【日経記事でマネートレーニング15】相場ニュースを読む~金、2種類の価格の動き方~

提供元:日本経済新聞社

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このコーナーでは日経電子版の記事を読むことで資産形成力のアップを目指します。実際のニュースやコラムを引用し、初心者には難しく思えるような用語をかみくだき、疑問点を解消していきます。金融・経済ニュースをどれだけ読みこなせるかは投資のリテラシーそのものです。日々の情報にリアルタイムで動ける実践力を養いましょう。

15回目は金=ゴールドを学びます。前回の不動産投資信託=REITと同じく代替資産の部類に入ります。金は老若男女が知っており古来より輝きを失わない資産ですが、いざ理解を深めようとするとなかなか手ごわいテーマでもあります。

ニューヨークで価格が決まる代表的な国際商品、ドル相場と逆相関

日本の投資家からみると、金には2種類の価格が存在します。1つは国際価格、もう1つが円ベースでの国内価格です。この2種類の価格の動き方を理解することが金相場の攻略につながります。

サンプル記事をみてみましょう。

世界全体の需給で価格が決まる商品を「国際商品」=コモディティーといいます。金はその代表格でニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX、「ナイメックス」と呼ぶときが多い)の相場を基準に価格が決まり、各国が自国通貨に換算して値段が決まっていきます。日本企業の業績が反映する日本株や日本のプレーヤーが多い日本円とは性格をやや異にしています。

では、金相場が上がるか下がるかはどういう要因がかかわるのでしょうか?

古来、金は貿易や財物交換に大きな役割を果たしてきました。持ち運びができて信用力も高いので金貨などに姿を変えて世界共通の通貨的な役割を担ってきたわけです。

ところが流通量に限界もあるため、戦後はドルが決済の基軸通貨になりました。そこでドルが使えるときは金の出番はない=金の価値は低いという風に考え、逆にドルの信認低下=ドル安になると金の相対的な魅力が高まるというふうに考えます。

米金利が変動要因、国際相場と国内相場は連動しにくい?

金がどう動くかはとどのつまりドルと反対に動くと考えればOKです。すると、ドルの最大の変動要因がそのまま金の変動要因になるわけです。ドルの最大の変動要因は米国金利です。

金利には名目(見かけの)金利と物価の上昇を除いた実質金利の2種類があります。実質金利が上がるとドルが上がりやすくなり、インフレで名目金利が上がるとドルの価値は薄まるのでドルは下がりやすくなります。たとえば、原油高になるとインフレの可能性が高まり、ドルが下がりやすくなります。金はドルと逆の動きをするので米実質金利低下や米インフレの可能性が出てくると金相場に先高観が台頭するわけです。

問題はまだ終わりません。円ベースでの国内相場はどうなるのでしょう?頭をひねってみましょう。たとえば米国でインフレ懸念が台頭してドルが下がったとします。金相場は上がりますがドル安のときは円高なので国内の金相場は下がる要因になります。

ややこしいので架空の数字を使って計算してみましょう。金が1g=100ドル(1ドル=100円)だったとします。日本円では1g=10000円です。米インフレ懸念で1g=101ドルに金が1%上昇したとすれば日本円で10100円になるはずですが、このとき1ドル=99円へ円高・ドル安が進んだらどうなるでしょう。1g=101ドル×99円=9999円。わずかに下がってしまいました!

日本では大阪取引所に金先物が上場し円ベースで取引されています。長い時間軸でみると金の国際価格と国内価格は方向性が一致しますが、日々の短期的な動きでは国際価格が上がっても円換算では上昇が抑えこまれるケースが少なくなく、連動しにくいことを念頭においておきましょう。

①円建て金=円ベースでの国内価格。現在は大阪取引所の金先物が目安にされている

②米実質金利物価上昇分を織り込んだ(加えた)金利。言い換えると物価高を差し引いた正味の金利

③金利の付かない金=株式の配当金や投信の分配金のような定期的なキャッシュをうみ出さないという意味

④国際相場=世界のプレーヤーが集まって形成する相場

⑤国際指標=世界の標準や目安となりうること

⑥ニューヨーク先物価格=世界最大の商品・エネルギー取引所として知られるニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX、通称ナイメックス)の先物価格

⑦1トロイオンス=約31g

では、いつものようにかみくだいて直した記事をみましょう。

筆者自身、20年前まで金の延べ棒(バー)を200g持っていました。当時は1g=1300円台でいまの6分の1程度の水準でした。約10年持っていましたが金の国際価格がいくら上がっても円高がどんどん進み、いっこうに国内価格が上がらないことにしびれを切らして全て売却処分してしまいました。取材先にこのエピソードを紹介すると「田中さん、記事はイケてるのに運用は下手ね」と冷やかされます。

この判断が正しかったか間違っていたか――配当や分配金の付かない金を資産形成やポートフォリオにおいてどう位置づけるか、はまた別の機会に譲りたいと思います。

(日本経済新聞社 コンテンツプロデューサー 田中彰一)

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