が残っており、1口あたりでは105の純資産となっています。
分配金として受け取ることができなかった5はETFの内部に留保されていることになり、経済的には損得が無い(※)ものとなっていることに留意する必要があります。
※追加設定した投資家にとっては、純資産110を払って1口のETF受益権を得て、5の分配金を受け取り純資産105のETF受益権1口が残るということになります。実質、5の分配金は元本を払い戻しただけのことになるのですが、投資家にとっては収益と認識することができるものの、課税対象となってしまいます。厳密に言えば、経済的には当該投資家にとって損得が無いということは言い切れないことになります。
次に濃縮化ですが、当初2口あたり210の資産のETFに10の分配原資が溜まって、1口あたりの純資産額が110になっていたとします。
ここで1口償還(交換)をすると110の価額で償還することになり、110の資産を払った後、ETFは110の資産総額(資産100と分配原資10)になります。ここでは分配原資はあくまでも10なので、決算、分配時にはこの10が払出されます。1口あたりの分配金は10となり、これが分配金の濃縮化です。
設定口数が解約口数より多いETFは、分配金の希薄化が起きやすくなります
設定口数が解約口数より多いETFは、分配金の希薄化が起きやすくなります。
しかしながら希薄化分はETFの内部に留保されておりますので、分配金が減って損失となっているものではありません。分配金に期待してETFに投資された方には、分配金の希薄化は残念に思われるかもしれません。
しかし、内部に留保されている点に着目し、保有されているETFの成長性を考えてみるのも面白いかもしれません。
本文が、ETF投資ご理解への一助となれば幸いです。