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質問からオススメの商品をピックアップ

「ドーナツ」は、実は未開拓な“保険のオンライン化”を進める

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以前に比べ、さまざまな取引がオンライン上で可能になった。とはいえ、まだまだネットではなくリアル中心で取引が行われる分野もある。そのひとつが「保険」だ。

「生命保険のうち、インターネットで契約するのは全体の1%ほど。自動車保険でも7%前後でしょう」と話すのは、フィンテックスタートアップのSasuke Financial LabでCOOを務める吉川圭介氏。前職でも生命保険を扱っており、その実感からこう述べている。

そんな背景もあり、同社ではオンラインで保険の比較や診断、ユーザーに合った商品のピックアップを行うサービス「ドーナツ」を提供している。一体どのようなものなのか、そもそもなぜ保険のオンライン化が進まないのか、吉川氏に話を聞いた。

保険の「売りつけられるかも」という心理を避けるには

保険といえば、長きにわたり“対面販売”の代表格だった。かつては、各企業のオフィスに保険営業の人が訪れ、直接勧めていたほど。最近はその光景は減少傾向にあり、インターネット販売も登場しているが、とはいえ、未だに「多くが対面販売」だと吉川氏は言う。

「そもそも保険は複雑かつ長期にわたる金融商品のため、保険会社自身がほとんどの商品を対面のみで売るようにしています。リスク管理のひとつですね。実際、ネットで販売可能な保険商品は全体の2割ほどの感覚。こういった文化もあり、オンラインで契約する人は非常に少ないのでしょう。とはいえ、これからはそのルートをもっと充実させるべき。マーケットとしても未開拓で、非常に可能性の大きな領域です」

吉川氏は「対面販売が主の保険ですが、そもそも保険は仕組みが分かりにくいため、会って話を聞くと『売りつけられるのでは』という警戒心理が働きやすい」と言う。特にその傾向は若い人に強く、「保険について考える際に、オンラインで気軽に接触できる環境があれば」と続ける。

そうしてできたドーナツは、いくつかの機能がある。1つ目は、オンライン上でそのユーザーにどんな保険が適しているか、最短1分で診断する「ドーナツ・アンサー(保険診断)」。まず生命保険やがん保険などのカテゴリを選び、年齢や家庭状況、保険への考え方など、計7〜8つの質問に答える。

すると、自身に合ったオススメ商品と、毎月の保険料などを試算して提示する。商品の細かな条件や内容も表示され、そのまま資料請求の手続きや、商品販売元の保険会社のサイトに飛んで見積もりや契約に進むことができる。加えて、なぜこの商品を勧めるのか、提案理由も表示される。

「どういった考え・状況のお客さまに、どの商品をオススメするのか、社内のファイナンシャルプランナー(FP)と相談しながらシステムを構築しました。質問についても、適切な保険商品をオススメするために必要なものをFPの方の話をもとに用意しています」

「愛」で保険に入るからこそ、オフラインも大切にする

同社では、先行して「ウェルスケア」という家計見直しアプリを提供している。以前の記事でも取り上げたが、そこではユーザーが家計状況を入力すると、それに合わせてデータベースにある大量のパターンのアドバイスから適切なものがピックアップされる。これもFPとともに作っており、同じノウハウを活用しているといえよう。大量のパターン(保険商品)から適切なものをピックアップするシステムや、FPとともに作り上げる過程は両サービス共通だ。

また、ドーナツでは年齢と性別を入力すると各保険商品の見積もりを一覧表示する「ドーナツ・モール(比較・見積り)」もある。このように、オンラインで保険を選ぶルートを充実させている。

とはいえ、すべてをオンラインで完結することを目指しているわけではないようだ。たとえば、サービスの中にはFPを探して面談を申し込む「ドーナツ・コンサルティング(対面相談)」もある。

「特に生命保険は“愛”で入る人が多いと思うんですよね。結婚や子どもができたとき、その人たちへの愛や責任感から加入する。だからこそ、人の思いや感情も重要な要素で、それが対面販売との相性の良さにつながっている点もあるでしょう。今後もオフラインは残り続けると思うので、オンラインかオフラインかではなく、ユーザーがその時に求めるチャネルを提供していきたいと思います」

なお、先述したウェルスケアの記事において、同社代表の松井清隆氏が「家計の考え方」を述べている。それは、あくまで最初は日々の支出を支える「貯金」の確保が重要であり、その上で「保険」に加入する。さらにお金に余裕があれば「投資」を行うというもの。ウェルスケアに続きドーナツができたのは、まさにその流れに沿った展開と言える。

「ウェルスケアは家計を診断し、アドバイスするのが目的ですが、その延長で『アドバイスをどう実行に移すか』と悩む声が多く聞かれました。そこを解決するひとつの手段として、ドーナツがあります」

保険という領域において、オンラインの充実を図り、なおかつオフラインも大切にする。そんな世界観で、今後もドーナツはサービスを高めていく。

(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)

※記事の内容は2019年9月現在の情報です

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