「家財の保険金」&「契約年数」がカギ
FPが教える「火災保険」保険料の見直しポイント
万が一、住んでいる地域に災害が直撃し、自宅が損壊した場合を想定して、「火災保険」には入っておきたいもの。しかし、「風水災」の補償や「地震保険」をプラスすると、保険料の負担が増えてしまう。節約する方法はないのだろうか?
ファイナンシャルプランナーの清水香さんに、「火災保険」の保険料を見直すポイントを聞いた。
「保険料の節約=補償の削減」を意味する
「まず、『火災保険』を“節約”という観点で判断するのは危険です。必要な補償を削り、目先の保険料の安さのみを優先すると、住宅や家財に大きな損害を受けても、必要となる生活再建のためのお金を十分に確保できないことになります。必要な補償を削ってはいけません」(清水さん・以下同)
生活協同組合などが提供する「共済」には、掛金が安めのものも存在するが、風水災や地震による損害で受け取れる共済金も少なめ。保険料負担と補償の手厚さが比例することは、肝に銘じておきたい。
ただ、補償内容を精査して、保険料を抑えることは可能だという。具体的に、チェックするべきポイントを教えてもらった。
「家財の保険金額」見直しで保険料ダウン
「まずは、契約している『火災保険』の補償内容を見直し、優先度の低いものがあれば削りましょう。補償の手厚さと保険料は比例するので、必要なものを精査して優先度を付ければ、保険料を抑えることにつながります」
ハザードマップ上で浸水や土砂災害による被害が想定されない場所に住んでいるのであれば、「水災」の補償はつけなくても問題ないかもしれない。生活再建できるだけの貯金があれば、貯金で対応するという選択肢もあるだろう。ただし、貯金で対応できないと考える人も多い。暮らしが覆るほどのリスクには、保険で対応できるようにしておきたいと考えると、削れる補償もなさそうだが…。
「多くの人にとって削れる可能性が高い部分が『家財の保険金額』です。保険会社では、一般的な世帯の家財の評価額(再調達価額)の目安を出しているのですが、実態と比べて高めだと感じる人が多いようです」
●簡易評価表(家財の再調達価額の目安)(セゾン自動車火災保険/2019年10月時点)
※上表にない家族構成の場合は、大人(18歳以上)1名につき170万円、小人(18歳未満)1名につき90万円を目安に実態に合わせて加算・減算してください。
※上記、簡易評価表は目安ですので、実際の家財評価額と異なる場合があります。
家財とは、電化製品に家具、服、自転車、歯ブラシ1本に至るまで、自宅にあり、家族が使っているもののほとんどが含まれるが、暮らし方は人それぞれ。35歳前後の夫婦と子ども1人で、1020万円を多額と感じる家庭は多いかもしれない。その場合、この簡易評価表のまま契約すると、実態と合わない過大な保険金額となり、保険料も高くなってしまう。
「簡易評価表はあくまで目安なので、自宅にあるものの総額をざっと計算し、実態に合わせた保険金額で契約するとリーズナブルです。もし、災害で家財が損害を受けても、原状を回復できる金額が支払額の上限となるので、保険金額を高くしても無駄になります」
契約後であっても、更新を待たずに家財の保険金額は変更できるとのこと。減額すると、未経過分の保険料は返還されるため、早めに行動に移した方がよさそうだ。
保険料を抑えたいなら「長期契約」が◎
清水さんの話によると、保険料を抑えられる支払い方もあるのだとか。
「毎年更新して保険料をその都度支払う方法と比べると、数年分を一括で支払う『長期一括払』の方が、1年当たりの保険料は抑えられます。最長で10年間分をまとめて支払えて、契約年数が長いほど割引率は高くなります」
ただ、一括払いということは、数十万単位の大きなお金が必要になる。資金が用意できない人は、毎年更新の選択肢しかないのだろうか。
「『長期年払(長期分割払)』という方法もあります。例えば、5年間の契約を結んだ上で、毎年1年分ずつ支払っていく方法です。こちらも、毎年更新して保険料をその都度支払うより保険料は抑えられます」
被災時の生活再建のための「火災保険」。必ず入っておきたいものだからこそ、補償内容も保険料もしっかり見直し、適切な形で更新していきたい。
(有竹亮介/verb)
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適切でないと保険金が下りない!?「火災保険」の補償内容
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清水香
ファイナンシャルプランナー、社会福祉士、自由が丘産能短期大学講師。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわら、ファイナンシャルプランニング業務を開始。2001年、独立系FPに転身。家計の危機管理の観点から、社会保障や福祉、民間資源を踏まえた生活設計アドバイスに取り組む。財務省の地震保険制度に関する政府委員を歴任。日本災害復興学会会員。