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景気拡大期の終わりはいつ?

「炭鉱のカナリア」は鳴いているか

提供元:みずほ証券

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カナリアの声が止む=危険のサイン

みなさんは「炭鉱のカナリア」という言葉をご存知ですか?

「炭鉱のカナリア」とは何らかの危険が迫っていることを知らせる前兆を指す慣用句の1つで、炭鉱等で有毒ガスが発生した際に、人間よりも先にカナリアが察知して鳴き声が止むことに由来します。その昔、炭鉱労働者がカナリアを籠にいれて坑道に入ったそうです。金融の世界では、株価の急落や景気変調のリスクを示すシグナルの意味で使われます。

なぜ、いまこの「炭鉱のカナリア」に注目が集まっているのかといいますと、7月に米景気の拡大が10年目に入り、株価の先行きを占ううえでその持続性に関心が高まっているためです。最近では、そのカナリアの代表格の1つである「米長短金利差」が2005年5月以来の水準に縮小、近く景気後退入りのサインが点灯するのではないかと警戒されています。

今、危険のサインは出ているか

では、そのほかのものを含め、全体として「炭鉱のカナリア」が鳴き止んでいるのか、あるいは鳴き続けているのかをみていきましょう。

ここでは、企業景況の代表指標である「米ISM製造業景況指数(新規受注)」、「米労働分配率」、「米長短金利差」、消費者心理を表す「米消費者信頼感指数」の4つを取り上げます。

まず、「企業景況」と「消費者心理」は、実は2017年12月、18年2月にそれぞれ直近の高値をつけて約半年が経過しており、いわゆる「鳴き止んだ」状態にあります。仮にこのまま両指標とも高値を更新できないと、「鳴き止んだ」と判定され、過去平均に照らせば23年9月か19年2月に景気ピークをつける可能性が示唆されます。ただ、現状では、両指標とも堅調を維持しており、再び高値を更新する可能性がありますので「鳴き止んだ」と判定するのは時期尚早です。また、景気拡大局面終盤の労働需給ひっ迫化を示す「労働分配率(の底打ち)」も14年9月にすでに底入れしており、18年4月に景気ピークをつけた可能性が示唆されます。しかし、こちらは過去に比べ回復力が弱く、回復実勢から戻るべき水準への到達時期を推定しますと、ピークは早くて22年以降となりそうな情勢です。日本と同様、足元の米景気拡大の“細く長く”を反映しています。最後にもっとも身近で、かつ近く景気後退入りのサインを発する可能性が高いと指摘されている「長短金利差」は7月末現在、未点灯(米10年国債利回り3.0%、同2年国債利回り2.7%→金利差0.3%)で、今後、現行の年3~4回(1回につき0.25%)のペースで米国の利上げが続いたとしても、長短金利が逆転するのは19年に入ってからとみずほ証券投資情報部では見込んでいます。この場合、景気ピークは早くてもその18ヵ月後、つまり20年後半以降となります。

景気拡大期の終わりはいつ?

結論として「炭鉱のカナリア」は幾羽か鳴き止んでいるようにみえるものもありますが、現在の経済実勢にかんがみますと、全体に「鳴き止んだ」と判断するのは時期尚早です。したがって米景気が今後1年以内にピークをつける可能性は低く、米景気拡大は19年7月に過去最長を更新、景気のピークは早くて20年後半から22年以降になると見込んでいます。ちなみにNYダウは過去3回の景気後退局面で後退入りの3ヵ月~8ヵ月前に高値をつけています。この例にしたがえば、仮に米景気が先行き後退するとした場合でも、NYダウの直前高値想定時期は早くて20年前半。米経済の成長率そのものは18年に+3%近くに加速した後、減税効果はく落で20年には潜在成長率2%弱程度に減速すると見込まれますが、この間の利益成長を反映し、米国株の強気相場は20年にかけ続く可能性が示唆されます。

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景気減速局面で有効な投資戦略

では、米景気の拡大が続きながらも、景気拡大のペースが下がる、いわゆる景気減速局面で有効な投資戦略はどのようなものがあるのでしょうか。過去の傾向でみますと、経済成長の勢いが鈍化する景気減速局面では、「ピュアグロース」「モメンタム」「クオリティ」の要素が強い銘柄が市場平均に対し優位な動きになると想定されます。景気減速局面では、景気敏感株の利益成長率が低下し、相場全体が軟調に推移しやすくなる傾向があります。このため、投資家の関心は、①景気が減速しても安定した業績が期待されるクオリティ株、②売上高および利益の成長性が高いグロース株、③株価が堅調に推移しているモメンタム株、に向かいやすくなると考えられます。今後の銘柄選びの参考にしてみてください。

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ちなみに米国上場のETFにはS&P500グロース指数に連動するように運用される「バンガード・S&P500グロースETF(コードVOOG)」やクオリティや配当に着目した「ウィズダムツリー 米国株クオリティ配当成長ファンド(コードDGRW)」があります。日本には同様のETFは上場していませんが、ファクター戦略に着目したETFでは「iシェアーズ米国高配当株ETF(モーニングスター配当フォーカス)(コード1589)」や「NEXT FUNDS 野村日本株高配当70連動型上場投信(コード1577)」、S&P/JPX 配当貴族指数に連動するように運用される「One ETF 高配当日本株(コード1494)」などがあります。

 

提供元:みずほ証券

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