「戦後最長の景気回復」は幻に…
日本も米国も「景気回復終了」を発表。そもそも景気の良し悪しってどうやって測るの?
提供元:Mocha(モカ)
2020年7月の政府発表によれば、日本の景気回復は2018年10月までだったと認定されました。アメリカも同様に、2020年2月に景気後退入りしたと発表しています。
これからの経済状況を把握するためには、景気の動向のチェックは欠かせませんが、景気の良し悪しはどうやって測っているのでしょうか。そして、景気を測る指標には、どのようなものがあるのでしょうか。
景気の転換点は事後認定
景気は回復と後退を繰り返します。その転換点については、各種データから事後認定することになります。つまり、過去を振り返らないと「〇年〇月がピークだった」、「〇年〇月が底だった」、という判断はできないということです。
日本の景気の回復や後退は、有識者でつくる「景気動向指数研究会」が認定しています。景気動向指数研究会では、景気の動きを見ていくための指数を各種採用しています。この指数には先行指数、一致指数、遅行指数の3種類があります。
数カ月先の景気を先取りする「先行指数」
先行指数は、景気の動きに先んじて動く指数です。
たとえば、東証株価指数、新規求人数(除学卒)、新設住宅着工床面積などがあります。株価は、投資家の未来予測によって変わります。これから景気が良くなって株価が上がる、と予測すれば買いが増え、株価が上がり、東証株価指数も上がります。
また、景気が良くなると企業が予測すれば雇用を増やすため、新規求人数が増えるので、これもまた景気に先行して動く指数です。
同様に、景気が良くなれば住宅が売れる、と見込めば新設住宅着工床面積が増えます。住宅着工が増えれば、それに伴い建築・建材関連の企業の仕事が増え、家電・家具の需要も増えるので、今後の景気の動向を考える上では見過ごせない指標です。
現状の景気とほぼ同じ動きをする「一致指数」
一致指数は、景気の動きとほぼ同じ動きをします。
たとえば、商業販売額(小売業・卸売業)、有効求人倍率などです。景気が良くなれば消費も増えますが、景気が悪くなれば買い控えます。そのような状況を表す商業販売額は、まさに景気と同じ動きをする指標です。
有効求人倍率とは、企業からの求人数(有効求人数)を、公共職業安定所(ハローワーク)に登録している求職者(有効求職者数)で割った値のこと。労働市場もまた、景気とほぼ一致して動きます。
遅れて動く「遅行指数」
遅行指数は、景気の動きに遅れて動きます。景気の回復と後退の転換点の判断には、遅行指数と一致指数が大きく影響します。
遅行指数には、消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)や、完全失業率などがあります。景気が悪くなると収入が減り、消費が減少するので物価が下がり、その結果、消費者物価指数が下がります。このような流れなので、消費者物価指数は遅行指数となっています。
完全失業率とは、労働力人口(15歳以上の働く意欲のある人)のうち、完全失業者(職がなく、求職活動をしている人)が占める割合のことです。数値が大きいほど失業者が多いことを表しています。
景気が悪くなれば雇用が減り失業者が増えますが、近年の日本では決して完全失業率は高くありません。それにもかかわらず景気が後退局面であるのは、完全失業率だけで景気は判断できないということを示しています。その他の指数を総合的して判断することが必要になります。
景気は、CIとDIを総合的に判断
景気動向は、先行指数・一致指数・遅行指数をもとに、景気動向指数を算出して総合的に判断します。
景気動向指数には、CI(Composite Index、コンポジット・インデックス)と、DI(Diffusion Index、ディフュージョン・インデックス)があります。
CIは、各指数の変化の大きさを合成して作成した指標。景気の動きの、相対的な大きさやスピードなどをみるのに適しています。
DIは、各指数のうちプラス方向に変化している指数の割合。50%以上の指数がプラスになっている状況が続けば景気拡大、50%を下回っていると景気の後退と判断できます。
GDP、日銀短観も参考指標
そのほかにも、景気の判断には実質GDP、日銀短観の景況感の動きも確認します。
GDP(Gross Domestic Product)は国内総生産ともいい、一定の期間内で新たに生み出されたモノやサービスの総額のことです。GDPの数値はその国の経済規模を表し、推移からは経済成長の流れが読み取れます。
実質GDPは、2019年7~9月期までは四半期連続のプラス成長でしたが、2019年10~12月期以降はマイナス成長になっています。
【実質GDP成長率の推移】
日銀短観とは、日本銀行が企業に対して行うアンケート調査です。景気が良いと感じている企業の割合から、景気が悪いと感じている企業の割合を引いた値で表します。
業種による違いがあるものの、2019年後半からは全体的に下降しており、景況感は悲観的な見方が大きくなっています。
景気後退の後は、回復がやってくる
このように、景気はさまざまな指標で判断されます。コロナ禍の影響もあり景気後退は避けられない流れですが、後退をしたら次には回復していきます。そしてまた後退、と景気の回復と後退を繰り返して、経済は成長していきます。
大切なことは、目先の景気の良し悪しだけに注目して一喜一憂しないことです。長期の視点に立って、家計を守り、資産を作っていきましょう。
[執筆:ファイナンシャルプランナー タケイ啓子]
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