投資と消費をつなぐ新しいカタチ

投資サービスの“境界線”に挑戦する「ドコモ×日興フロッギー」

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投資を楽しく学べ、100円単位で株も買える「日興フロッギー」。2020年春にはドコモのdポイントで株が買えるサービスも登場し、投資初心者が“一歩目”を踏み出す場として人気を集めている。詳しい内容は、以前紹介した記事の通りだ。

そして2020年の秋、日興フロッギーとドコモの新たな取り組みが2つ始まっている。1つは、企業の株を買い、指定されたその企業の商品を購入すると、dポイントがもらえるもの。もう1つは、株に馴染みがない人の「どんな銘柄がいいのかわからない」という悩みに応えるものだ。

いったいどんな新機能なのか。また、両社が手を組んで半年以上経ち、どんな結果が出ているのか。ドコモの原田伸也氏、中井沙織氏、SMBC日興証券の横山敦史氏、田中惠子氏に取材し、最前線を探った。

ある条件で株と商品を買うと、dポイントのボーナスが

日興フロッギーは、お金や投資の情報が毎日掲載される「投資情報メディア」。加えて、実際の株を100円またはdポイントを使って100ポイントから購入できる。サイトの記事で投資を学び、「株を買いたい」と思ったらそのサイト内で直接株を購入することができる。今までの投資サービスにはなかった新たな枠組みだ。

このアイデアは高い評価を受けている。“日本最大級の広告賞”とされる「ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS 2020」では、最優秀賞に当たる総務大臣賞/ACCグランプリ(ブランデッド・コミュニケーション部門)を受賞。難しいイメージのある投資について「記事で学びながら株を買う仕組みを評価していただきました」(SMBC日興証券・横山氏)とのこと。60年の歴史がある同賞において、投資サービスが受賞するのは初めてだった。

日興フロッギーとドコモが手を組んだのは2020年3月。dポイントで株が買えるサービス「日興フロッギー +docomo」がスタートした。以降、日興フロッギーからの口座開設数は約7倍に。取引件数も6倍になった。サイトのアクティブユーザーも「月間40〜50万ほどで推移しています」(SMBC日興証券・田中氏)という。

さらに10月からは、dポイントによる新しい試みが始まっている。対象企業(銘柄)の株を購入して一定条件を満たすと、ドコモグループのチケットサイトでポイントボーナスチケットを発行。その後に、ユーザーが、購入した株の企業の対象商品を買うと、ユーザーはdポイントボーナスがもらえるのだ。

細かな条件は他にもあるが、大きくは「対象企業の株を買う」→「チケットが発行される」→「その企業の対象商品を買う」→「ボーナス(dポイント)がもらえる」という流れ。今回はまだトライアルだが、森永製菓、伊藤園、エバラ食品工業、小林製薬、森永乳業、明治ホールディングスの6社が参加している。

仮に伊藤園の株を購入して条件を満たすと、チケットが発行される。その後、チケットに掲載されている商品である「健康ミネラルむぎ茶」を購入すればdポイントをゲットできる流れだ。

「日興フロッギーで投資が身近になるだけでなく、「投資と消費の一体化・循環」といったことを考えてきました。日興フロッギーは、私たちドコモが協力する前から、日常の消費や経済活動がさまざまな上場企業とつながっていることを記事で伝えています。dポイントを活用することで、お客様にこの投資と消費の関連性をより実感していただければと思いました」(ドコモ・中井氏)

この機能のミソは、株を買っただけではdポイントが進呈されないこと。株を買い、さらにその企業の商品を買うとボーナスとしてdポイントをもらうことができる。株主優待とはこの点が大きく異なる。

「株を買うだけでなく、実際の商品を手に取っていただく方が、きっとその企業を深く知れるはずです。それは、株主である企業と、投資をするお客さまのコミュニケーションにも発展する。今までにない企業と投資家の関係性を築ける可能性があります」(ドコモ・原田氏)

ドコモのロジックを使い「銘柄との初めての出会い」をサポート

もうひとつ、2社で新たに実施しているトライアルサービスがある。「あなたに身近な会社」というユーザー個人個人にむけた銘柄表示のサービスだ。

「初めて株を買うとき、どの銘柄を選べば良いかわからない方も多いのではないでしょうか。ましてや上場企業は3000以上あります。そこで、日頃よく利用する商品やサービスをもとに、お客さまにとって身近だと思われる会社のお名前を表示しています。「選べない」といった悩みを解決し、「こんな銘柄あったんだ、自分に身近な会社なんだ」ということに気づき、初めての銘柄との出会いに役立てていただく仕組みです」(ドコモ・中井氏)

とはいえ、どうやって身近な会社を選ぶのか。ここで活用されるのが、ドコモの持つビッグデータだ。dポイントクラブの会員情報データ(統計データ)などをドコモのロジックで分析。身近と思われる会社の銘柄をチョイスする。もちろん、データ活用や銘柄表示は、会員の同意のもとで行われる。

dポイントのボーナスチケットが「投資から消費が生まれる仕組み」なら、こちらは逆。「普段の消費が投資につながる仕組み」と言えるだろう。いずれにせよ、どちらも投資と消費がつながった機能だ。

「日興フロッギーは、もともと『投資と消費を結びつけること』をコンセプトに立ち上げました。今回の取り組みは、最初からやりたかった形。これらを通じて、普段の消費と投資がつながっていること、そして株式会社が日常にあふれていることを感じていただけたらいいですね」(SMBC日興証券・横山氏)

日興フロッギーでは、身近な商品やサービスから上場企業を知る記事をたくさん作ってきた。ヒット商品の開発企業に取材する連載シリーズなどは、その代表例だろう。

しかし、証券会社が実際の消費行動やポイントを絡めた投資サービスを作るのは難しい。その意味で、通信キャリアのドコモと手を組み、dポイントや会員データを活用して投資と消費をつなげたのは、今までの投資の“境界線”に挑戦した投資サービスと言えるかもしれない。

2つの取り組みはあくまでトライアル中だが、得られるものは大きいはず。その経験を活かして「証券会社×通信キャリア」のチャレンジは続く。両社が目指すのは、投資の一歩目を踏み出してもらうサービス。そのために、お互いの知見を掛け合わせていく。

(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)

※記事の内容は2021年1月現在の情報です

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