11月までのトランプ大統領の言動はマーケットへの影響大

アメリカ大統領選挙と株式市場の関係 後編

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2020年は、4年に一度のアメリカ大統領選挙の年。11月3日の全米での選挙を控え、日本でもその動向がニュースや新聞で取り上げられているが、前編では「誰が大統領になっても、アメリカの経済成長率は変わらない」と、日興アセットマネジメントのチーフ・ストラテジスト 神山直樹さんが教えてくれた。

ただし、神山さんは「セクター、銘柄レベルでは、大統領選挙の影響を受ける可能性がある」とも話していた。具体的に、どのような影響が考えられるのだろうか。

選挙結果の「予想」がマーケットをブレさせる

「どの候補者が大統領になるか、という予想によって、株価は上下します。例えば、現職のトランプ大統領が勝つと予想されると、エネルギー関連のセクターが買われやすくなるなどの影響が考えられるからです」(神山さん・以下同)

大統領が決まる前から、候補者が掲げている政策にリンクするように、買われやすくなるセクター、売られやすくなるセクターが出てくるというわけだ。もし、個別株やセクターを絞った投資信託などを保有している場合は、選挙戦の動向をチェックする必要があるかもしれない。

「それぞれの候補者がどのセクターを重視していて、現状どちらが有利なのか。そのくらいの情報は、得ておいて損はありません。11月の選挙までの間、予想をもとに株価が上下することは大いにあり得ます」

「トランプ大統領の言動」もマーケットが動く要因

もう1つ、選挙当日まで注目すべきことがあるという。それは、トランプ大統領の動向。

「現職の大統領は11月まで政策を打てるので、トランプ氏が大統領選挙までの間に行うことも、株式市場に影響を与える要素といえるでしょう。選挙に勝つためには強いリーダーであることを示さなければいけないので、極端な行動に出るおそれがあります」

2020年5月29日、トランプ大統領が、中国の「香港国家安全法」導入への制裁措置を発表したが、もともとエコノミストの間では「香港に対する経済的制裁もあり得る」という見方がされていたそう。

「アメリカには、香港に関して行使できる2つの大きな手段があります。1つは、過去に下げた中国からの輸入品の関税を元に戻すこと。もう1つは、香港でのドル資金を制限すること。ただし、原則ドルで金融が動いている香港でこの手段に出た場合、香港で取引しているアメリカの銀行にとっても大変な事態になります」

選挙までの間、トランプ大統領が経済に多大な影響を及ぼす手段を使う可能性は高くないが、その言動には注意すべきだという。

「トランプ大統領は、アメリカの持つ力を、演説やTwitterなどを通してチラつかせることがあります。アメリカにとってもリスクのある手段なので、実行には移さないと思いますが、その言動だけでも、短期的には株式市場のボラティリティ(変動幅)が高くなることが予想されます」

“自分にとって必要な情報”を得ることが大事

選挙までの期間に注目すべきポイントは見えてきたが、どのように情報収集すればいいのだろうか。

「大切なのは、情報を得る方法ではなく、売りや買いの判断に関わる情報を選ぶ力を養うこと。隠れた情報を見抜く力よりも、自分にとって大事な情報か、見極める力が必要だといえます」

前述したように、もしトランプ氏が勝つ予想が立った場合、エネルギー関連の株が買われやすくなるかもしれない。しかし、自分がエネルギー関連に意図して投資していなければ、関係のない話だ。ただ、意図せず無視していたのであれば、幅広い銘柄を持つことを考えるきっかけになるだろう。

「これからの世界を見据えて、先進国のロボット開発に絞る投資信託を保有していたとしたら、アメリカ大統領選挙の影響はほぼないといえます。誰が大統領になったとしても、先進国のロボット開発は進むと考えられるからです」

大統領選挙はそれぞれのセクターに影響する可能性があるが、言い換えれば、関係のないセクターには影響がない。自分の投資対象とその目的を把握していなければ、情報を活用できないというわけだ。

「自分に必要な情報がわかっていれば、多くの場合、大統領選挙の予想に一喜一憂する必要はないですし、売り買いの判断もすぐにできるはずです。情報を得てからの判断は一人ひとり異なるので、まずは投資目的と投資している分野を明確にしましょう」

経済の各論部分には影響しそうだが、中長期的に見れば、アメリカ経済全体に劇的な変化はないともいえるアメリカ大統領選挙。大統領選挙の予想に一喜一憂するより、今後のアメリカ経済全体の成長をどう捉えるか、中長期的な目線で、投資判断した方がよさそうだ。
(有竹亮介/verb)

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