投資信託のトレンドが分かる!
2017年9月 投資信託の資金フロー
提供元:三菱アセット・ブレインズ
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投資信託は個人の資産形成における中心的な金融商品として多くの人が利用している。投資信託の資金流出入などの動向は、資産形成を考えるうえで重要な情報だろう。
そこで、毎年1000ファンド以上の投資信託を評価・分析する三菱アセット・ブレインズより、以下で2017年9月における投信市場の動向(注)についてご紹介する。
(注)ETF、DC専用、SMA専用、公社債投信等を除いた公募投信
1.投信市場における資金の流出入動向
「3ヵ月ぶりの資金流出超」
9月の資金流出入動向は約570 億円の流出超となり、3ヵ月ぶりの資金流出に転じた。資産別でみても全体的に資金流入が低調であったことに加え、国内株式や不動産投信(REIT)で資金流出が拡大したことが影響した。
資金流入面では、複合資産、エマージング株式、外国株式に資金が流入した。複合資産では、引き続き、安定運用を謳ったラップ型、リスクコントロール型と呼ばれるバランス型ファンドが資金を集めている。長期にわたって資金流入1位となっていた外国株式はその座を明け渡した。
資金流出面では、国内株式、不動産投信(REIT)を中心に資金が流出した。国内株式では上昇タイミングを捉えた利益確定売りの影響を受けた。また、金利動向に敏感な不動産投信(REIT)は、金利上昇を懸念する動きから資金が流出した。
個別ファンドをみると、資金流入が大きい順に「野村PIMCO・世界インカム戦略ファンド A」(約370億円)、「新シルクロード経済圏ファンド」(約340億円)、「SMBC・アムンディプロテクト&スイッチファンド」(約290億円)と続いた。
1位の「野村PIMCO・世界インカム戦略ファンド A」は、国債や社債以外にも、モーゲージ証券、ハイ・イールド債券、バンクローンなど複数の債券種別に分散投資することで、リスクを抑えインカム収入の獲得を狙う外国債券型ファンドである。3位の「SMBC・アムンディプロテクト&スイッチファンド」と同様、安定運用を謳ったファンドに一定の資金が流入する展開となっている。
また、純資産残高が増加基調にあった、「フィデリティ・USハイ・イールドF」が約2年ぶりに純資産残高1兆円に到達した。これにより、公募投信で1兆円を上回るファンドは不動産投信(REIT)の2本を含めて3本となった。
(図表1)主要資産の資金流出入動向(過去3ヵ月と直近月)
2.投信市場のパフォーマンス動向
「リスク性資産を中心に堅調なパフォーマンス」
9月は北朝鮮に関する地政学リスクが膠着状態となったことや、FRB(米連邦準備理事会)が景気に対する強気の見方を示したことで経済の先行きへの安心感が広がり、国内株式、外国株式を始めとするリスク性資産を中心にパフォーマンスは反発に転じた。米国の追加利上げ観測の再燃や欧州経済の底堅さを受け為替レートが円安方向に推移したことも海外資産のパフォーマンスの下支えとなった。
そういったなか、不動産投信(REIT)は、米国を始めとする各国の長期金利が上昇基調で推移したことがマイナス要因となり、上昇幅は限定的なものにとどまった。
個別ファンドでみると、国内株式市場が堅調であったことで、ブル型の日本株ファンドが上位を占めたほか、堅調な推移を続ける米国株式関連ファンド、また、原油価格の上昇を受けて資源株関連ファンドが上位に並んだ。
(図表2)パフォーマンス上位5資産のランキングと実績
3.新規設定ファンドの動向
「設定額、設定本数ともに前月を下回る」
9月の新規設定は29本、設定額は約290億円となり、設定額、設定本数ともに前月を下回った。前月はつみたてNISAを睨んだ設定本数が多かったが、その反動も影響した。設定金額が300億円を下回るのは2017年1月以来となった。
個別ファンドでは、日興アセットマネジメントの「新シルクロード経済圏ファンド」を中心に「世界eコマース関連株式オープン」、「AI(人工知能)活用型世界株ファンド」など外国株式に投資するファンドが資金を集めた。
「新シルクロード経済圏ファンド」は中国の「一帯一路」構想によって恩恵を受けると考えられる複数の国の企業の株式に投資するファンドである。近年、エマージング株式のカテゴリーでは、特定国へ集中投資するファンドやテーマ性をもったファンドなどが注目を集める傾向にある。
(図表3) 新規設定金額、設定本数の推移
最後に、9月の資金流入上位15ファンドを掲載しておく。
(図表4) 資金流入上位15ファンド一覧
(三菱アセット・ブレインズ)