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MUFGとスタートアップが編み出した、スマートフットウェアでのデータ活用

「情報銀行×スマートフットウェア」の全貌(後編)

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行動履歴や検索履歴など、デジタル上に日々蓄積される個人の情報。それらを“資産”と捉えた新たなサービスが「情報銀行」だ。特徴は、情報を第三者に渡すかどうか、持ち主である個人が判断できること。さらに、情報を提供した場合は、持ち主に“対価”が渡される。

すでに三菱UFJ信託銀行では、その概念に基づいた「DPRIME」の準備を進めており、前回の記事で概要を紹介した。

2019年度のサービス開始を目指しているとのことで、いくつかの実証実験もスタートしている。そのひとつが、スマートフットウェアによる「歩行データ」の取り組みだ。

靴底にセンサーを入れ、Bluetoothでスマホのアプリと連携することで、その靴を履いている人の詳細な歩行記録が取れるもの。蓄積されたデータは、持ち主の意向で第三者に提供することができる。

 

(動画提供:bouncy

 

スマートフットウェアを開発したのは、スタートアップ企業のノーニューフォークスタジオ(nnf)。後編となる本記事では、前回に引き続き、三菱UFJ信託銀行の齊藤達哉氏、nnfの菊川裕也氏に話を聞きながら、このサービスの詳細を追っていく。

詳細な歩行データが集まったとき、それは大きな価値になる

スマートフットウェア「ORFHE TRACK」は、過去に類のないほど精緻なデータが取れるのが特徴。歩数や歩行距離は既存のサービスでも取得できるが、ORPHE TRACKは一歩一歩の歩幅や速度、足のひねりの具合、さらには着地の際に足のどの部分が接地しているかも検知できる。片足ずつのデータが見られるため、それぞれの傾向が分析可能だ。

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「これらのデータをもとに、アプリでユーザーの“歩き方”を診断する機能も搭載。1日の歩き方を『ウォークレベル』という形で判定します。また、歩行だけでなく、走っている際のデータも取得できるので、マラソンなどの陸上競技にも活用できると考えています」(菊川氏)

個人が見ても学びは大きそうだが、それがビッグデータとして集積すると、企業にとって非常に重要な価値となる。

「数千人・数万人の詳細な歩行データがあれば、AIが分析することで年代ごとの歩き方・走り方の傾向などが見えてくるかもしれません」と菊川氏は考える。

ここで取得したデータは、持ち主の判断次第でDPRIMEによって流通される。データを提供するかはあくまで持ち主の自由であり、提供した場合は対価が支払われる。

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三菱UFJ信託銀行の齊藤氏は、ORPHE TRACKで取得できる情報について、こんな使われ方を想定する。

「シューズメーカーにとっては、詳細な歩行データが商品開発の材料になるでしょう。ジムなどのフィットネス分野でも有用かもしれません。また、歩く・走るという行為は健康促進にも紐づきます。となると、健康支援に関わる人にとっても貴重なデータとなる可能性があります」

加えて面白いのが、ORPHE TRACKの「チャレンジ」という機能。これは、上述した一般的な歩行や走行時のデータとは別に、ゲーム感覚でできる記録測定。「垂直跳び」などの項目がある。

実際にその場でジャンプしてみると、記録がすぐに表示される。ゲーム感覚で楽しみながらデータも蓄積されるので、齊藤氏は「歩行データだけではない、情報の多様性が増します」と話す。

「攻め」と「守り」を補完しあう協業が、未来のビジネスを作る

それにしても、なぜ2社がこのような事業で手を組んだのだろうか。きっかけは、三菱UFJフィナンシャル・グループが開催するアクセラレータ・プログラム。スタートアップ企業が構想したさまざまな事業プログラムを発表するもので、この舞台でnnfが「スマートフットウェアによるデータ活用」のアイデアを出した。

「弊社では、もともと靴底にセンサーを搭載し、足の動きに合わせて靴に埋め込んだLEDが光ったり、接続したスマホから音が鳴らせるスマートフットウェア『Orphe』を開発していました。

当初はエンタメ分野での活用を見込んでいましたが、作ってみるとリハビリや運動教育での引き合いが強いこともわかりました。その経験から、センサーで歩行データを取得すれば、大きな価値になると考えたのです」(菊川氏)

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そのアイデアを、先述のアクセラレータプログラムで発表。実証実験に至った。アイデアを取り入れる側となった齊藤氏は、「情報を守り管理する者と、スマートフットウェアというツールを作る者。それぞれの長所を組み合わせることができたと感じます」と協業の意義を語る。

データの取得方法という先進的な“攻め”の部分はnnfが、一方で管理や保守といった“守り”の部分は三菱UFJ信託銀行が担う。そんな関係と言えるかもしれない。

今後の展望について「さまざまなフィードバックを頂きながら、ORPHE TRACKの質を高めていきたいです」と菊川氏。齊藤氏は「高齢化社会において、介護や健康増進などの分野でデータが活用されるような、そのためのサービスになればいいですね」と話す。

DPRIMEとORPHE TRACKはどのように進化し、今後どうサービス化されていくのか。これからの進展に期待したい。

(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)

※記事の内容は2019年2月現在の情報です

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