アクティブ? インデックス?
投資信託の「○○型」ってなに?
投資信託を選ぶ際に、「アクティブ」「インデックス」「為替ヘッジ」「レバレッジ」「インバース」といった言葉を見かけたことはないだろうか。これらは、投資信託の種類を端的に表したもの。その意味を知ることで、スムーズに投資信託を選ぶことができるだろう。
そこで、投資信託に詳しいファイナンシャルプランナー・大地恒一郎さんに、それぞれの言葉の意味とどのような投資に向いた商品か、教えてもらった。
運用手法が異なる「アクティブ型」「インデックス型」
「『アクティブ型』『インデックス型』は、投資信託の運用スタイルを表す言葉。『インデックス型』は、正確には『パッシブ型』の一種です」(大地さん・以下同)
アクティブ型
ファンドマネージャーが独自の調査に基づき、戦略的に銘柄選定や売買のタイミングを判断しながら運用を行う投資信託。東証株価指数(TOPIX)やアメリカのS&P500などの指数をベンチマーク(基準となす指標)として、それを上回る運用成績を目指すものもある。
パッシブ型
ファンドマネージャーの判断ではなく、決められたルールに基づいて運用を行う投資信託。その代表格が「インデックス型」。
インデックス型
日経平均株価、東証株価指数(TOPIX)、S&P500などの指数(インデックス)に連動することを目的に運用を行う投資信託。
「一概に『投資初心者はインデックス型がいい』とは言えません。投資目的や収入、保有している金融資産、家族構成など、人それぞれ環境は違うので、マッチする投資信託も異なります。ただ、まったく投資に触れたことがなく、経済情報の仕入れ方もわからないという方であれば、まずはインデックス型の投資信託での積立投資が無難でしょう。指数と同じ値動きをするので情報が追いやすく、長期的に見るとアクティブ型より好成績を収める可能性が高いといわれることもあります」
各商品の運用スタイルと特性を正しく理解し、投資の目的や期間、自分の考え方にマッチするものを選ぶといいだろう。
外貨建て資産へ投資する場合に為替変動の影響を抑える「為替ヘッジ型」
近年、外貨建て資産を投資対象とする投資信託へのニーズが高まりつつある。これらの商品へ投資する場合には、アクティブ型、パッシブ型(インデックス型)にかかわらず、「為替ヘッジの有無」を検討・確認するといいだろう。投資対象資産そのものの価格変動だけでなく、現地通貨と日本円の為替変動が生じる可能性があるからだ。
為替ヘッジ型
為替ヘッジとは、外貨建て資産に投資する際に、外国為替の売予約や先物取引などを利用することで、為替変動による差損を回避すること。「為替ヘッジあり」の商品であれば、為替変動による損益が影響しないため、純粋に投資対象資産の価格変動などを追求できる。
「外国の指数や外国株などの値動きを追いたいけれど、為替変動の影響は避けたいという人は、為替ヘッジ型を使うといいでしょう。ただし、ヘッジコストという為替ヘッジを行うためのコストがかかるというデメリットがあることも知っておきましょう」
リスクヘッジに有効な「レバレッジ型」「インバース型」
「『レバレッジ型』『インバース型』は、基本的に指数の日々の変動率に、一定の倍数(正も負もある)を乗じた変動率に連動するような商品特性を表す言葉。どちらも先物取引やオプション取引といったデリバティブ取引を活用しており、リターンもリスクも大きくなるというが特徴があります」
レバレッジ型
指数の日々の変動率に一定の倍数を乗じて得られる成果に連動することを目的に運用される投資信託。2倍、3倍、4.3倍など、倍率は銘柄によって異なる。
インバース型
指数の日々の変動率に一定の負の倍率を乗じて得られる成果に連動することを目的に運用される投資信託。倍率はマイナス1倍、マイナス2倍が一般的。連動する指数と逆の値動きをするため、下落相場の時に利益が出ることになる。
「機関投資家がリスクヘッジのために活用したのが、『レバレッジ型』『インバース型』の始まりといわれています。『レバレッジ』とは『てこの原理』を意味しますが、『レバレッジ型』『インバース型』は少ない資金で大きな投資成果を得ようとするものが多いのです。例えば、保有している株式や債券の価格が多少下がっても、下落後の局面で『レバレッジ型』を保有し、その後株価が上昇すれば、倍以上の回復が望めます。また、『インバース型』の場合は、下落時こそ利益が望めます」
「ただし、個人投資家には注意が必要な商品」と、大地さんは話す。なぜなら「レバレッジ型」「インバース型」は、大きなリターンが狙える反面、リスクも大きくなるからだ。
例えば、2倍の「レバレッジ型」を1万円分保有している場合、元の指数が5%上がり1万500円になると、2倍の「レバレッジ型」商品は10%上がり1万1000円となる。その後、元の指数が10%下がり9450円になった場合、2倍の「レバレッジ型」商品は20%下がり8800円となる。さらに、元の指数が6%上がると、1万17円と初日の1万円を少し超えたところまで取り返せるが、2倍の「レバレッジ型」商品は12%上がるものの9856円となり、初日の1万円には届かない。
「『レバレッジ型』は、リターンの幅が大きくなりますが、リスクの幅も大きくなり、先ほどの例のように上昇と下落を繰り返すと、長期的に見て下落する傾向があります。投資に慣れている人がリスクヘッジ目的で使う分にはいいと思いますが、中長期的な投資ではおすすめできません」
投資信託チョイスのポイントは「運用方針」
どの投資信託を選ぶにしても、必ずチェックすべきは「運用方針」とのこと。
「投資信託の投資信託説明書(交付目論見書)には、必ず運用方針が書いてあります。『インデックス型』であればどの指数に連動するか、『アクティブ型』であればどのような視点・基準で投資する銘柄を選ぶかが記載されているので、『この指数いいな』『この銘柄の選び方いいな』と共感できるものを選びましょう」
共感することでその投資信託のファンになると、多少値下がりしたとしても、「この運用方針を信じているから」「自分で選んだ銘柄だから」と思うことができ、中長期的に保有しやすくなるそう。
「投資信託の中身もわからず、人に勧められるがままに買ってしまうと、値下がりを人のせいにして、途中で挫折してしまいかねません。しっかりと情報を収集し、共感できる投資信託を選ぶことが、成功の第一歩だといえます」
さまざまなタイプの投資信託が存在するが、商品選びに正解はない。運用方針に納得したうえで長くつき合っていける商品を探し出すためにも、基礎知識はきっちり頭に入れておきたいものだ。
(有竹亮介/verb)
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大地恒一郎
ファイナンシャルプランナー。30歳で日興證券投資信託委託(現日興アセットマネジメント)に入社し、以来30年超、投資信託の運用・商品開発などに携わる。自身が年金受給資格を得るタイミングで独立し、ファイナンシャルプランナーとして、投資信託や投資信託を活用した確定拠出年金・NISAなどの普及・啓もうに努めている。