投資ブロガー9人が集結した、懇談会に潜入…

ETFが個人投資家に普及するには?

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男性7人、女性2人の投資ブロガーが集まった今回の懇談会。書籍を出したり、マネー誌で取り上げられたりする経験がある人も

男性7人、女性2人の投資ブロガーが集まった今回の懇談会。書籍を出したり、マネー誌で取り上げられたりする経験がある人も

3月21日に日興アセットマネジメントで開催されたブロガー懇談会。9人の著名投資ブロガーが参加して、ETF普及のためになにが必要か、同社のETFセンター長の今井幸英氏、そして東京証券取引所の担当者と忌憚ない意見をぶつけ合った。

課題は“カスタマー目線”

2008年から日興アセットマネジメントでETFセンター長、ETF開発部長、ETFプロモーション部長を務める、今井さん

2008年から日興アセットマネジメントでETFセンター長、ETF開発部長、ETFプロモーション部長を務める、今井さん

会の直前、今井氏に話を聞くと、日興アセットマネジメントが主催でETFに特化した懇談会をブロガーと行うのは今回が初とのこと。開催の理由を、「自分たちでは当たり前と思っている商品開発やプロモーション戦略に、カスタマー目線の気づきが必要だったから」と語ってくれた。

そもそも、ETFとはTOPIXなどの指数と同じ値動きをするように運用されている投資信託を上場した金融商品。株式と投資信託のいいとこ取りとも言われる。例えば、TOPIXに連動するETFなら、TOPIXの算出に採用されている東証一部上場企業全てに分散投資しているようなもの。投資経験者はもちろんのこと、初心者も使いやすい金融商品なのだ。

「少子高齢化が進み、これまでのような手厚い社会保障が期待できなくなる今後、投資は身近にならざるを得ません。自ら年金を積み立てるiDeCo(個人型確定拠出年金)も加入できる対象を拡大しました。投資初心者の方々に、ETFを上手く活用していただきたいのですが、我々ETFの組成会社である運用会社の説明はどうも難しすぎる。そこで、ブロガーの方々のお力をお借りしようと思った次第です」

なぜETFは個人投資家に普及しないのか?

「ETFの本当の魅力をわかってもらえていない人も多い」(今井さん)

「ETFの本当の魅力をわかってもらえていない人も多い」(今井さん)

日本のETFの保有者割合のうち8割は機関投資家であり、個人は2割未満に過ぎないという。今井氏はその理由を赤裸々に語る。

「ETFが日本に本格導入されたのは2001年。そもそもは、銀行の不良債権処理を推し進めることが目的でした。基本的に個人投資家向けではなかったため、当然、ETFも普及どころか、その存在さえ広まらなかった」

潮目が変わったのはここ最近だ。アベノミクスによる株価上昇、日銀によるETFの買入れなどで、その存在は徐々に個人投資家にも知られていく。ETF商品自体も進化を続け、当初は日経225やTOPIXに連動した商品しかなかったが、外国株や外国債券、金、為替などに連動する様々な商品が開発された。

「それでも、取引が少なく、売りたいときにすぐ売れないように見えてしまう商品もあります。これも、普及を阻んでいる要因のひとつ。ただし、金融庁はこれらの課題を解決すれば、ETFは長期分散投資に有効と認めており、個人が安心して買えるETF市場の形成に舵を切りました。これはとても大きなパラダイムシフトです」

「ETFで大儲けする人が増えれば普及は進むはず」

懇談会は和気あいあいと始まり、徐々に熱を帯びていった

懇談会は和気あいあいと始まり、徐々に熱を帯びていった

そして、始まった懇談会。まず的になったテーマは、「なぜ投資は一般に広がらないのか?」。口火を切ったのは、女性のブロガーだった。自らは、子どもができたタイミングで将来の社会保障が不安になり投資を始めたという。

「給料は増えないし、子どもの学費も学資保険だけで足りるかどうか不安。それで、投資を始めました。ただ、結婚してない友人に話しても、あまり同意は得られませんでした」とのこと。

投資歴17年の女性は「セミナーなどに出ると、将来インフレがくるとか、政府は貯蓄から投資へと主導しているといった説明が多い。でも、自分には響かなかった」と語る。“投資に興味を持っている人と持っていない人が両極端。持っていない人をどう取り込むかが課題”とその場の総意としてまとまった。

現在は存在しない、日本を含めた世界株式のETFがほしい、という意見も

現在は存在しない、日本を含めた世界株式のETFがほしい、という意見も

では、具体的な商品に関してはどうか。

「数が多すぎるのも選ばれない要因のひとつでは?」という声が上がる。現在、東証で売買されているETFは206銘柄(2017年3月現在)。参加者のなかからは「日本株、先進国株、新興国株、新興国債券の4つくらいでいいかも」という大胆な意見も。

「株や不動産で儲けたという記事はたくさん見る。しかし、ETFで一財産築いたという話は聞いたことがない。世に出て20年という新しい金融商品であることも関係していると思うが、ETFでの資産形成に成功した人の事例が増えれば、もっと個人投資家に受け入れられるのではないか」という本質的な話もあった。

“流動性の低さ”に関しては、解決策のひとつとして東証の担当者は「マーケットメイク制度」を今後導入することを説明。これは、マーケットメイカーとなる証券会社や海外の専門会社が、売り買いに応じる値段と気配を提示し、合致した注文について売買注文に応じるというもの。つまり、取引量が少なくても売買できる制度だ。ブロガー間では、非常に専門的で高度な意見交換がなされ、その是非や制度に関する詳細説明、それに対する質問などが行われ、大いに盛り上がった。

アメリカでは普及しているETF。日本はまさにこれから

最後に、懇親会の感想を一部のブロガーに求めたところ、「この手のイベントは、特定の金融商品をブロガーに宣伝してもらうために開催されることが多い。今回のように意見を下さい、という会は珍しく、意見を聞いてもらえてありがたい」と、ETFを本気で普及させようとする姿勢に好意的な意見が聞かれた。

また、「ETFはアメリカでは個人投資家の投資が凄く伸びている金融商品。日本で資産運用のコア商品になるのはこれからだと思う。初心者にオススメしやすい商品だし、東証が力を入れているのはいい傾向」という声も。

約2時間にわたって行われた今回の懇談会。ETF自体が個人投資家に勧めやすい商品であることを認めながら、よりわかりやすい言葉での商品説明や使いやすい制度設計、魅力的な商品開発の必要性を確かめ合う有意義な時間となった。

(取材・文=笹林 司/撮影=林 和也)

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