MAB投信だより
顧客本位の業務運営が投信市場に与えたインパクトは? 2017年を振り返る
提供元:三菱アセット・ブレインズ
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サマリー
● 金融庁が顧客本位の業務運営を掲げる中、投信市場における課題とされてきた多くの点において変化の兆しが見られる。
● 最も顕著な変化は毎月分配型ファンドからの資金流出。その他にも、新規設定ファンドの状況や投信の保有期間においても目に見える変化が表れている。
● 運用スタイルでは引き続きアクティブ型ファンドの選好が根強いが、つみたてNISA開始の影響にも注目したい。
1.2017年の最大の変化は毎月分配型からの資金流出
金融庁がフィデューシャリーデューティを掲げて3年が経過した。今回は2017年の投信市場を振り返りつつ、今後も注目すべき主な変化について、紙面の許す限り列挙してみたい。
2017年で最も顕著な変化は、毎月分配型ファンドからの資金流出だろう。
図表1は、公募投信の資金流出入金額を決算回数別に示したものだが、毎月分配型(12回決算型)は2017年に流出超に転じた。過度な分配に対する懸念が指摘されていたことに加え、分配金の減額が相次いだことが流出の引き金となった。
図表1: 決算回数別、資金流出入金額の推移(6年間)
2.コア資産として複合資産型ファンドへの資金流入超が定着
次に、どの資産が選好されたのか見てみよう。
図表2は各資産の純資産残高に対する資金流出入金額の割合を示している。米国大統領選挙以降、政策の実効性には不透明感もあったが、良好な世界経済を背景に外国株式への流入が目立った。
また、複合資産型にも注目したい(図表3)。コア・サテライト運用が次第に浸透するなか、コアファンドとしてバランス型、価格下落リスクを抑えるタイプ、ラップ型など多様なファンドが提供され、2014年からは流入超が続いている。
同タイプが公募投信の残高に占める割合は未だ10%弱に過ぎず、コア資産として今後も継続的な資金流入が見込まれる。
図表2: 対象資産別、資金流出入金額の直近残高に対する割合(2017年)
図表3: 複合資産型への資金流出入金額の推移
3.新規設定金額は減少し、投信の保有期間は長期化傾向
金融庁は、投信販売における課題の一つとして保有期間の短さと旺盛な新規設定ファンドによる回転売買への懸念を示してきた。
図表4はこれら5年間の推移を示したものだが、新規設定金額は年間で1兆円を下回る水準へと急減した。また、平均保有期間は2017年こそ金融市場の活況を背景とした売買増加により短期化したが、NISAの効果もあり、従来の2年近辺から3年近くへと伸びている。
未だに一部のテーマ型ファンドが設定時に多くの資金を集めているが、全体的には望ましい方向に向かっていると言えよう。
図表4: 新規設定金額と平均保有期間の推移(6年間)
4.資金流入はアクティブ型中心、費用水準はパッシブ型で低下
最後に、アクティブ型/パッシブ型ファンドへの資金流入動向と運用管理費用の水準について確認しよう。
ここ数年、ネット販売向け低コスト・パッシブ型ファンドの設定が相次ぎ、それらの残高は着実に増加している。しかし、投信市場全体でみるとテーマ型株式ファンドが活況だったこともあり、アクティブ型ファンドへの資金流入が中心であることに変わりはなく、パッシブ型ファンドへの顕著な資金流入増はみられていない(図表5)。
図表6は、投信市場全体の残高ベースの費用水準(実際に全参加者が支払っている費用水準)の推移を示したもの。
アクティブ型では費用は同水準で推移しているが、パッシブ型ではなだらかに低下している。2018年から始まったつみたてNISAではパッシブ型ファンドの採用が過半を占めており、これらの動きへの影響に引き続き注目したい。
図表5: アクティブ型/パッシブ型ファンドへの資金流出入金額の推移(6年間)
図表6: アクティブ型/パッシブ型ファンドの運用管理費用水準の推移(6年間)
こうしてみると、投信市場における課題とされてきた多くの点において、わずか数年間で大きな変化が表れている。顧客本位の業務運営は緒に就いたばかりと言われているが、その影響は確実に浸透しているようだ。
(MABファンドアナリスト 勝盛)