投資信託のトレンドが分かる!
2018年10月 投資信託の資金フロー
提供元:三菱アセット・ブレインズ
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投資信託は個人の資産形成における中心的な金融商品として多くの人が利用している。投資信託の資金流出入などの動向は、資産形成を考えるうえで重要な情報だろう。
そこで、毎年1000ファンド以上の投資信託を評価・分析する三菱アセット・ブレインズより、以下で2018年10月における投信市場の動向(注)についてご紹介する。
(注)ETF、DC専用、SMA専用、公社債投信等を除いた公募投信
1.投信市場における資金の流出入動向
「株価の下落局面をとらえた資金流入により約4,600億円の資金流入超」
10月の資金流出入動向は約4,600億円の流入超と、2ヵ月振りの資金流入超となった。株価の下落をとらえた押し目買いの動きが強まり、資金流入が拡大した。
資金流入では、外国株式(約3,500億円)、国内株式(約2,600億円)、複合資産(約600億円)へ資金が流入した。
株式市場が調整局面を迎える中、押し目買いの動きから国内株式には2018年3月以来約半年振りの水準となる資金流入がみられた。
特に、国内株式インデックスファンドには約2,300億円の多額の資金が集まった。国内株式のブル型ファンドにも同様の動きがみられた。当月は株価の下落局面をとらえた投機的な資金流入がみられた1ヵ月だったと言える。
また、外国株式も2018年1月以来となる流入水準を回復した。グローバル・複合地域を中心にテーマ型ファンド等へ資金流入が継続した。
資金流出では、外国債券(約1,000億円)、ハイイールド債券(約600億円)、不動産投信(約500億円)から資金が流出した。不動産投信からの資金流出は続いているが、規模は縮小傾向となっている。
前月資金流入に転じていた外国債券は、米連邦準備理事会(FRB)議長による経済見通しを楽観視する発言などから金利が上昇したことなどを受け、再び流出超となった。
また、約1年半にわたり資金流入が継続し、前月資金流出超に転じたエマージング株式では、今月も資金流出(約300億円)が継続した。
個別ファンドでは、「日経225ノーロードオープン」(AM-One)(約540億円)が1位となった。
2位は当月新規設定の「フィッシャー・グローバル・スモールキャップ・エクイティ・ファンド」(AM-One) (約500億円)、3位には「ブル3倍日本株ポートフォリオⅤ 」(大和)(約420億円)がランクインした。
純資産残高上位の顔ぶれにおいては、「東京海上・円資産バランスファンド(毎月決算型)愛称:円奏会」が再度ランクインした。
株式ファンドを中心としたリターン悪化から純資産残高が減少する中、安定的な運用かつ着実な資金流入が下支えする結果となった。
(図表1)主要資産の資金流出入動向(過去3ヵ月と直近月)
※合計には、グラフ表示していない、その他資産も含む
2.投信市場のパフォーマンス動向
「株式関連ファンドを中心に大幅なマイナス」
10月の金融市場は、業績期待を不安視する動きや米中貿易摩擦による世界経済の減速に対する懸念から、リスク回避の動きが広がった。
株式市場は、日米ともに株安が進行した。月上旬は、日米ともに株価は高値圏で推移していたが、一部の米国企業に対する過度な業績期待を嫌気する動きや米中貿易摩擦による世界経済の減速懸念が意識された。
欧州は、イタリアの財政懸念や、英国のEU離脱をめぐる交渉等の問題を抱え、株価は低調に推移した。新興国では、世界的な株安の流れを受け、半導体関連銘柄を中心に売られた。
一方、ブラジルでは、大統領選で財政規律を重視するボルソナロ氏が当選したことを好感し、株価が上昇した。
債券市場は、日米で一時金利が上昇したが、世界経済の先行きに対する懸念から金利は低下した。欧州では、イタリアなどの財政悪化懸念によるリスク回避の動きにより信用力の高いドイツ国債が買われ金利が低下した。
為替市場は、米ドル・円は横ばい、ユーロ・円は円高となった。月後半にかけて投資家のリスク回避姿勢が強まり、ドル、ユーロどちらに対しても円を買う動きが強まった。
これらを背景に、10月の投信市場では国内債券、新興国債券がリターン上位となった。
新興国債券では、ブラジルにおいて大統領選が無事通過したことを受けてブラジルレアルが大幅反発し、ブラジル債券ファンドを中心にリターンが上昇した。
一方で、株式市場が調整局面を迎えたことで、株式ファンドのリターンが大幅に悪化した。その中でも、前月まで日経平均株価がバブル期以来の最高値を付けるなど好調だった国内株式は、一転10%超の大幅下落となった。
公募投信市場の上位300ファンドの値動きを表すMAB投信指数「MAB300」は6%超のマイナスと、2016年6月のイギリスのEU離脱決定後の混乱を上回る下落率となっている。
個別ファンドの1ヵ月リターンでは、ブラジル関連ファンドが上昇した。大統領選を無事通過したことにより不透明感が払しょくされたことが好感された。
もう少し長い期間の6ヵ月リターンに目を向けると、上位には米国を中心とした外国不動産投信と外国株式における医療関連ファンドが並んでいる。
(図表2)パフォーマンス上位5資産のランキングと実績
3.新規設定ファンドの動向
「新規設定額、本数ともに増加傾向」
10月の新規設定は37本と前月(29本)から増加し、設定額も約1,400億円と、前月(約1,100億円)に続き2ヵ月連続で1,000億円を超える水準となった。
設定額が100億円を超えたファンドは6本あり、そのうちの5本を「外国株式型」が占めた。2018年8月以降、新規設定額、本数ともに増加傾向にある。
直近6ヵ月の新規設定上位ファンドでは、当月の新規設定ファンドが既に7本もランクインするなど、当月は多額の資金を集めたファンドが多かった。
設定額が最も多かったのは「フィッシャー・グローバル・スモールキャップ・エクイティ・ファンド」(AM-One)(約370億円)。
同ファンドの委託先である米国の独立系資産運用会社「フィッシャー・アセットマネジメント・エルエルシー」は、トップダウン・アプローチを用いた小型株式運用を行う。
(図表3)新規設定金額、設定本数の推移
最後に、10月の資金流入上位15ファンドを掲載しておく。
(図表4)資金流入上位15ファンド一覧
(三菱アセット・ブレインズ)