人の役に立つ「社会的責任投資」とは…
投資ブロガー・m@さん「投資きっかけで移住・転職も思い切れた」
投資の目的は何もお金を儲けることだけではない。近年ではさまざまな種類の投資商品が登場し、なかには投資を通じて「社会貢献」を果たせるものもあるという。
そこで、「しあわせをふやすいい投資」を探し、ブログ「いい投資探検日誌(from 八女)」で発信するm@(エムアット)さんにインタビュー。投資を始めたきっかけや「いい投資」を探すようになった経緯を教えてもらった。
IT不況で波乱の幕開け。それでも持ち続けた結果…
m@さんが“資産形成”に興味を持ち始めたのは、就職したての20歳の時。「働く年数をどうにか短くできないか」と考え、最初は趣味の競馬で資産を増やそうとした。
「もともと競馬は好きだったんですが、儲けるために馬券を買うようになると、あまり面白くなくなってしまったんです。そこで違う方法はないかと、株式投資についての本を読み始めました。なかでも影響を受けたのがフィリップ・フィッシャーの著書。“いい会社の株を買い、それを『持ち続ける』ことが成功の秘訣”と知り、それであればサラリーマンの自分でもできるかな、と思って25歳の時に投資を始めました」(m@さん、以下同)
まずは勉強のつもりでミニ株と投資信託を購入。さらに2001年にはインデックスファンドへの積立投資を始め、その後は投資信託をメインに運用していったという。
「投資信託は、競馬と比べると値動きがなくてつまらないな…と思ったりもしました。けれど1万円から買えて、給料から積み立てもしやすいのが魅力だった。それから毎月、額を決めて投資していきました」
当時はIT不況の真っただ中で、資産が増えたという実感はなかったという。それでも本で読んだ通り“持ち続け”ていると、転機が訪れた。
「2002~03年に相場が反発した時に、積み立てしていたものが一気に花開いたんです。実際はほんの少し上昇した程度だったのですが、口数が増えてきた分、一気に回復した。積み立てを続けていれば元気が出るというのは、本で読んで知識としては知っていたけれど、その時初めて実感しました」
人生をがらりと変えた「社会的責任投資」との出会い
その後も粛々と積み立てを続けて、2008年のリーマンショックも乗り切ったm@さん。当初は「アーリーリタイアも考えていた」というが、投資を続けていくうちに目的が変化していったという。
「2008年ごろに、酒蔵が投資を受けて米を買い、純米酒を造って、その売り上げを分配するというファンドを知って、面白そうだな…と。残念ながらそのファンドは売り切れていたけれど、投資をした側もそれを受け取った側も嬉しい『社会的責任投資』に興味を持ち始めたんです」
「社会的責任投資」とは、経常的な利益を生み出しているかといった会社の財務内容に加えて、その会社が法令の順守や環境問題、地域課題などの社会的責任を積極的に果たしているかを判断材料として行う投資のこと。翌年には新たに口座を開き、林業の再生に取り組む会社のファンドや、カンボジアのマイクロファイナンスに投資するファンドを購入。受益者総会で、それぞれの課題に取り組む人の話を聞き、投資先の様子の見学にも赴いたそうだ。
「お金をただ増やすだけではなく、ちょっとでも世の中の役に立ちたいな、と思ったんです。応援するつもりで投資し、そこで働いている人と仲良くなって、そこの商品を買って…という関係がだんだん強くなりました」
そして今年に入り、投資先であった林業再生の会社に転職。それまでは関東でシステムエンジニアとして働いてきたが、思い切って福岡県に移住した。
「前職と比べて収入は減りましたが、資産形成をしていたということもあって、楽しい仕事をして収入が減ってもいいと思えるようになりました。今は、アーリーリタイアをする、というよりはやりたいことをやるという考えに変わってきましたね」
投資に「正解」はない。大切なのは“持ち続ける”こと
2011年以降は「投資するんだったら、自分の選んだ会社のファンドを買いたい」と、インデックスファンドからアクティブファンドへと比重を移した。
「インデックスファンドもアクティブファンドも相場が良いと過信をしてしまいがちだけれど、下がる時は下がる。想定外のことが起こるとやめたくなってしまいますが、 “持ち続ける”ことが大切なんだと思います」
IT不況やリーマンショックを乗り越えてきたからこそ、「最近は、どれくらい自分が耐えられるかが感覚的に分かってきた」と話すm@さん。最後に、投資初心者に向けて、アドバイスを聞いた。
「はじめはすごく楽しいので、色々やってみたくなる。でも、あまり調子に乗らないで、とにかく続けることです。15年ぐらい投資を続けてきて、下がった時にやめてしまう人を何人も見てきました。でも、どんな投資を選んだとしても『これが正解』というのはない。だから思い込みは捨てて、自分の耐えられる範囲で、下がった時でもなんとか持ち続けてほしいですね」
(周東淑子/やじろべえ)