東証ETFのキーパーソンに聞く

チャレンジ精神にあふれた投信会社、三菱UFJ国際投信・代田氏が語る“ETF” ・前編

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日本で初めてETFが誕生してから25年。その過程でさまざまなETFが世に出てきたが、特色ある銘柄を市場に発信し続けているのが三菱UFJ国際投信。

同社がETFをスタートさせたのは、2008年9月。その開発に携わり、歩みを見守ってきた常務取締役兼商品マーケティング部門長の代田秀雄さんに、ETFのこれまでとこれからについて聞いた。

多様なDNAを内包したチャレンジングな会社


――三菱UFJ国際投信でETFを扱い始めたきっかけを伺いたいのですが、その前に会社の成り立ちから教えていただけますか?

「弊社の前身は、1959年に日本初の投信会社として創立した山一證券投資信託委託です。現在、山一證券の名前が消えているのは、9つの会社が合併してきた歴史があるから。9社がくっついたこともあり、さまざまなDNAを持った社員が集まった多様性のある会社だと感じています。風通しが良く、新しいチャレンジに対して臆さないところも、特徴だと思います」

――確かに、チャレンジングな取り組みが多い印象です。ちなみに、代田さんはどのような経緯でETFの担当に?

「私は1985年に、現在の三菱UFJ信託銀行に入行したんです。数年間は、法人の融資や資産運用の相談などを担当していました。いわゆる銀行員らしいお仕事です。その後、従業員組合の仕事を経験してから、年金運用の部署に配属されました。それ以来、運用に携わって30年経ちますね。

年金関係のアセットアロケーションやオルタナティブ運用、ヘッジファンドなど、さまざまな経験を積み、現在の三菱UFJ国際投信に移ることになったのです。ここで最初に取り組んだ事業がETFでした」

――三菱UFJ国際投信では、2008年9月にETFの取り扱いがスタートしていますが、まさにそのタイミングだったのですね。

「そうなんです。我々はETFを投資信託の一種と捉えているので、投資信託会社という看板を掲げている以上、扱わないという選択肢はないと考えていました。

2008年当時、既に何社かはETFを出していたので、弊社は後発となりましたが、投信法に則り、投資家による有価証券投資を容易にし、資産形成の文化を日本に根付かせるべく、ETFの上場に動き出しました。投資信託会社は、国民経済を発展させていく役割があるので、そのためにもETFは外せないものだと考えています」

ETFを「MAXIS」というブランドに統一した理由


――三菱UFJ国際投信のETF第一弾は「MAXISトピックス・コア30上場投信(1344)」でしたが、なぜTOPIX Core 30を選んだのでしょう?

「ETFを始めるにあたって、日経225やTOPIXをいかに伸ばすかという戦略は当初からありました。ただ、ETFの経験がなかった我々にとって、数百~数千銘柄を組み込む商品を作ることは、事務的な面で負荷がかかるという側面もありました。

株式現物のやり取りが発生するETFは、投資信託を作る方法とは違います。設定・交換の手法が異なるだけでなく、設計図も東証に提出する書面もルールも違う。経験のない業務になるので、まずは我々自身が業務フローに慣れる必要がありました」

――そのため、まずは30銘柄に絞られたTOPIX Core 30を選択したのですね。

「その通りです。30銘柄という、比較的限定された指数を用いることで、ETFの運営に慣れていけると考えたのです、そのうえで、次のステップに進むことができるとも思っていました」

――必要なステップだったのですね。ところで、ETFを「MAXIS」というブランドで統一したのは、理由があるのでしょうか?

「ETFにおいてブランド戦略を図ったのは、投資信託会社のなかでは早かったと思います。『MAXIS』というブランドを設定したのは、ETFの特徴に由来するものでした。

非上場の投資信託は、税制の問題もあり、原則国内のお客様しか買えません。一方、ETFは上場するため、株式と同様に海外のお客様も購入できます。つまり、ETFは全世界に向けて発信する商品となるため、グローバルで通用するブランドにしたかったのです。

実際、2011年に、当社のETFがニューヨーク証券取引所に上場したこともあります。国内の運用会社で初めての試みで、『歴史的快挙』と評価していただきました。残念ながら、後に上場廃止となってしまうのですが、新しいことにチャレンジする経験が重要だと考えています」

失敗や経験を積み上げながら、進化する「MAXISシリーズ」


――「MAXISトピックス・コア30上場投信」をリリースしてから、どのような戦略で進めていきましたか?

「その後、『MAXIS日経225上場投信(1346)』『MAXISトピックス上場投信(1348)』と展開するのですが、ETFは指数に連動する商品という特性もあり、一般的に先にリリースした会社が有利な傾向があります。後発として、いかに先行者をキャッチアップするかということを考えて、工夫しましたね。

その1つが、先行ファンドとの差別化戦略。当時の我々が取った方法は、まず運用管理費用(信託報酬)を抑えること。そして、決算回数を2回にすることです」

――他社のETFは、決算回数が2回ではなかったのですか?

「当時のETFの決算は、ほとんどが1回でした。国内のETF投資家の多くは金融機関で、基本的に上期決算・下期決算と年2回決算がある機関がほとんど。1回の決算で大きな配当が出るETFより、決算を2回に分け、上期下期それぞれに配当が出るETFの方が、重宝がられると考えたのです。

上場後は、社会の変化に応じて、信託報酬その他、常にチューニングやバージョンアップを続け、お客様のニーズにフィットする工夫を心がけていますね」

――銘柄そのもので、工夫を凝らしたものはありましたか。

「2009年7月に上場した『MAXIS S&P三菱系企業群上場投信』は、当社ならではですね。当時、グループ企業内で持ち合っていた株式を売りに出す計画が上がっていたのですが、単にマーケットで売るのではなく、ETFにして新しい投資家に手渡していこうというアイデアを出し、『MAXIS S&P三菱系企業群上場投信(1670)』ができ上がったのです。一時期は、純資産もかなりの額まで増加した記憶があります」

――投資家にも評価された銘柄だったのですね。

「上場した全ての銘柄がうまくいっているわけではありません。いろいろな銘柄があって、それぞれにチャレンジするわけですが、10戦10勝ということはあり得ない世界です。でも、その失敗や経験を積み上げながら、我々は進化しているのだと感じています。挑戦するという理念は間違っていないと思うので、過去の勉強を生かして、これからも新しい商品やシステムを仕掛けていきたいですね」

さまざまな創意工夫で、顧客のニーズに寄り添ってきた三菱UFJ国際投信。だからこそ、現在のETFの在り方に思うところもあるという。後半では、ETFのこれからについて伺う。

(有竹亮介/verb)

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