FPと作った細かなレポートを提供
アプリで家計を診断してくれる「ウェルスケア」
私たちは、日々のお金や将来のマネープランについて、普段どこまで考えているだろうか。特に小さな子どもを持つ家庭は、こういった“家計”のあり方をどうすべきか、悩むケースも多いだろう。
とはいえ、その悩みをファイナンシャル・プランナー(FP)などの専門家に相談する場合、費用をはじめとしたハードルがあり、二の足を踏んでしまうかもしれない。
そんな中、アプリで手軽に、そしてなるべく具体的に家計のアドバイスをもらえるサービスがある。2017年9月にローンチした「ウェルスケア」だ。サービスを運営するSasuke Financial Lab 代表取締役の松井清隆氏は、もともと証券会社に勤めており、「お金のリテラシーに対する一般個人と専門家の間の“情報格差”を痛感した」という。その格差を解消するため、個人が自身の家計をきちんと把握し、マネーリテラシーを上げられるサービスを開発した。
松井氏の考える家計やマネーリテラシーのあり方を聞きながら、ウェルスケアの機能を紹介していく。
貯金→保険→投資という家計のキホンを知ってほしい
取材の中で、松井氏は自身の考える“家計の考え方”を話してくれた。そして、その考えこそがウェルスケア開発の根底にあるという。
「家計は、まず『貯金』をしっかり確保して、余ったお金を『保険』、さらにお金に余力があれば『投資』に回すピラミッド構造だと思っています。私たちが一番お金を使うのは、日々の生活費を中心とした支出。そのためのお金を貯金という形でしっかりデポジットすることから家計は始まります」
あくまで貯金を確保した上で、次に「将来のリスクに備える意味での保険がある」と松井氏。さらにまだお金に余力があれば、最後に「投資をするべき」と続ける。
「たとえば貯金だけでお金に余裕がない状況なら、無理に保険に入ったり投資をしたりする必要はないでしょう。あくまでこのピラミッド構造が家計の基本で、逆にそれを知らずに投資を勧められるから『怖い』『損したらどうしよう』となります。そういった家計の基本的なあり方や知識を得るツールとしてウェルスケアがあります」
もちろん、こういった知識はFPに相談すれば教えてくれる。ただ、冒頭で触れたようなハードルがあり利用率は高くない。そこで、お金のアドバイスやリテラシーを上げるサービスがつくられた。
「ウェルスケアの代表的な機能は、お客さまの収入や住居費、保険料、水道・光熱費といった家計の情報を細かく入力すると、個別にカスタマイズされた『家計診断レポート』が見られることです。家計簿アプリの多くは、さまざまな支出や収入をアプリに記録するのが中心ですが、こちらはその先、今の家計状況を知った上でどうすればいいか、具体的なアドバイスにフォーカスしています」
収入30万円に対し食費5万円は“適切か……その判断の裏側
実際、ユーザーに提供されるアドバイスは非常に細かい。「支出と収入のバランス」といった家計全体の状況を分析するだけでなく、住居費や“おこづかい”など、項目ごとにもアドバイスが提示される。アドバイスの内容については「FPの方々と協力しながら、どのようなパターン・傾向の際にどのアドバイスを出すか、細かく考えていった」という。
「家計の診断は、さまざまな要素を複合する必要があります。たとえば収入30万円の家庭の食費が5万円だったとして、それが適正かどうかは簡単に判断できません。国勢調査をはじめとしたさまざまなデータはもちろん、お客さまの家族構成やそのほかの支出状況など、複合的に判断するポイントをFPの方と相談し、アドバイスを構築していきました」
なお、アドバイスのパターンも相当な数が準備されているという。複雑な家計データを分析し、豊富なパターンの中から適切なアドバイスをピックアップする技術こそ、このサービスを支える核なのだろう。
松井氏は「改善のアドバイスをお客さまが参考にするのはもちろん、『今の家計で大丈夫』と認識できてよかったという声も多い」と話す。大丈夫な点はきちんと肯定し、必要部分にだけ改善のアドバイスをする。まさにFPが面談で行うことをアプリで再現した。
さらに、アプリではマネー講座の動画や、お金に関するニュースを専門家のコメント付きで見られる機能も。徹底して「マネーリテラシーの向上」をバックアップしている。ほとんどは無料で、月額280円を払うと全サービスが利用可能になるシステムだ。
なお、同社ではウェルスケアに続き、保険の加入・見直しサービス「ドーナツ」もリリースしている。これは、まさに最初に話した家計のピラミッド構造に基づいたもの。まずは家計についての関心を高め、次に保険を考える。その流れの“起点”にウェルスケアがある。
(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)
※記事の内容は2019年9月現在の情報です
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