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MAB投信だより

DC法改正後のファンド動向を考える

提供元:三菱アセット・ブレインズ

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サマリー

●2018年5月のDC法改正以降、企業型DCのデフォルトファンド(DF)に投資信託を設定する動きがみられている。
●企業型DCの取扱い商品数に上限が設けられたことで、ファンドの信託報酬に一段と低下圧力がかかることが予想される。
●DCファンド残高の7割以上を占めるパッシブファンドには、資金流入しやすい状況が続くだろう。

1.DC法改正後のデフォルトファンド設定状況について

2018年5月、確定拠出年金法(DC法)が改正となった。資産運用に係る改正内容のポイントは大きく分けて三点ある。①運用商品選択への支援、②運用商品を選択しない者への支援、③運用中の支援強化だ。

なかでも、②運用商品を選択しない者への支援に関しては、企業型DCの今後のデフォルトファンド(DF)の設定動向に大きな影響を与えるものと考えられることから、大手運営管理機関を中心にヒアリングを行った。

初めに、現在のDF設定状況を確認した。運営管理機関によって多少の差はあるものの、企業型でDFを設定している事業主は全体の半分程度であり、DFの大半は預金型や保険型の元本確保型商品が選択されているとの回答が得られた。

個人が意思を持って加入する個人型(iDeCo)と比べ、雇用時に加入することが多い企業型は運用商品の未指図者が多くなる傾向にあると考えられるが、運用の自己責任が前提のDCではDFにリスク商品である投資信託を設定することは事業主も慎重な姿勢であることがうかがえる。

しかし、長期的に物価上昇リスクへの備えや老後の所得を確保するためには、果たして元本確保型商品がDFとして適切なのだろうか。加入者の属性と照らし合わせて考える必要があるだろう。

実際に一部では、DC法改正後に投資信託に変更した事例もみられているようだ。

ある運営管理機関では、DC法改正後DFに投資信託を設定・変更することについて事業主に意向調査を行ったところ、投資信託への変更を検討したいという回答が予想以上に寄せられたとのこと。

具体的には、複数の資産を組み合わせたバランス型や加入者のライフサイクルに合わせてアロケーションを調整するターゲットイヤー型などが関心を集めているようだ。

リスクを分散しながら収益確保を目指す投資信託は、長期的な資産形成に有効な商品として事業主にも一定の理解が得られているものと思われる。

実務的には、DFを変更する場合には労使交渉や規約変更も必要になることから、DFに投資信託を設定する動きが本格化するには相応の時間を要するものとみられる。

しかし、加入者への投資教育が努力義務化され、今後は長期投資や分散投資の有効性が世間に広く認知されることが期待されるなか、バランス型ファンドやターゲットイヤー型ファンドをDFに設定する動きが増えてくる可能性は高い。

2.信託報酬の低下圧力は強まる

また、2019年7月に運営管理機関のファンドラインナップの公表が予定されている。本件を契機に、運営管理機関に対しファンド選定基準の明確性・透明性がこれまで以上に求められるとともに、今後のファンド選定には対外的な説明力が必要になるものと考えられる。

ファンドの設定タイミングや投資手法は様々であるため、運用プロセスや運用実績の単純比較は難しく、目先は比較対象として信託報酬に注目が集まりやすいものと考える。

実際、複数の運営管理機関から信託報酬の低いDCファンドを教えてほしいとの質問も頂いている。

ここで、DCファンドのアセットクラス別資金流出入金額を信託報酬水準で四分位分析した結果を示す(図表1)。

図表1:DCファンドにおける信託報酬四分位別の累積資金流出入金額

※直近5年間(2014年1月~2018年12月)の累積資金流出入金額。Aはアクティブ型、Pはパッシブ型。
※直近5年間(2014年1月~2018年12月)の累積資金流出入金額。Aはアクティブ型、Pはパッシブ型。

直近5年間では、信託報酬の低いファンドの方がより多く資金流入していることがみてとれる。特に、アクティブリターンを追求しないパッシブファンドでは、低コストファンドへの資金流入が顕著にみられている。

こうした動きを背景に、運営管理機関がファンドを選定する上で信託報酬をより重視することとなれば、従来以上に信託報酬の低下圧力が強まることが予想されるほか、アクティブファンドのコスト対比リターンも注目されることとなろう。

3.パッシブファンドへの資金流入は続く

長期的な資産形成を基本とするDCでは、時間分散を図った着実な資産形成ニーズがあることから、超過収益を狙うアクティブ型よりもパッシブ型が選好される傾向が強く、DCファンド純資産残高の7割以上はパッシブ型が占めている(図表2)。

運管による加入者教育などを背景に投資信託で運用する加入者が増加することとなれば、低コスト運用の機運が高まる可能性は高い。

こうしたなか、アクティブファンドと比較し信託報酬水準が低いパッシブファンドには一層の資金流入が見込まれるのではないか。

図表2:DCファンド純資産残高の推移

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(MABファンドアナリスト 持田)

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