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かつて10万人以上のユーザーを記録したあのサービスが蘇る【マイトレード前編】

投資家に愛された「マイトレード」がNTTドコモで復活

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10万人以上のユーザーに愛されながら、2020年1月に惜しまれつつサービス終了となったアプリがある。個人投資家のための資産管理アプリ「マイトレード」だ。

株式の売買注文や情報を得られる証券アプリは数あれど、自分のこれまでの資産推移や、保有している各銘柄の利益の推移を簡単に振り返れるアプリは皆無に近かった。

そんな中、ドコモの企画・開発、技術協力により、2017年にマイトレードが誕生。パートナー会社の運営のもと、投資関連サービスとしては珍しい10万人以上のユーザーを獲得するヒットになった。がしかし、2020年1月にサービスを終了。多くのユーザーから悲しみの声が上がった。

そのマイトレードが復活する。2021年1月、“新生”マイトレードのベータ版をリリース。今後改良を加えて、正式ローンチとなる予定だ。

このアプリに携わるのは、旧マイトレードの時代から制作チームとして携わってきたドコモの4名。その面々に、旧作終了から復活に至るまでの話を聞いた。

システムトレーダー時代に思いついた、資産管理アプリのアイデア


マイトレードは、投資の振り返りや自己管理に特化したアプリだ。投資家が資産状況を確認するとき、多くは証券会社のアプリなど、株式売買を行うサービスでチェックするだろう。しかし、それらは現在の資産状況や前日との比較はできても、それ以前、たとえば数ヶ月や1年、2年の間に自分の資産がどう推移してきたか、保有銘柄それぞれの利益がどう変わってきたかをパッと見る機能は意外と乏しい。

また、各銘柄について、自分がどのタイミングで売買したか、その足跡を見ようとしても複雑でわかりにくい。そういった振り返り・管理を担うのがマイトレードである。

最初にアプリのアイデアが生まれたのは、2016年3月のこと。今回のチームリーダーである、ドコモの河野紘一郎氏(NTTドコモ イノベーション統括部 担当課長)が考案した。

「日本の個人投資家は1500万〜2000万人いるといわれますが、自分自身の投資傾向や経験をうまく蓄積・分析できている人ばかりではありません。メモやExcelで地道に記録されている方もいますが、自分自身を振り返るツールが乏しいと感じていました」

その悩みを解決しようと生まれたのがマイトレード。「『貯蓄から投資へ』の社会課題に、すでに一歩踏み込んでいる個人投資家に注目したのがマイトレードの特徴です。個人投資家のみなさまに輝いていただき、投資や投資家への偏見を減らし、日本全体の金融リテラシー向上にもつなげていきたいと考えています」と、河野氏は言う。

さらに、このアイデアが生まれた背景には、河野氏の経歴も関係していた。過去にはミクシィの初代モバイルプロデューサーや、起業しての自社サービス開発を行ってきた河野氏だが、2011年頃から2年ほど自宅にこもってシステムトレードをしていたという。

システムトレードとは、専用ソフトなどを使い、自分で売買ルールやプログラムを設定。それに則って自動運用する手法。河野氏が使ったFX取引用の専用ソフトでは、過去の売買履歴などをチャート上に表示し、みずから分析するのが当たり前だったが、「その株式投資版がないことに気づきました」と振り返る。

加えて、マイトレードを思いついた2016年頃、「マネーフォワード」などの家計簿アプリを筆頭に、1つのアプリからID・パスワードを入力して異なる金融機関の口座情報を取得する“アカウントアグリゲーション”の技術が普及。この動きも、1つのアプリから別の証券口座の情報を取得するマイトレードのアイデアにつながったという。

旧マイトレード時代と変わらぬ4人のチームでアプリ復活

河野氏のアイデアと詳細な仕様・デザインをもとに、旧マイトレードは2017年にリリースされた。過去の資産推移を見える化した機能がウケただけでなく、その画面をSNS上に投稿する文化が生まれた。サービス運用時は、1日300件ほどのツイートが投稿されていたという。

ローンチから約2年後の2019年にはユーザー数5万人を突破。2020年1月には10万人を記録した。

河野氏がアプリのアイデアを思いついてから、ドコモではマイトレードのチームが組成された。鶴岡秀樹氏(NTTドコモ イノベーション統括部)は、2017年にドコモへ新卒入社し、同年10月からチームに入った。当初はバックオフィス業務やマーケティングを担当しつつ、現在はマイトレードのアプリ開発(Flutter/Firebase)やUI/UXデザインを担当している。

河面知定氏(NTTドコモ イノベーション統括部)は、その1年後に同じく新卒入社から参加。当初、金融分野の知識がなかったことから、このプロジェクトのために「証券外務員一種」の資格を取得したという。

2019年には、証券会社で証券ディーラーなどを務めていた佐々木岳氏(NTTドコモ イノベーション統括部)が加入。投資の世界でキャリアを積んできた人材も取り入れ、強固なチームが出来上がった。

4名からなるドコモのチームとパートナー会社により、旧マイトレードは個人投資家のファンを増やしていった。しかし、2020年1月にサービス終了となってしまう。SNS上では、ユーザーの悲しみの声が多数上がった。なかには、マイトレードを模して自作の管理システムを作ろうとする人もいたという。

そのマイトレードが復活する。新マイトレードを手がけるのも、旧作と同じ4名。さらに、今回は外部から開発コンサルを受けつつも、ドコモ社員が開発から運営までの多くを“内製”で行っている。個人向けスマートフォンアプリ・サービスをここまで内製化するのは、ドコモにとって初の取り組みだという。

旧作に続き指揮をとる河野氏は、「新マイトレードは機能も増え、さらに細かな振り返りや自己管理が可能になります」とのこと。一体どんな進化を見せたのか。後編の記事で詳しく触れていく。

(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)

※記事の内容は2021年5月現在の情報です

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