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著書『IFAとは何者かーアドバイザーとプラットフォーマーのすべてー』が話題

大原啓一氏に聞く…注目を集める資産運用のアドバイザー「IFA」メリットと課題

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資産運用を行う際、何に投資をすればいいか分からない人もいるだろう。そこで近年注目されているのが「IFA」だ。

IFAとは「独立系ファイナンシャル・アドバイザー」の略称。ひとことでいえば、中立・公平な立場で資産運用のアドバイスを行う専門家のことだ。これまで同様のアドバイスを行っていた証券会社の営業員、あるいは似たジャンルと思われがちなFP(ファイナンシャル・プランナー)とは一線を画す存在で、人数も増えつつある。

いったいIFAとはどんな存在なのか。そこで話を聞いたのが『IFAとは何者かーアドバイザーとプラットフォーマーのすべてー』(きんざい)を出版した日本資産運用基盤グループ 代表取締役社長の大原啓一氏。同氏によれば「IFAは顧客本位のアドバイスを行える可能性がある反面、そのメリットを活かしている人が少ないという課題もある」という。

IFAとは何者であり、大原氏が言う“課題”とは何なのか。そして私たちはどうIFAを活用すべきなのか。大原氏の話をもとにひもといていく。

公平・中立がウリのIFAだが、現実は大きな課題が

「IFAとは法律上の『金融商品仲介業者』に当たります。証券会社や銀行と提携し、株や債券、投信といった金融商品の売買を仲介します。証券会社の営業員と似ていますが、IFAはあくまで独立しており、特定の証券会社や銀行に従属していません。提携先も複数にすることが可能。つまり『A社所属なのでA社の金融商品だけしか売れない』ということが起きにくく、公平・中立な立場でアドバイスしやすいと言えます」

提携先の金融機関が複数なら、1人のIFAがA証券やB証券の商品をそれら証券会社の強みや特徴に応じてさまざまに提案できる。特定の証券会社に所属する営業員では難しかった行為だ。より個人の状況に合った金融商品を提案できる可能性がある。

「一方、日本のIFAはその強みを活かせていない現状があります。現在、国内におよそ900社、4000人弱のIFAがいますが、約4分の3は提携先が1社のみ。“専属”と同じ状態です」

この状況を踏まえ、IFAに相談する際は「アドバイザーの提携先が複数あるか、それらをどのように使い分けているかを確認するといいでしょう」とのこと。もしも、提携先が1社のみでもIFAの考えや哲学で顧客のためにその形を取っている可能性もある。1社のみの場合は「どのような考えで『専属』としているのかをチェックするのがベストです」と大原氏。提携先は開示されているので、必ず調べてみよう。

なお、IFAは相談者から報酬をもらわない。提携先の金融機関から報酬を受け取る。そのため「報酬元となる提携金融機関を優先した提案になる可能性がある」と大原氏。つまり独立系と謳いながら、実態は所属の営業員と大差ない場合もあり得るのだ。この点もIFAの課題だと大原氏は考える。

「一方、IFAの良さとして『転勤が少ない』のも特徴。最後まで顧客との関係を続けやすいでしょう。資産運用は長期で行うケースが多いので、長く寄り添ってくれるのは顧客メリットになります」

ところで、読者の中にはIFAに近い存在としてFPをイメージした人もいるかもしれない。しかしIFAとFPには明確な違いがある。

「大前提として、FPは顧客から相談料をもらって具体的な投資銘柄をアドバイスすることができません。行う場合は『投資助言業』という別の登録が必要です。対してIFAは投資銘柄のアドバイスから売買の仲介まで行い、報酬も提携先の金融機関から受け取るので、明確に立場が異なります」

まだIFAの認知度が低いこともあり、資産運用について相談したいと考えてFPに問い合わせる人も多い。しかしFPは細かな投資のアドバイスができないため、最終的に保険商品に行き着くという事態が起こることも……。その意味でも「IFAの立ち位置やFPとの違いを広く知ってもらう必要がある」と大原氏は考える。

金融業界のトレンドを考えると、IFAは今後増えていく


現状のIFAは「可能性と課題の両方を持っている」と言えそうだが、それでも今後この人材が「増える可能性は高い」と大原氏。背景にあるのが、ここ数年の金融業界で起きている2つの変化だ。

「1つ目の変化は金融の機能分離が進んでいることです。金融システムはフロント機能やバックオフィス機能、顧客接点となるカスタマーサービスなど、いくつもの機能から成り立っています。そのすべてを1社がワンストップで作るのではなく、各社が得意分野の開発に集中して、それ以外は外部に委託する流れが起きています」

以前、東証マネ部!で取り上げたクレディセゾンの投資アプリ「セゾンポケット」は機能分離の一例。根幹の証券システム(機能)はスマートプラス社のシステムを使っているが、クレディセゾンが金融商品仲介業者として、自社のクレジットカード会員等を「セゾンポケット」サービスに仲介している。つまり、それぞれが得意分野に特化した形だ。

「IFAも一種の機能分離と言えます。IFAはあくまで仲介業で、顧客接点という機能を切り取り、それに集中した形です。逆に言うと、注文執行やアセットマネジメント機能は持っていません」

変化の2つ目は証券・資産運用ビジネスのコモディティ化だ。これもIFAの発展に関わっているという。

「証券・資産運用サービスは手数料ゼロ化が進み、差別化が難しくなっています。投資信託の信託報酬も低下しており、金融商品そのもので付加価値を生み出しにくい。これからは、顧客一人一人のニーズに応じた商品提案や、要望に応じた投資戦略のカスタマイズなど、顧客サービスで付加価値をつける時代になるでしょう。その役割がIFAであり、今後重要になると考えられます」

2つの流れからIFAのビジネスが拡大していく可能性は高い。とはいえ彼らが本来持つ魅力、公平・中立なアドバイスが行われていくかは業界の成り行き次第といえよう。

これが“曇りなき目”で見たIFAの現状と今後の展望だ。IFAへの相談を考えている人は、ぜひ参考にしてほしい。

(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)

※記事の内容は2021年2月現在の情報です

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