保有している現金と借金のデータから財務の健全性を見極めろ!

投資に役立つ「会社四季報」活用のポイント 後編

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過去から現在に至るまでの業績をもとに、株価の値動きを予測するファンダメンタルズ分析を進める上で、貴重な情報源となる『会社四季報』。

前編では企業の基礎データや売上が把握できる項目を紹介したが、今回はさらに企業を深く知るためのポイントを、マネックス証券マーケット・アナリスト兼インベストメント・アドバイザーの益嶋裕さんに教えてもらった。

ネット証券等のサイトから、基本的に無料で見られる『会社四季報』の情報を参考に進めていこう。

「自己資本比率」で借金の有無をチェック

ポイント5「自己資本比率」
「財務の健全性を測る上で、大切な項目です。『自己資本比率』が高いということは、借金が少ないということ。借金がない企業は倒産するリスクが低く、安定感があるといえます。明確な水準はありませんが、50%を超えていたら安心していいでしょう」(益嶋さん・以下同)

画像提供/マネックス証券

益嶋さんは、「ただし、『自己資本比率』が低いからといって、必ずしも危険というわけではない」とも言う。ここで、同じ業態の企業を比較してみよう。セブン&アイ・ホールディングスは41.9%と高い水準だが、イオンは9.9%と低い。しかし、イオンは高い業績をキープしている企業というイメージを抱く人は多いだろう。

「イオンはあえて借金をして、全国に店舗を置き、経営拡大を狙っているのです。『自己資本比率』に、戦略の違いが表れることもあります。『自己資本比率』が低い企業の方が、うまくいった時のリターンが大きいという見方もあるので、売上などと総合して見る必要があるでしょう」

「有利子負債」と「現金等」を比較して経営の安定性を測れ

ポイント6「有利子負債」「現金等」
「『有利子負債』は借金、『現金等』は現金同等物がいくらあるかを表しています。この2つを比較することで、実質無借金かそうでないかがわかるのです。基本的に、借金がなければ企業は倒産するリスクが低いので、安心感が高まります」

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例えば、上記の日本テレビホールディングスの場合、「有利子負債」は約26億円、「現金等」は約457億円。借金はあるが、いつでも返せるだけの現金を持ち合わせているため、実質無借金だといえる。

それぞれの表は企業によって「百万円」「億円」と単位が異なるため、読み間違えないように注意しよう。

「営業CF」が下がり続けている企業は要注意

ポイント7「営業CF(キャッシュフロー)」
「『営業CF』は、本業の部分での現金の出入りのことです。あくまで帳簿上の『売上』や『営業利益』と比べて、さらに改ざんしにくい項目なので、より正確な業績が見えてくる部分。マイナスが続いている企業は、要注意といえます」

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上記の日本通信は、3億円以上の現金が出ていってしまっている。かっこ内の数字は前期の数値で、前期は11億円以上出ていったことがわかる。合わせて『現金等』を確認すると、6億円程度しかないことが見えてくる。

「万が一、現金がなくなった企業は、増資して投資家から現金を集めて対処するという可能性も出てきます。増資をすると株価の価値は下がりますが、そのリスクも、『営業CF』や『現金等』から読み取れるのです」

情報の信頼度の指標となる「監査法人」

ポイント8「監査法人」
「企業の基礎情報の中には、監査法人が記載されています。実績がある4大監査法人であれば、掲載されている財務情報の信頼度は高いでしょう。ただし、4大監査法人でも見破れない不正もあるので、絶対ではありません。あくまで参考程度に」

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基礎情報の中に「[監]」と記載されているので、注目してみよう。

●日本の4大監査法人
EY新日本有限責任監査法人
有限責任監査法人トーマツ
有限責任あずさ監査法人
PwCあらた有限責任監査法人

前・後編を通じて紹介してもらった8つのポイントは、「大失敗を防ぐ可能性を上げるためのもの」と、益嶋さんは教えてくれた。

「大成功のためにはもっと高度な分析が必要ですが、投資は大失敗をしないことの方が大切です。そのための情報が『会社四季報』には詰まっています。また、投資しない方でも、就職や転職の際に活用できます。『自己資本比率』や『営業CF』がマイナスだと、事業がうまくいっていない可能性もあるので、入社前にチェックしておくと安心ですよ」

企業の本来の姿が、ギュッと凝縮して掲載されている『会社四季報』。まだ見たことがないという人は、まずは身近な企業の情報を見て、ファンダメンタルズ分析の感覚を身に付けてみるといいだろう。今回のポイントを踏まえて、大いに投資に役立ててほしい。
(有竹亮介/verb)

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