iDeCoを継続? 企業型にまとめる? 転職先の制度内容で変化
【iDeCo】転職したときの手続き方法【個人型→企業型編】
運用中の利益が非課税になり、掛金を払うときにも税金が安くなる個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」。2017年1月から、公務員や専業主婦も加入できるようになり、利用者が徐々に増えている。
iDeCoは転職すると、年金資産として新たに所属する会社に持ち運ぶことができるというメリットがある。その場合、原則としてiDeCoから企業型確定拠出年金(以下、企業型DC)に移換することになる。転職前の資産を一度売却し、その残高すべてをそのまま企業型DCに移すのだ。
iDeCoに入れている資産を動かすには、どのような手続きが必要になるのか、確定拠出年金アナリストの大江加代さんに聞いた。
企業側にまとめる場合は転職先に依頼書を提出
「会社によって、企業型DCとiDeCoの同時加入を認めているところと、認めていないところがあります。転職先で企業型DCに関する説明を受けた際に、iDeCoに入っていることを伝え、どのような選択肢があるのか確認しましょう」(大江さん・以下同)
企業型DCとの同時加入が認められない場合、iDeCoの資産を企業型DCにまとめる必要性が出てくる。その場合は、転職先から渡された「個人別管理資産移換依頼書」を記入し、転職先に提出するという手続きが発生する。
提出後、転職先の会社から企業型DCで契約している金融機関に連絡が行き、iDeCoで加入していた金融機関との間で資産を移す作業が進められる。つまり、「個人別管理資産移換依頼書」さえ提出すれば、加入者自身が自らiDeCoの口座から企業型DCの口座へ資産を動かさなくてもいいというわけ。
「ただし、iDeCoの資産が売却されてできた残高は、会社側が決めた預貯金や投資信託に自動的に振り分けられます。自分が運用したい商品でない場合が多いので、移換完了の通知が届いたら、自分で商品を選び直し、スイッチングしましょう」
届け出から移換が完了するまでは、2カ月程度かかるという。新たな職場での生活にも慣れてきた頃に届くといえそうだ。通知は郵送で自宅に届くため、企業型DCへ移していることを忘れないように注意。
企業型DCへの加入が選べる会社も
会社によっては、企業型DCを導入していても、加入は社員個人の判断に任せているところもあるそう。
「企業型DCに加入しなければ、前払い退職金のような形で、掛金相当分を給与として受け取ることになります。ただし企業型DCとは違い、所得税がかかってしまいます」
給与額が変われば、所得税だけでなく厚生年金保険料も変わり、将来に受け取ることのできる公的年金額にも影響する。企業型DCへの加入が選択できる場合は、今後の資産のことを考えて慎重に判断した方がよさそうだ。
同時加入が認められる場合は総合的な判断を
「iDeCoとの同時加入を認めている会社に勤めるのであれば、加入しているiDeCoを継続することもできますし、企業型DCにまとめることもできます」
掛金は給料からの天引きで、口座管理料を会社側が負担してくれる企業型DCと比べて、iDeCoは掛金も口座管理料も自己負担となる。商品の面では、iDeCoはさまざまな金融機関から自由に選べるが、企業型DCは会社が定めた金融機関のもののみとなる。それぞれの特徴を踏まえて、2つの確定拠出年金を並行で運用するか、決めるといいだろう。
企業型DCにまとめる場合は、上記の同時加入を認めていない会社の場合と同様に、「個人別管理資産移換依頼書」で資産を移す手続きを行うことになる。
同時加入する場合は、企業型DCへの加入手続きとともに、iDeCoに加入している金融機関に勤務先変更届を提出する必要がある。詳しくは「【iDeCo】転職したときの手続き方法【個人型→個人型編】」を参照。
企業型DCを導入している会社では、転職後の運用方法でさまざまなパターンが想定される。既にiDeCoを活用している人は、まず転職先の制度内容を担当部署に確認するところから始めよう。
(有竹亮介/verb)
※記事の内容は2018年3月現在の情報です
関連リンク
大江加代
確定拠出年金アナリスト。オフィス・リベルタス取締役。大手証券会社に22年間勤務し、サラリーマンの資産形成ビジネスに携わる。確定拠出年金には制度スタート前から関わり、NPO法人確定拠出年金教育協会理事として「iDeCoナビ」(http://www.dcnenkin.jp/)を立ち上げる。著書に『図解 知識ゼロからはじめるiDeCo(個人型確定拠出年金)の入門書』など。