【日経記事でマネートレーニング2】個別株概況を読む~専門用語の理解~
提供元:日本経済新聞社
このコーナーでは日経電子版の記事を読むことで資産形成力のアップを目指します。実際のニュースやコラムを引用し、初心者には難しく思えるような用語をかみくだき、疑問点を解消していきます。金融・経済ニュースをどれだけ読みこなせることは投資のリテラシーそのものです。日々の情報にリアルタイムで動ける実践力を養いましょう。
2回目はマーケット報道の定番記事、株式概況の読み方です。初回は相場全体の記事をサンプルにしましたが、今回は個別株の記事を拾ってみます。
株式投資の醍醐味、資産が10倍になることも
個別株投資では株式運用の醍醐味を味わえます。損失を被る可能性もありますが、優良株を中長期で持てば資産価値が10倍、20倍になる幸運にめぐり合えることもあります。
ただ、個別株の動きは景気や金利などの共通する経済環境だけではなく、個々の企業の経営努力や競争力、関連する情報が反映されます。市場ではこれを「個別材料」とよびますが、個々の情報が企業にとってどういう意味、価値をもつのかを逐次吟味しないといけません。
なかなか骨の折れる作業です。しかし、個別材料と株価の反応・関係について、新聞などでふだんから読んでおくと、新しい個別材料が出てもその影響などを推測、分析しやすくなります。
ではサンプル記事をみてみましょう。一部を加工、割愛しています。
一見、読み流せるように思えますが、ひとつひとつあぶりだすと意外にわかったようでわかりにくい用語が多いかと思います。もともと日経電子版は平易なことばで書かれているので、サンプル記事もかなりわかりやすい部類には入ると思います。
ただ、平易にかきくだすとかえってマーケットの雰囲気や投資資金の動きなどがうまく伝わらないことがあるのも事実ですね。たとえば、「買い向かう」ということばがあったとしましょう。買い向かうと買うとは違うのか?
はい、まったく違います。まあ、ここで解説することではないのでパスしますが、株式投資を真剣にやるなら市場の心理状態を言い得る業界用語、オタクっぽいことばも少し学んで損はないと思います。
記事内容は多彩で複雑、「事実か期待か」が重要ポイント
ではひとつひとつみていきましょう。できるだけシンプルな説明にとどめました。
①東証=東京証券取引所。地方や私設の市場ではなく東証での株価という意味。
②高値=一定期間でもっとも高く約定された株価。今年に入っての高値は年初来高値。
③菅銘柄=あるテーマに関連する企業をくくりだして「○○銘柄」と呼ぶことがある。菅銘柄という企業があるわけではない。
④コード=日本の取引所に上場する銘柄に割り当てられる4ケタの数字。日立製作所=6501のようにニッポンを代表する銘柄は下1ケタに1が多いのでゼロイチ番銘柄ということもある。
⑤反発=はんぱつ。前日に下がったが当日は反転し、上昇した場合の値動きの言い方。逆に前日に上がったが当日は下がる場合を反落(はんらく)。
⑥一時=取引時間中。終値が重視されやすい指数と異なり、個別株は日中の値段もすべて約定された値段なので意味が大きい。
⑦実質ベース=100円の株式を半分に割って50円で2株にしたり、10円の株を10株くくって1株100円にしたり、企業はいろいろな対策をこうじるので過去の株価と今の株価を単純比較できない。そこでこうした施策を考慮して調整した株価を実質といっている。
⑧需要増加を期待=需要が増えた、という「事実」があるのではなく、そうなるだろうと投資家が考えている状態。投資家心理、市場心理ともいい、株価を動かすもっとも重要な要因のひとつである。
⑨富士通や野村総研=事業内容が似た企業にもマネーが流れており、NECに顕著だがNEC固有の動きではないということ。③参照。
⑩コメント=記者が取材で実際にヒアリングした内容。記事の信ぴょう性を担保しており、「伝聞」「うわさ」「私見」などではないことを意味している。取材はできなかったが、「○○のリポートでコメントした」というように情報ソースを明らかにして信ぴょう性を裏付けるケースもある。
では、初心者向けにかみくだいて直した記事をみましょう。くどくて読みにくいところもありますが、どうでしょうか。
株式相場全体を伝える記事情報はどちらかといえば「汎用的」です。米国株が上がったので日経平均株価も上がった、円安になったので日経平均株価が上がった、という具合ですね。
一方、個別株の記事は多彩で複雑です。10本記事があれば10通りの種類があります。ミクロ情報なので難しい一面もありますが、会社の話は投資のすべてのキホンになります。丹念に読めば投資のリテラシーがどんどん身に付きます。
(日本経済新聞社 コンテンツプロデューサー 田中彰一)