【日経記事でマネートレーニング4】業績予想ニュースを読む~誰の見通しか~
提供元:日本経済新聞社
このコーナーでは日経電子版の記事を読むことで資産形成力のアップを目指します。実際のニュースやコラムを引用し、初心者には難しく思えるような用語をかみくだき、疑問点を解消していきます。金融・経済ニュースをどれだけ読みこなせるかは投資のリテラシーそのものです。日々の情報にリアルタイムで動ける実践力を養いましょう。
4回目は業績予想ニュースを取り上げます。3回目の決算ニュースとはちょっと違います。その違いはややこしくて、読み手として鍛錬されていないと勘違いしてしまうたぐいのものです。また、本コラムのような形で取り上げるのはおそらく初めてになります。
ニュースというのは文字通り「New」な情報です。新聞社などメディアが取材して誰も知らない情報を流すのは「ニュース」です。一方、会社が発表、コメントすると第三者に知れわたりますから、厳密にはニュースではなくなります。このため、全国紙など一般メディアでは公な場で流れた情報は「発表した」「公表した」と伝え、ニュースとは区別しています。
ここでややこしくなるのが業績の予想に関する報道です。
「なりそうだ」と「なりそうだと発表した」は大違い
業績は誰が予想しているのでしょうか?まず、会社側が開示する業績予想があります。そしてアナリストやシンクタンクなどプロの予想もあります。また、日本経済新聞社でも記者予想というのを提供しています。こうした中で予想記事が流れるとだれの予想かを区別しないといけません。
サンプル記事をみてみましょう。一部を加工、割愛しています。
記事に「発表」ということばが入っていません。これは日本経済新聞社の予想ということになります。しかし、新聞社ですから恣意的な予想を流すことはありません。報道機関としてきちんと取材をし、裏付けがとれた段階で報じます。つまり、これは日経独自のニュースで、発表ではありません。確認しようと適時開示やプレスリリースを探してもみつかりません。
一方、会社側が「赤字になりそうだ」という見解を公表した場合は「A社が赤字になりそうだと発表した」という記事になります。
余談ですが、報道機関Zが「〇〇社が△△社を買収すると正式に発表した」と報じた場合は、すでにZがニュースとして報じていることを意味します。正式に、を加えるのは発表内容が事実上、既報であることを示しています。
難解な会計用語は無視、バックグラウンドを理解
ではひとつひとつみていきましょう。できるだけシンプルな説明にとどめました。この手のニュースは毎日読んで慣れないとすっとアタマに入ってこないでしょう。
①最高益=過去最高といっても会計ルール等が昔と大きく変わっており、継続性に注意
②なりそうだ。=日本経済新聞社の取材によるニュース。会社側が発表した場合は、『〇〇〇になりそうだと発表した』という記事スタイルになる。
③従来予想=一般に従来予想というのは会社側が直近公表した業績予想を指す。2020年5月の決算発表で2021年3月期の予想を公表し、2020年8月の四半期決算で見通しを修正した場合、2020年11月時点での従来予想は8月時点の予想を指す。また、期初予想とは、当年度が始まって最初の公表値のこと。
④一転=業績のベクトル(方向性)が逆になるときに使われるフレーズ。増益と減益、黒字と赤字など。
⑤だったようだ。=日本経済新聞社の取材による過去実績のニュース。会社側が発表した場合は、『〇〇〇だったようだと発表した』という記事スタイルになる。
⑥決算発表は〇日を予定=決算発表日を明示することで、会社側の発表ではないと区別している。つまり、適時開示はされていませんよ、という意味。
⑦予想を上回った分だけ引き上げ=下期はこれまでの見込みを据え置くから、通期予想は上期の積み増し分だけ上振れする、という意味
初心者向けにかみくだいて直した記事をみましょう。
日経が独自ニュースを報じた場合、文字通り「初出」になるため、株価へのインパクトも大きくなりがちです。ただし、業績や財務についてもっとも情報をもっているのは当の企業自身です。必ず会社の公表内容や説明を吟味して投資判断につなげるようにしましょう。
(日本経済新聞社 コンテンツプロデューサー 田中彰一)