まったく新しいプラットフォームづくりに迫る

東証ETF向けRFQプラットフォーム「CONNEQTOR」とは?(前編)

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CONNEQTORの開発に携わった東京証券取引所 IT開発部の小林氏

「CONNEQTOR(コネクター)」という名称を聞いて、ピンと来る人はかなりの取引所ツウだろう。

2021年2月、東京証券取引所はETF市場に今までとは全く異なる新しいRFQプラットフォーム「CONNEQTOR」を導入した。一体何が新しいのか、また、私たち個人投資家にとってどのような効果があるのかをお伝えしていこう。

「東証マネ部!」をご覧いただいている方であれば、ETFは聞いたことがある方も多いだろう。しかし、RFQとは何なのか?知らない方も多いはず。そこで、実際にCONNEQTORの開発に携わった東証IT開発部の小林氏に、東証マネ部!編集部がインタビューを実施した。

RFQってなに?

――RFQとはなんでしょうか?

RFQというのは、Request for Quote(リクエスト・フォー・クオート)の略で、日本語に訳すと、価格を提示してくれるようにお願いする、ということです。RFQは個人の投資家ではなく、大口取引を行う金融機関が利用するものなので、聞いたことがない方も多いかと思います。ここでいう金融機関というのは、主に国内の銀行や信用金庫などの地域金融機関や保険会社などです。

――ETFを取引する際、個人投資家は現在の価格を確認し、証券会社に注文を出して、指値や成行で売買すると思いますが、それとRFQは何か違うのでしょうか?

指値や成行で取引する、これを板で取引するなどともいいますが、地銀等の地域金融機関も個人投資家と同様、板で売買を行っています。一方で、地域金融機関の場合は、取引の額が数億円にもなるケースもあります。しかし、板には十分な数量がないこともあり、そのような時に使えるのがRFQなのです。

RFQの特徴は、地域金融機関が最初に売買したい銘柄と数量の意思表示を行うことです。それに基づいて、複数のマーケットメイカーがそれぞれ応じられる価格を提示します。地域金融機関はその中からもっとも良い値段を選んで、取引することになります。

――東証がなぜそれを後押しするのでしょうか。

これまでのRFQ取引では、地域金融機関は主に証券会社に対して電話で価格を聞いていました。A社に電話で聞いて、次はB社にも電話して価格を聞いて、それからC社にも…というかたちですね。しかし、どうしても手間と時間がかかってしまいます。そこで、より簡単にETFを取引してもらうため、そしてETFを資産運用の手段として積極的に活用してもらうために使いやすい電子プラットフォームを作ることにしたのです。

――機関投資家(特に地域金融機関)向けの取引プラットフォームということですか?

はい、基本的に個人投資家の方は利用できません。ETFにも流動性がついてきましたので、数十万円、数百万円であれば板で指値や成行で売買することは可能であり、多くの投資家にとっては板での売買が一般的です。ただし、数億円を板で取引しようとすると、現在の値段とは大きくずれた値段で取引せざるを得ないこともあります。自身の取引によって大きな株価変動を引き起こしてしまうことを“マーケットインパクト”と言いますが、このような予期せぬ影響を抑えながら取引したいというニーズもあり、そのような取引をする地域金融機関向けのプラットフォームです。

個人投資家への効果は?

――個人投資家には全く関係ないということでしょうか?

いいえ、これはETF市場の拡大につながるもので、個人投資家の方にも関係してきます。東証ではこれまでもETF市場の振興を図ってきました。個人の資産運用の手段としてETFを使いやすくするために、マーケットメイク制度も拡充しています(過去記事はこちら)。

そうした制度と並行して、地域金融機関の中長期的な運用手段としてETFを使っていただくことで、ETFの残高や売買高を増やし、ETFの市場全体を拡大させることも併せて大事なのです。ETF市場には、東証だけではなく、証券会社、管理会社、投資家、マーケットメイカーなど多様なプレイヤーが必要です。地域金融機関にもETFを利用いただくことで、これらのプレイヤーを巻き込んだ好循環が生まれ、ETF市場への注目がさらに高まります。そうすると、より多様な商品、取引しやすい環境が生まれやすくなり、資産形成手段としてETFをご利用いただく個人投資家の皆様にも大きなメリットとなるのです。

ちなみに、このような様々なプレイヤーをより緊密に繋げることで、ETFの取引がもっと効率化されるRFQプラットフォームになるようにとの想いを込めて、「CONNEQTOR(コネクター)」と名付けました。

開発の裏側

――東証IT開発部がプラットフォームを作るのはそういう理由があるのですね。今回プラットフォームを作るにあたって、工夫した点はあるのでしょうか?

東証が普段提供している板での売買とRFQでの取引は全く違うものです。特に電話に慣れておられる金融機関の方に電子プラットフォームを使っていただくというのは簡単なことではありません。みなさんも今までのやり方をガラッと変えろと言われてもなかなか簡単ではないですよね。特にお金を扱う金融ビジネスの世界ではそうです。現在の取引のフローを変えてもらうためには、徹底的にお客様目線に立たないといけないことになります。そのために採用した開発方法が、リーンスタートアップ・アジャイルという方法です。

次回、このリーンスタートアップ・アジャイルという、東証がこれまで使ったことのなかった画期的な開発方法をご紹介します。

(東証マネ部!編集部)

<合わせて読みたい!>
東証ETF向けRFQプラットフォーム「CONNEQTOR」とは?(後編)

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