加藤教授の投資講座

加藤康之の投資講座ー入門編

『人生100年時代』と資産運用

提供元:THEO by お金のデザイン

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The majestic Great Wall, Beijing, China

最近「人生100年時代」という言葉を良く聞きます。

その名付け親はベストセラーとなった「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)-100年時代の人生戦略」を著したリンダ・グラットンとアンドリュー・スコットと言えるでしょう。

リンダ・グラットンは日本政府の「人生100年時代構想会議」の委員になり日本のメディアでも注目を浴びることになったことをご記憶の方もいると思います。

さて、厚生労働省が発表する平成28年簡易生命表によれば、日本人の平均寿命は男性80.98歳、女性87.14歳です。

これは生まれてからの平均「寿命」なので、元気ですでに65歳まで生きた人が、その後何年生きるのかを示す平均「余命」で考えると男性19.55年、女性24.38年であり、寿命に換算すると男性84.55歳、女性89.38歳になります。

つまり、65歳まで生きてきた女性にとっては90歳まで生きることはすでに平均なのです。当然、それ以上生きる人も多いことになります。

また、平均寿命は年々延び続けており、今の子供たちが65歳になった時、100歳の人生は決して珍しいことではないことは容易に予想されます。

「人生は、教育、仕事、引退後という3ステージからなるが、特に仕事のステージが長くなり、複数のキャリア計画が必要になる。」これが前掲書の指摘です。年齢に応じてキャリアのギアチェンジをすべきという話は傾聴に値します。

一方で、引退後のステージも十分長いということを忘れてはいけません。健康でさえいれば、楽しく充実した引退後の人生が待っています。しかし、そのためのお金も必要です。

そこで、ここでは思い切って25歳の人が75歳で引退し100歳まで生きるという「人生100年時代」を想定してみます。引退後の25年間の支出と収入予想から、どのくらいの資産を引退までに築けば良いのかを現時点のデータからおおまかに計算してみましょう。

まず、退職後の支出です。

生命保険文化センターの調査によれば、老後にゆとりのある生活を送るためには月34.8万円(年間418万円)が必要とされています。25年分だと1億450万円になります。

この数字の大きさに違和感を持たれる方もいるかもしれません。しかし、ゆとりの中身は旅行や趣味といったもので、必ずしも贅沢をしているわけではありません。人間らしく生きていくために必要なものです。

一方、収入はどうでしょうか。

一般のサラリーマンの退職後の収入は退職金と年金です。東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情調査」および日本経済団体連合会の「2014年9月度退職金・年金に関する実態調査」によれば、中小企業、上場企業の平均的退職金はそれぞれ1,383.9万円、2,357.7万円です。ここでは両者の平均値である1870万円を使うことにします。

また、厚労省の「平成28年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、厚生年金保険受給者平均年金月額(老齢年金)は147,513 円です。

したがって、25 年間で受け取る厚生年金の生涯合計額は4,425万円(147,513円×12か月×25年)になります。年金と退職金を併せると引退後の収入は1,870+4,425=6,295万円となります。

物価の上昇もあると考えて、支出の1億450万円と収入の6,295万円をそれぞれ物価上昇率(1.5%)で50年後の将来価値にします。するとそれぞれ2億2,000万円、1億3,253万円になり、その差額は8,747万円となります。これが引退後に必要な資産額(50年後時点)になります。

この8,747万円という巨額な必要資産額は「人生100年時代」のバッドニュース(悪い話)でしょう。この数字を見て途方に暮れる人もいるかもしれません。しかし、バッドニュースの裏には必ずグッドニュース(良い話)があるものです。

では、グッドニュースとは何でしょうか。

それは仕事のステージが長くなることです。仕事のステージが長くなるということは、お金を増やす資産形成のステージ時間も長くなることを意味します。つまり、少しずつ増やしていっても時間を掛ければそれなりの資産を築くことが出来るということです。

例として、THEOで積立投資を行った場合を考えてみましょう。

仕事のステージ、つまり、資産形成のステージを50年間(25歳~75歳)とし50年間にわたり次のルールでTHEOの積立投資を継続するものとします。

1)仕事のギアチェンジと同じように、運用方針を前半25年と後半25年の2つのサブステージに分けて途中でギアチェンジする。

2)機能ポートフォリオの配分は、前半25年はより高い成長を狙って(グロース70%、インカム21%、インフレヘッジ9%)、後半25年間は少し安定性を高めて(グロース40%、インカム39%、インフレヘッジ21%)という配分でそれぞれ運用する。なお、これら双方のポートフォリオは、THEOの標準ポートフォリオの例から取って来たもの。

▼若いときにリスクの高い投資が出来る理由については「加藤康之の投資講座-入門編「なぜ若い人は投資リスクを取れるのか?」」を参照してください。

3)毎月の積立金は前半25年が1万円、後半25年が2万円とする。ただし、これに加え、年2回のボーナスから前半25年は5万円、後半25年は10万円を拠出する。(賃金上昇や物価上昇のため後半は積立額を増やしています。)結果的に50年間で1650万円積立てることになります。

THEOの3つの機能ポートフォリオの年率期待リターン*は、過去データから、グロース8.13%、インカム5.36%、インフレヘッジ3.98%となっています。したがって、前半25年のポートフォリオの年率期待リターンは7.17%、後半25年は6.18%になります。

仮に、50年間でこの年率期待リターンが実現したとすると、75歳で9,675万円の資産を作ることが出来る計算となります。これは必要な資産額8,747万円を超えています。

なお、この年率期待リターンは、運用報酬、税金・取引手数料等を控除しないで計算されているため、これに基づく上記の資産額のシミュレーションも高めに算出されております。あくまでも参考データとしてお考えください。

*過去のシミュレーションパフォーマンスおよび各種指数から統計的に長期トレンドとして算出。期間は2007年7月 ~2018年4月。シミュレーションのためのETFのデータが取得できない場合はベンチマーク等のリターンを利用。それ以上に遡った部分に使用したデータはMSCI World(1971–1986)、MSCI ACWI(1987–2002)、米国十年国債(1971–84)、CITIGROUP WGBI(1985–2007)、輸入物価指数(2000–2003)等を利用。リスクと相関は 2000年以降の上記データを使用して推計。 配当再投資、運用報酬控除前、税金・取引手数料等控除前。これらは将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。また、実質的な投資成果を示すものではありません。

また、期待リターンは過去の平均値(期待値)であり、市場が大きく下落してしまい予想通り資産が増えないリスクもあります。つまり、市場は様々な政治、経済問題に反応し短期的には大きく下がったり上がったりするものです。

今年は結局北朝鮮問題が悪化し期待値以下のリターンになってしまうかもしれません。逆に来年は通商問題が好転し期待値より高いリターンが出るかもしれません。

しかし、長期間継続すれば期待値(平均値)からの乖離率が低くなることが理論的には示されています。これが長期投資の力です。

特に高いリターンを期待する必要はありません。世界市場に分散投資されていれば、その平均的なリターンでも長期間続けていれば十分に大きなリターンになるでしょう。投資にとっては長期の時間が最大の味方と言えるのです。

これは「人生100年時代」のグッドニュースです。

<著者プロフィール>

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加藤康之
京都大学大学院特定教授/(株)お金のデザイン アカデミックアドバイザー

東京工業大学大学院修士、京都大学博士。
野村證券(株)執行役・金融工学研究センター長を経て京都大学教授。専門は投資理論、金融工学。2016年から年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)経営委員。

 

※本稿において、記載された意見・見解は、筆者個人のものであり、株式会社お金のデザインの公式見解ではありません。
※本稿は、2018年6月3日にTHEOBlogに掲載された文章です。

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(提供元:THEO by お金のデザイン)

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