【日経記事でマネートレーニング23】データ編~時価総額、企業の重要評価指標

提供元:日本経済新聞社

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このコーナーでは日経電子版や日本経済新聞の記事を題材に、投資のリテラシーや資産形成力の基礎知識を身につけることを目的にしています。2022年からコンセプトを少し改めて数値やデータの読み解き方にスポットライトをあてていきます。数値情報やデータ分析は客観的な事実(ファクト)ですから報道系記事には頻出します。

データ編の初回(通算23回目)は「時価総額」をとりあげます。易しいようで深いキーワードです。

ホンダとキーエンス、売上高と時価総額の摩訶不思議なデータ

サンプル記事をご覧ください。マーケットや企業分析の記事では「時価総額が〇億円になった」「時価総額が〇社と逆転」というように会社の評価を表す指標として登場します。つい先日も「マイクロソフト社がアップル社を逆転」という記事がありましたが、世界ナンバーワン企業を決めるのも基本的には時価総額がものさしになります。

時価総額の一般的な定義は「発行済み株式数×株価」で算出し、企業の価値を示すといった説明になっています。企業価値って何?という疑問はさておき、投資の分野ではもっとも重要な評価指標であることは間違いないようです。

「あの会社は年商100億円らしい」――中小企業や個人事業に関する評価で、こんな言い方をするときがあります。年商とは1年間の売上高です。時価総額との違いはなんでしょうか?どちらも企業の規模や格を示すので一定の関係があると思いがちですがそうでしょうか?

上の企業をご覧ください。ホンダは誰でも知っていそうですが、キーエンスについては知らない投資家もおられるでしょう。ホンダはキーエンスのじつに24倍の売り上げを誇ります。ホンダの売上高がそのまま知名度といってもよいでしょう。ところが時価総額は驚くなかれ、キーエンスを大幅に下回り、3分の1以下です。

これほどの違いが生まれる要因を説明し始めると難しいのでこの回では割愛しますが、大切なことは売上高=業績と時価総額には大きな違いがあって、その見方や使い方を学ぶことです。

売上高は文字通り業績の指標です。なので「ウソ」や「ごまかし」はありません。Aさんがみると売り上げ1000億円、Bさんが計算すると800億円――なんてことはありません。事業規模の客観指標です。

一方、時価総額は株価で表した企業の総額であり、将来の成長期待やブランド、知財などの魅力などいろいろな要素が反映されます。売上高を事実、見える価値とみなせば、時価総額=真実、見える価値+見えざる価値といったイメージでしょうか。

その結果、仮に時価総額が1000億円だったとしてもAさんからみれば1200億円の価値に見え、Bさんからみると800億円に映るかもしれません。このときAさんにとってこの会社は「割安」という結論になり、Bさんからは「割高」という判断が導かれます。

上位企業、産業構造を反映~相場全体との相関性大きく

さて、次は投資と時価総額の関係を学びましょう。

現在、日本企業の時価総額首位はトヨタ自動車です。このほかランキング上位にはみなさんが知っているおなじみの企業が顔を並べます。株式市場では、時価総額の大きい企業を「主力」企業という言い方をします。

世界各国の時価総額上位企業を眺めるといろいろなことがわかってきます。日本では製造業がまだ主役ですが、米国ではマイクロソフトやアップル、フェイスブックなどテック系企業が並びます。その国の産業構造を投影しているといってよいかもしれません。

また、時価総額の大きい会社の株価変動は相場全体の動きを左右します。株価指数と同じように動くインデックスファンドは、時価総額の大小の比率で正確に投資金額を割りふって売買するからです。

この結果、米国で利上げなどの悪い材料が出て、海外投資家が日本株を売ると判断した場合、たとえばトヨタ自動車に固有の悪材料がなくても株式は値下がりします。逆もまたしかりです。

トヨタ自動車の株価が自動車関連の理由より、米国の金融政策で乱高下しやすいというのは解せませんが、ここが株式投資の面白いところでもあり難しいところでもあります。

もう一度、時価総額と売上高とを比べたポイントを挙げておきました。ここで「バブル」を思い浮かんだ方はセンス抜群です。つまり、売上高が正しくて時価総額=市場・投資家が間違い、というケースですね。

合理的な理由がなく売上高<時価総額が著しい状態ならバブルを疑うことになります。バブルならいつかは破裂してしぼみますから投資の回避が賢明でしょう。

売上高>時価総額なら①実態ほど企業に価値がない②企業の価値に市場が気づいていない、などの要因が考えられます。

いかがでしょう。時価総額1つでいろいろな気づきを得られますね。次回もカギとなる「数値指標」を取り上げていきます。

(日本経済新聞社コンテンツプロデューサー兼日経CNBC解説委員 田中彰一)

 

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