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コード決済アプリは「ECからリアル」への顧客体験進化

キャッシュレス“4つの谷”を越える「楽天ペイ」のポテンシャル

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アプリの目的は「楽天の体験をECからリアルへ」

QRコードやバーコードを使ったスマホ決済。競争が激化するこの領域で、利用率トップを行くのが「楽天ペイ」だ。ICT総研の調査(2018年12月※)では、PayPayやLINE Pay、Origami Payを抑えて1位となった。
ICT総研「2019年 モバイルキャッシュレス決済の市場動向調査」内、「よく利用するスマホのQRコード決済サービス」

シェア獲得は順調だが、そもそも楽天ペイの「目的」はそこではないようだ。楽天ペイメント 楽天ペイ事業本部 マーケティング・編成部⻑の諸伏勇人氏は、「決済サービスとしての普及より、楽天会員の方が楽しめる領域をECからリアルへ拡張するのが大きな目的です」と話す。
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「楽天グループは創業から20年以上、ECに特化してきました。その中で、お客さまが貯めた楽天スーパーポイントなどをリアルでも使えるようにしたかったのです。『楽天会員でよかった』と思える体験を、オフラインでも提供するために楽天ペイが生まれました」(諸伏氏、以下同)

楽天ペイアプリには大きく3つの機能がある。バーコードやQRコードによる決済機能、チャージや個人間送付ができる電子マネーの機能、そして、ポイントを貯められる楽天ポイントカードとしての機能だ。
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なかでも、「ECからリアルへ」のテーマに関わるのが決済機能。楽天ペイは、アプリをダウンロードして楽天会員IDを入力すると、そのIDに登録されているクレジットカードと紐づいて決済が行える。この際、保有するポイントも決済に使用可能。コンビニや美容院など、実店舗で広く活用できる。

この部分が重要だからこそ、ローンチ時は「ワンタップで簡単にポイントを使える仕様にこだわりました」と諸伏氏。「すべてのポイント/キャッシュを使う」という項目をタップするだけでいい。
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ポイントを支払いの一部に使うことも可能で、そこにも「ECからリアルへ」をテーマにしたこだわりがある。

「支払いの一部にポイントを使う際、10ポイントごと、100ポイントごとの単位制限を設けず、1ポイントから指定できます。ECでは、たとえば1086円の支払いにおいて、端数の86円のみポイントで支払う方が多く、リアルでも可能にしました。あくまで、ECでできる体験をリアルで提供したいという思いからです」

楽天スーパーポイントの「二重取り」が最大のメリット

とはいえ、これらのサービスは圧倒的な長所とは言いがたい。上述の部分は、他アプリでも搭載されつつある。では、何が楽天ペイをNo.1に押し上げているのだろうか。

「まずは、セットアップが非常に容易で、すぐに使える点です。アプリの使用には楽天IDが必須ですが、IDを保有する人の過半数は既に『楽天市場』などの利用でクレジットカードなどの決済情報を登録されていらっしゃいます。IDを連携しただけで、お客さまが離脱しやすい『決済情報登録』のフェーズをクリアできるのは大きい。多くの方が楽天ECでの決済体験をしているのも、安心の面で重要でしょう」

そして、最大のメリットと言えるのが楽天スーパーポイント。楽天ペイで支払うと、200円につき1ポイントが付与される。さらに特筆すべきは、支払い元のクレジットカードを「楽天カード」にしていた場合。楽天カードは100円につき1ポイントが付与されるシステムで、楽天ペイの支払い時も変わらない。
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となると、1000円の決済を楽天ペイで行った場合、楽天ペイで5ポイント、支払い元の楽天カードで10ポイント、計15ポイントがもらえる。楽天ペイと楽天カードで、常時ポイントの“二重取り“ができるのだ。さらに、そこが楽天ポイントカードの加盟店の場合は、 “三重取り”も可能となる。

還元ポイントの増加は楽天グループの“負担増”とも言えそうだが、「楽天会員でよかったと思い続けていただける仕組み、一時的ではない継続的なメリットが重要」と諸伏氏。ポイント還元は“使い続ける動機”としての投資だという。

以前、楽天スーパーポイントと投資を絡めたサービスについて取材した際、「日本発のポイントエンターテイメントを作りたい」という言葉が聞かれたが、諸伏氏も「ポイントフックのコミュニケーションでサービスを進化させたい」と話す。

ポイントの“おトクさ”に加え、楽天グループのスマホ決済対応箇所も全国で約300万に上っており、使える場所も増えている。「すぐに使える、おトクに使える、どこでも使える」という3本の柱が掛け算になり成長しているようだ。
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諸伏氏は、アプリ決済には「お客さまが離脱しやすい『4つの谷』が存在します」という。最初が「会員ID作成の谷」、次にクレジットカードや銀行口座といった「決済情報連携の谷」、そして、アプリ使用の動機を意味する「モチベーションの谷」、最後に「お店を探す谷」だ。

「前半の2つの谷は楽天IDでクリアできますし、モチベーションの谷はポイントが大きな後押しになります。加盟店も増え続けており、4つの谷を越える環境が整っています」

1億以上の楽天会員ID、1700万以上の楽天カード会員、1兆2000億を超えるポイント総発行量。築いてきた資産が積み重なり、楽天ペイの普及につながっているのだろう。

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なお楽天グループでは、今年から東北楽天ゴールデンイーグルスやヴィッセル神戸のホームスタジアムで完全キャッシュレス化を実施しているという。その試みを支えるのが、楽天ペイをはじめとしたサービスだ。

日本のキャッシュレス化を考える上で、楽天グループは大きな存在感を放ち始めている。
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(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)

※記事の内容は2019年5月現在の情報です

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