投資信託のトレンドが分かる!
2018年7月 投資信託の資金フロー
提供元:三菱アセット・ブレインズ
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投資信託は個人の資産形成における中心的な金融商品として多くの人が利用している。投資信託の資金流出入などの動向は、資産形成を考えるうえで重要な情報だろう。
そこで、毎年1000ファンド以上の投資信託を評価・分析する三菱アセット・ブレインズより、以下で2018年7月における投信市場の動向(注)についてご紹介する。
(注)ETF、DC専用、SMA専用、公社債投信等を除いた公募投信
1.投信市場における資金の流出入動向
「僅かながら9ヵ月ぶりに資金流出超」
7月の資金流出入動向は約15億円の流出超と、2017年10月以来9ヵ月ぶりに僅かながらも資金流出超に転じた。当月は株式市場が上昇したことで、利益確定の動きが強まったことなどから株式資産を中心に流入額が縮小したことが影響した。
資金流入では、前月に続き外国株式(約1,430億円)、複合資産(約830億円)、国内株式(約670億円)が資金を集めた。米国の堅調な経済指標を受けて株式市場が上昇し、戻り売りの好機と捉えた投資家による売却の動きが強まったことから、前月と比べ流入規模は縮小した。
資金流出では、不動産投信(約1,170億円)、外国債券(700億円)、ハイイールド債券(630億円)からの流出が継続した。月中旬以降、米国の長期金利が上昇基調で推移したことが嫌気された。その中で、欧州においては債券ファンドへ資金が流入している。米国と比べ金利先高感が弱く、ヘッジコストの水準も比較的低位であることなどが影響しているものと考えられる。
個別ファンドでは、「フューチャー・バイオテック」(三井住友)(約560億)が1位となった。2位には7月新規設定の「GS社債/国際分散投資戦略ファンド2018-07」(AM-One) (約310億円)、3位は前月まで3ヵ月連続で1位であった「次世代通信関連世界株式戦略ファンド」(三井住友トラスト)(約270億円)がランクインした。5位には「東京海上円資産バランスファンド(毎月決算型)」(約210億円)が顔を出した。複合資産型としては最も残高が大きいファンドであり、ここ数ヵ月は資金流入に勢いが見られる。
また、純資産残高上位10ファンドに目を向けると、申込受付が再開となっている「野村インド株投資」が再び上位に返り咲いた。一方で、かつての5兆円ファンド「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」が上位10ファンドから姿を消すこととなった。
(図表1)主要資産の資金流出入動向(過去3ヵ月と直近月)
※合計には、グラフ表示していない、その他資産も含む
2.投信市場のパフォーマンス動向
「株価の反発を受けエマージング資産が上位に」
7月の株式市場は、貿易摩擦懸念がくすぶる一方で、堅調な米国経済指標が発表されたことや、米国の大型減税による企業業績の改善期待などから上昇した。先進国を中心とした株価の上昇は新興国にも波及する格好となり、米国の保護主義政策により軟調な推移が続いていた多くの新興国で当月は株価が上昇に転じた。
債券市場は、堅調な経済指標の発表や企業業績の改善期待から米長期金利が上昇し、各国の長期金利もつられるかたちで上昇した。日本では、日銀が長期金利を0%に誘導する金融政策(イールドカーブ・コントロール)の金利誘導目標を柔軟化すると報道されたことで金利は一時0.1%まで上昇した。
為替市場は、米ドル・円、ユーロ・円ともに小幅な円安となった。月前半は堅調な株式市場を受け安全通貨の円を売る動きが強まったが、その後、日銀が金融政策を柔軟化するとの報道を受け円高が進行し、前月末比では小幅な円安にとどまった。
これらを背景に、7月の投信市場ではエマージング資産が上位となった。米ドル高による自国通貨安や、世界的な貿易摩擦懸念が依然として不安定要因として意識される中、当月は多くの新興国で株価が上昇に転じた。
一方で国内資産のリターンは下位となった。国内株式では、株価の戻りを捉えた売りの動きが強まったことが影響した。国内債券では、日銀が長期金利を0%程度に誘導する金融政策を柔軟化すると報道されたことで長期金利が上昇し、物価連動債など一部のファンドを除いた多くのファンドでパフォーマンスは低調となった。
個別ファンドではエマージング関連が上位を席巻した。当月はブラジルやインドを中心に新興国の多くの国・地域で株価が上昇に転じたことがプラスとなった。
(図表2)パフォーマンス上位5資産のランキングと実績
3.新規設定ファンドの動向
「設定本数は前月比同水準も、設定額は増加」
7月の新規設定は29本と前月(31本)と同水準であったが、設定額は約820億円と前月(約390億円)から大幅に増加した。資産別では、外国債券型が設定額上位に散見された。
設定額上位は、「GS社債/国際分散投資戦略ファンド2018-07」(AM-One)が約310億円と最多の資金を集めた。単位型で満期時の元本確保を目指しつつ、国際分散投資戦略に基づいたアップサイド部分の運用益の獲得を目指す商品スキームが好感された。次いで「野村日本最高益更新企業ファンド」(野村)が約210億円の資金を集めた。同ファンドは過去10事業年度において5事業年度以上経常利益が最高益を更新した銘柄等に投資を行う。
(図表3)新規設定金額、設定本数の推移
最後に、7月の資金流入上位15ファンドを掲載しておく。
(図表4)資金流入上位15ファンド一覧
(三菱アセット・ブレインズ)