人生100年、老後のお金はいくら必要?

提供元:トウシル

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LIFE SHIFTの衝撃「人生は90年ではなく100年を意識したほうがいい」

近年のベストセラーのひとつ「LIFE SHIFT」がありますが、皆さんは目を通されたでしょうか?

“人生100年時代の処方箋”というサブタイトルが示唆するとおり、長寿化する人生にともなう「生き方」の変化について述べた好著です。趣味や生きがいといった人間関係の問題だけでなく、働き方やマネープランを考えるときにも重要な示唆が多数含まれています。

同書の指摘でもっとも重要なポイントは「人生100年」という新しいスパンを設定するということです。今まで私たちは人生の終わりがくる時期を平均寿命程度で想定してきました。おそらく「80歳代」くらいのイメージでしょう。

もう少し統計を知っている人は、現在の65歳の平均余命を想定しているかもしれません。この場合、男性が19年、女性が24年あります。5割の人がまだ生きている年齢を示す統計も、男性84歳、女性90歳ですからほぼ同じ数字になります。

しかし、長寿化は今後も続くと見込まれます。同書によれば2007年生まれの日本人の5割は107歳まで生存すると見込まれるそうで、今よりも約20年、老後は伸びると想定しなければならないわけです。これは21世紀生まれだけの問題ではなく、団塊ジュニア世代以降にも長寿化の影響があると私はみています。

そんなとき、「老後のお金」の心配はどう解消すればいいのでしょうか。

100年人生時代の老後に向けていくらあれば足りるのか3,000万円ではまったく足りない時代の始まり

現在、年金生活されている夫婦の家計をみると、公的年金での不足額が月額5万4,711円と言われています(総務省家計調査年報による高齢夫婦無職世帯の家計の不足額)。これを単純に女性の平均余命で計算すれば24年分ということで、1,575万円が必要ということになります。

公的年金収入については15%相当の給付水準引き下げが予定されていますから(マクロ経済スライド)、これを勘案して不足額を3万円ほど毎月多く見込めば24年で2,440万円が追加で必要になります。

一般的には老後に向けて3,000万円くらい欲しい、といわれますが、それほどズレた議論ではないことがわかります。(実際にはより長寿である可能性、消費増税や健保の自己負担増、介護や療養の費用などを考えればより厚く見積もることが望ましいが、ここでは置く)

ところが、こうした机上の空論をほとんど不毛なものとしてしまうのが、「老後は35年以上」という超長期の計画です。同じ計算を24年から35年に延長するだけで、老後の必要額は3,558万円に跳ね上がるからです(月8.4万円不足の場合)。

107歳、つまり65歳から42年を計算式にはめこめば、なんと4,270万円ですから、老後の年数をどう見込むかという基礎数値ひとつで、その必要準備額は大きく変わってしまうことがわかります。

実際に老後は何年あるかわかりませんが、短く設定して実際に長生きすることはリスクですから、どちらかといえば長めに考えざるをえません。本当は「40年の老後」すら考えるべきかもしれないのです。

周到な計画と、相当の運用利回りの確保が必須

仮に、この4,270万円を現役時代に用意しようとすれば、退職金や企業年金制度だけではまったく不足します。上場企業の平均レベルの退職金として1,500万円相当の給付があったとしても2770万円を自助努力で用意しなければならないからです。

40歳で気がついて、毎月1万円を貯める程度ではまったく追いつきません。この場合、年3%を確保し65歳まで続けられたとしても、65歳時点の受け取り額は446万円です。運用利回りの向上だけに頼ることはおすすめできませんが、仮に年6%とすれば、693万円が同条件で確保できます。しかし2,770万円には及びません。

毎月の積立額を4万円にしてようやく、2,772万円に達しますが、そもそも年6%という目標設定はおすすめできません。年3%の運用計画に戻せば1,784万円までまた下がってしまいます。毎月4万円の積立は、「月2万円、ボーナスごと12万円」に変形することが可能ですが、住宅ローンを返しつつ、こどもの学費準備をしていればなかなか難しい負担であろうと思います。

運用で稼ぐより、引退年齢を遅らせるほうが効果的

老後のお金の準備について「LIFE SHIFT」から学ぶべきはむしろ、「老後に向けて積極的に資産形成を行う」ことと「可能な限り引退年齢を遅くし、できるだけ稼ぎ続けること」の合わせ技を考えることだと思います。資産形成が必要なのは疑いありません。

しかし、老後に向けた資産形成のチャレンジだけで、豊かな老後の資金確保を行うことは困難です。むしろ「長すぎる老後」を短くすることと「資産形成に使う現役期間」を長くすることを同時に成立させられるのが、引退年齢を遅らせる、という選択肢なのです。

公的年金も、受給開始年齢を遅らせると、給付額が上がります。現行制度では70歳受給開始まで5年遅らせれば金額ベースで月あたり42%も増額されます(繰り下げ受給という)。まず、公的年金水準が低下した分はこれでカバーできるでしょう。75歳までの選択的繰り下げも議論されていますが、もしかしたらもっと増額が可能になるかもしれません。

先ほどの準備必要額も、老後を5年短くすれば4,270万円はいりません。公的年金の不足分は繰り下げ増額でカバーできますから、老後の準備金額はダウンします。しかも70歳から老後をスタートさせているので、備える金額も37年分と5年老後が減った分、目標額は2,429万円まで下がります。

準備においては5年伸びたことが奏功します。40歳からあわてても30年の時間があるので、先の例でいえば年3%のポートフォリオであっても月3万円の積立で1,748万円を確保でき、退職金とあわせて目標実現の可能性が一気に高まってきます。月3万円がむずかしい方もあきらめず、「月1万円+ボーナスごと12万円」「月1.5万円+ボーナスごと9万円」のように組み合わせてチャレンジすればさらに実現可能性が高まるでしょう。

仕事で稼ぐこともまた「老後への備え」であり「運用」である

資産形成を考えるとき、ついつい「いくら積み立て」「どう投資して高利回りにするか」ばかり考えがちです。しかし、仕事で稼ぐということもまた「運用」なのだと考えると、会社員の資産形成はより自由度が増すのではないでしょうか。

100年という長い人生をどう「働き続けるか」は大きなテーマです。これもあなたの運用課題として今から真剣に考えておきたいものです。

 

(フィナンシャル・ウィズダム代表 ファイナンシャルプランナー 山崎 俊輔)