ETFと投資信託の7つの違いとは?投資するならどちらがおすすめ?
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ETF(上場投資信託)は、その名の通り投資信託の一部ですが、取引所に上場しているという点が一般的な投資信託とは異なります。また、上場しているという特性から、価格変動のタイミングや手数料など異なる点は少なくありません。7つの違いと選び方について見ていきましょう。
ETFとは?
ETFとは「Exchange Traded Fund」の頭文字を合わせた言葉で、日本語では「上場投資信託」と呼びます。その名の通り取引所に上場しているため、個別銘柄を取引するように購入・売却できる金融商品です。
また、ETFには特定の指標に連動して動くという特徴があります。例えば、日経平均株価に連動しているETFであれば、日経平均株価の変動に合わせて価格が変動します。
ETFと投資信託の7つの違い
ETFも投資信託の一種なので、少額で分散投資できる点は共通点と言えます。例えば、日経平均に投資する場合、225銘柄すべて株式で購入すると数億円かかりますが、ETFなら1~3万円で取引できます。
しかし、異なる点も少なくありません。主な違いとして次の7つが挙げられます。以降、本記事中では、「投資信託」は上場していない公募投資信託の意味で記載します。
1.上場しているか
2.価格の変動タイミング
3.指値注文ができるか
4.種類の多さ
5.信託報酬(保有期間中の手数料)
6.購入時の手数料
7.売却時の手数料
1.上場しているか
ETFは取引所に上場していますが、投資信託は上場していません。そのため、ETFは市場の立会時間内、つまり、東京証券取引所の場合、休日と年末年始(12月31日~1月3日)を除く月曜日から金曜日の「9:00~11:30」と「12:30~15:00」に取引を行うことができます。
一方、投資信託は、市場の立会時間とは関係なく、証券会社や銀行などの金融機関が定める時間であれば取引が可能です。
2.価格の変動タイミング
ETFは株式と同様、市場が開いている時間であればリアルタイムに価格が変動する金融商品です。そのため、同日に購入する場合であっても、タイミングが異なれば価格が異なることもあります。例えば、立会時間内にニュースが出て、大きく価格が変動したタイミングで機動的に注文を出すことも可能です。
一方、投資信託は、価格の更新は1日1回のみです。注文した時点では正確な取引成立価格が分かりません。また、一般的には9時から15時までが注文受付時間で、15時以降は翌日の注文として扱われます。
さらに、外国の株式や債券を組み込む投資信託は、注文した日の翌営業日以降に取引が成立します。
つまり、取引成立まで価格が分からない投資信託と、取引所が開いている時間にタイムリーに売買することができるETFでは、価格の決まり方に大きな違いがあると言えます。
3.指値注文ができるか
取引所に上場している株式は、価格を指定して購入する「指値(さしね)注文」を利用できます。同じく取引所に上場しているETFも指値注文ができるため、自ら取引価格を指定することができます。ただし、指定した価格で取引が成立するとは限りません。また、ETFは株式と同様、指値注文だけでなく、買い値・売り値を指定しない「成行(なりゆき)注文」も利用できます。成行注文は、価格を指定しない、つまり言い換えると、“今このタイミングで何円でも良いから買いたい・売りたい”場面で利用する注文方法です。
一方、投資信託は指値注文ができないので、価格を指定した取引は行えません。これは、上述のとおり、注文した時点では取引成立価格が分からないからです。
4.種類の多さ
商品の種類の多さは、圧倒的に投資信託が勝ります。ETFは約250銘柄ですが、投資信託は約6,000銘柄です。
ただし、投資信託は金融機関によって取り扱う銘柄が異なるため、中には品揃えが少ない証券会社、銀行もあります。投資信託への投資を検討している方は、口座を開設する前に各金融機関の取扱商品数もチェックしてみましょう。
ちなみに、ETFはどの証券会社でもほぼすべての銘柄を売買することができますが、銀行では取り扱いがありません。
5.信託報酬(保有期間中の手数料)
銘柄によっても差はありますが、一般的に信託報酬は投資信託よりETFのほうが低い傾向にあります。
なお、信託報酬とは、投資信託を運用・管理するための手数料で、商品を保有している日数分発生します。上場・非上場に関わらず、すべての投資信託に設定されています。運用成績が良くても信託報酬が高いと儲け(利益)が少なくなってしまう可能性もあるので、長期間保有する場合は特に事前にしっかりチェックする方が良いでしょう。
投資信託と比べて、ETFの信託報酬が低くなるには理由があります。投資信託の信託報酬は、①投資信託の販売を行う会社(証券会社、銀行)、②投資信託の組成・運用を担う委託会社(運用会社)、③投資家から預かった資金を保管・管理する受託会社(信託銀行)の3社に分配されます。
ファンドによって多少の差はありますが、①と②がそれぞれ全体の40~45%程度を受け取り、③が5%程度を受け取ります。
取引所に上場し、誰でも取引できるETFは、①販売会社への報酬(手数料)が必要ないため、ETFの方が信託報酬が低い傾向にあります。
6.購入時の手数料
購入時の手数料は、取引を実施する金融機関によって異なりますし、投資信託とETF、商品によっても違います。
投資信託においては、「販売手数料」や「申込手数料」とも呼ばれ、購入する際に販売会社に支払う手数料で、購入代金とは別に徴収されます。購入代金に所定の料率をかけた金額を負担します。
近年では、インデックスファンドを中心に、販売手数料が無料の投資信託(ノーロード・ファンド)も増えています。
一方で、ETFは、商品ごとに手数料が設定されているのではなく、株式と同様に「売買手数料」の取り扱いになるため、ETFを購入する証券会社の手数料が適用されることになります。ETFの購入を検討する場合は、利用している証券会社の売買手数料を確認するとよいでしょう。
また、ETFにおいても、ネット証券を中心に一部のETFを売買手数料不要で購入できる証券会社も出てきました。そういった取り組みを実施している証券会社か、または購入したいETFが対象銘柄か、チェックするとよいでしょう。
7.売却時の手数料
投資信託は売却時に「信託財産留保額」と呼ばれる手数料がかかりますが、中には信託財産留保額不要の銘柄もあります。売却手数料が気になる方は、購入する前に信託財産留保額について確認しておきましょう。
一方、ETFは株式を売却する際に発生する手数料と同様「売買手数料」がかかります。上述のとおり、売買手数料は証券会社によって異なるので、こちらも事前に確認しておきましょう。
ETFと投資信託はどっちがおすすめ
ETF・投資信託には、今まで述べてきたとおり、それぞれ特徴があるため、どちらが優れているか一概には言えません。しかし、「どのような投資をしたいか」という点に注目すると、向き不向きがはっきりとします。
長期運用ならETF?
長期的に運用しようと考えている方であれば、ETFのほうが向いているかもしれません。ETFは一般的に投資信託と比べて信託報酬が低い傾向にあります。0.数%/年という微々たる差でも、10年、20年単位の長期になってくると、大きな差がついてきます。長期運用を検討しているなら、ETFが選択しに入ってくるでしょう。
いずれにしても、長期的な運用には信託報酬が重要になってくるので、チェックする癖をつけるとよいかもしれません。
幅広い選択肢から選びたいなら投資信託?
幅広い選択肢から銘柄を選びたい方であれば、投資信託のほうが向いているかもしれません。金融機関にもよりますが、2,000本以上の銘柄を扱っている金融機関もあり、ETFより多くの選択肢があると言えそうです。
投資信託(公募投信)のほうがETFよりも、銘柄数が多くなる背景には「アクティブファンド」の存在があります。アクティブファンドとは、独自の銘柄選択や資産配分により、株価指数等の動きを上回る投資成果を目標とする投資信託です。
一方で、日経平均株価やTOPIXといった指標と同じような動きをする運用を目指す投資信託のことをインデックスファンドといいます。投資信託はこの2つの種類に分けられます。
日本においては、ETFはすべてインデックスファンドになります。
証券会社等が扱う投資信託については、その過半以上がアクティブファンドであることも。これが幅広い選択肢の背景です。
少額で分散投資したいならどちらもおすすめ
ETFも投資信託も、どちらも複数の株式や債券などを組み合わせた金融商品です。分散投資を考えている方であれば、ETFでも投資信託でも目的に適うでしょう。
また、ETFも投資信託もどちらも少額から購入できるので、投資初心者の方も取り組みやすいといえます。
ただし、購入金額の決まり方については違いがあります。ETFは上場している株式と同様に株数(ETFの場合「口数」)での売買となります。例えば、銘柄A(株価2,000円)を10口購入する場合、購入金額は20,000円となります。
一方で、投資信託は「金額指定」ができるのが特徴です。例えば、銘柄Bを20,000円分購入することが可能です。金融機関によって最低購入金額は異なるので、気になる方は口座開設前に確認すると良いでしょう。投資信託を数百円から購入できる証券会社もあります。
いずれにしても、数百万円、数十万円といったまとまったお金がなくとも、ETF・投資信託は少額から分散投資ができる点が強みです。
ETFと投資信託を使い分けよう
ETFと投資信託の大きな違いとしては「リアルタイムで取引できる点」にあります。ETFは取引所が開いている時間帯であれば株式と同じように取引できる、つまり、売りたいときに売れて(換金できて)買いたいときに買える商品です。
逆に、リアルタイムに金額がころころ変わってなかなか買付ができない(買うタイミングを決めきれない)、または毎月決まった日に自動的に買付したい(積立購入したい)という人には、投資信託の方が適しているかもしれません。金融機関によってシステムは異なりますが、自動積立設定が用意されているところが多くあります。
その他にも、「信託報酬」や「商品ラインナップ」などの違いがありますので、それぞれの特性を理解し、ご自身が投資で重視するポイントに合った金融商品を選びましょう。
(ハヤシイズミ)