立場を変え、ゲーマーからゲームメーカーになるべし!

藤原和博氏が考えるお金と投資「給与アップを狙う前に自社株を買おう」

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リクルートで実績を残し、東京都で義務教育初の民間人校長になるなど、異色の経歴を持つ藤原和博氏。キャリアに関して多くの著書を持つ同氏には、前回の記事で「長く働き続ける秘訣」を伺った。

実はそのとき、”東証マネ部!”の取材ということで「投資やお金のエピソード」も聞いたところ、「1時間話せるくらい成功も失敗もあるよ(笑)」と盛り上がる展開に。また「ビジネスパーソンは、ぜひ自社株を買ってみてほしい」という提案も飛び出した。

そこで、今回は藤原氏のお金にまつわるエピソードや、投資とキャリア、人生観のつながりを聞いてみた!

20代で数百万円損したお金は、おばあさんの…

「投資ではたくさん失敗してきましたよ(笑)。若いとき、勉強もせずにカッコつけて、東京電力の株と日本信販のワラント債を買って。当時ブームだったんでね。そしたら両方大きく下がって、合わせて数百万円損しましたから」

そのときは「まさに血を見るような感覚だった」と笑って振り返る。しかも、元手となった資金は、かなり特別なお金のようで……。

「そのお金は、ばあちゃんが『孫に何かあったときのために』と母に生前預けたもの。戦争で未亡人になったばあちゃんが百貨店の地下で掃除婦としてコツコツ働いて貯めた大切なお金なんですよ。それを失って。もうね、最低でしょ(笑)」

最近も、ある企業の社長を務める古い友人が「自社の株価が上がらない」と嘆いてたという。それを聞いて、応援の意味でその企業の株を購入。「確かに株価が下がっていたので、これは今から上がるだろうと。『俺うまいな!』なんて思っていた」とのことだが、その企業の株価は、以降もさらに下がってしまったようだ。

藤原氏は、そんなエピソードを“笑い話”として紹介する。「今度その友人に会ったら、『お前の会社の株、俺は買ったからな』と言いますよ。きっとおごってくれるんじゃないかな(笑)」と。

投資でプラスになった経験もあるという。トータルで見れば「株の運用成績はプラマイゼロくらい」。しかし、成功談よりも失敗談を話してくれる。

「トータルでプラマイゼロだから、自分の中で株はコミュニケーションだと割り切っているんですよ。たとえば失敗談は、こういう取材や人との会話でネタになる。あるいは、友人の会社を応援するコミュニケーションにもなる。儲かったらうれしいけど、それを話してもつまらないでしょ(笑)」

藤原氏は「人生の後半は“貸し”が多い方がいい」という。知り合いの企業の株を買って損しても、それが相手への“貸し”になり、信用につながる場合がある。もちろん節度はあるが。キャリアに関する前回記事で他者からの「信用」がキーワードになったが、それはお金にも通じるところがあるようだ。

「逆に儲かったとしても、他者からの信任、信用が上がるとは限らない。もし事業で財を築いた場合、今度はそのお金をどこに投じるか見られます。信用が生まれるのはそこなんですね。だから欧米の経営者は、寄付や学校の建設などを積極的に行い、アピールする。儲けたお金をどう使うかが非常に大切なんです。ただ日本人は、お金の使い方の教育を受けていないので、その点の意識は薄いですね」

どこかでゲーマーからゲームメーカーになるべき

そんな自身の投資エピソードとともに、藤原氏は投資とキャリア、人生観のつながりについても教えてくれた。

「35歳頃までは“消費者”でいいかもしれません。でもずっと消費者のままでは人生が物足りない。どこかで立場を変える、ゲーマーからゲームメーカー(ゲームやルールを作る側)へ、消費者から作る側、資本側へ回ると視点が大きく変わると思います。そのために一番良いのは、自分が勤める会社の株を買ってみること」

自社株買いを勧める理由は「会社が軌道に乗れば、自分の給料よりも確実に会社の資本の成長するスピードの方が早いから」という。何十年と会社が成長すれば、資本は100倍になることもあり得る。しかし「給料はそこまで上がらないでしょ」と。

「大切なのは、自分が経営の一翼を担う意識が芽生えること。それが世界を観る視点やモードを変えます。もしも自社株買いの制度を持たない会社なら、経営陣にリクエストしてもいいでしょう。それを拒否する企業は、自分なら辞めてもいいと思うくらいです」

社員は企業の成長に加担しているわけで、そのリターンが給料だけなのは適切ではないと藤原氏は考える。収入の増加を超えるスピードで会社の資産は増えているからだ。一方、持ち株を持って経営の一翼を担うと、「社員のモラルや意識も変わる」という。

同じ理屈で、「ブランド品を追うより、そのブランド会社の株を買った方がいい」とも。自分がぞっこん好きになるほど価値がある商品を出し続けられるなら、その会社は成長し続けるだろうからだ。高級ブランドを買い集めているだけなら「消費者」の立場から抜けられない。1株でも持たせてもらった瞬間から「資本」側の視点が手に入る。自分が経営者なら、次はどんな商品を出そうか、と。ただのゲーマーからゲームメーカーに意識のモードが変わるのだ。

投資とキャリア、人生観のつながりを考える意味で面白いテーマ。もちろん藤原氏の私見ではあるが、ビジネスパーソンの方々は参考にしてはいかがだろうか。

(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)

※記事の内容は2019年9月現在の情報です

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