東証市場再編

市場関係者メッセージ

国民皆が参加者意識をもつ株式市場のインフラに ―新市場区分に向けてのメッセージ

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※この記事はJPX「新市場区分特設サイト」上で2021年12月8日に掲載した記事の再掲載です。

高田創
岡三証券 グローバルリサーチセンター 理事長

2021年のNHKの大河ドラマ「青天を衝け」で話題になった渋沢栄一を中心に1878年(明治11年)5月に東京証券取引所が創設された。そこでは、日本の近代化を担う株式会社が設立され、国民の資金を企業の発展につぎ込むための手段としての機能を取引所が担った。また、1873年に第一国立銀行が渋沢栄一によって設立され、国民の幅広い資金を金融セクターを通じ産業に向けるインフラとなった。こうして、取引所と銀行が車の両輪となって日本の資金を産業化に向ける基盤となった。それから、約1世紀半、東京証券取引所の機能はグローバルな側面をより強く帯びるなか、国民の資金を日本の産業に供給するという役目は変わらない。

今日、東京証券取引所の市場区分は、新たに「スタンダード市場」、「プライム市場」、および「グロース市場」の3つに再構成されることが予定されている。その背景には、従前の市場区分のコンセプトが曖昧で多くの投資家にとって利便性が低かったこと、上場会社の持続的な企業価値向上に向けた動機付けの点で十分な役目を果たしていなかったこと、市場代表性を備えた指数が不在であった点などが挙げられてきた。

今回の新市場区分は以上の問題意識に沿って、渋沢栄一らが1世紀半前に取引所を創設して以来の趣旨、いかに企業を日本国民が育てあげるか、全国民が参加する市場にできるかという原点に戻る必要があるのではないだろうか。

今回の市場区分見直しと同時に市場インデックス見直しもあるが、今や公的年金やDCプランなどによるインデックス投資を通じ、国民が知らず知らずのうちに株主というステークホルダーになっているだけに、国民一人一人がもう少しインデックスや市場区分に対する関心を持つ必要があるだろう。それだけに、事実上株主として参加している国民にわかりやすく、積極的に参加したいと思う市場区分の意義づけを行う必要もある。

上場区分や市場インデックスへの理解は、「貯蓄から投資へ」という流れのなかでも重要であり、金融リテラシーの観点から学校教育のなかでも取り込む必要があるのではないか。株式市場は一般国民から縁遠い存在ではなく、国民一人一人の資金が市場を通じて日本の企業に向かうという意味で、皆が参加意識を持てるようなものとして定着することを明治の賢人、渋沢栄一等も望んでいるに違いない。

高田創
岡三証券 グローバルリサーチセンター 理事長

東京大学経済学部卒業、オックスフォード大学開発経済学修士課程修了。1982年4月株式会社日本興業銀行(現 みずほ銀行)入行、1999年10月興銀証券株式会社(現 みずほ証券)市場営業グループ投資戦略部長、2006年10月みずほ証券株式会社市場営業グループ統括部長兼市場調査部長、2011年4月同執行役員グローバル・リサーチ本部副本部長、2011年7月みずほ総合研究所株式会社 常務執行役員、2017年4月同専務執行役員、2019年4月同副理事長、2020年1月現職。

外部委員・役職として、日本証券アナリスト協会理事 証券アナリストジャーナル編集委員、日本不動産金融工学会評議委員、財務省財政制度等審議会財政投融資分科会委員、金融庁金融審議会専門委員、東京大学大学院経済学研究科付属日本経済国際共同研究センター顧問、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会「経済・テクノロジー」専門委員会委員、日本サッカー協会アドバイザリーボードメンバー、大学ファンド資金運用ワーキンググループ委員。

著書として、「日本のプライベートエクイティ」日本経済新聞社(共著)、「国債暴落」中央公論新社(共著)、「金融不況脱出」日本経済新聞社(共著)、「銀行の戦略転換」東洋経済新報社(共著)、「金融市場の勝者」東洋経済新報社(共著)、「金融社会主義」東洋経済新報社(共著)、「世界国債暴落」東洋経済新報社(共著)、「20XX年 世界大恐慌の足音」東洋経済新報社、「国債暴落-日本は生き残れるのか」中央公論新社、「これだけは知っておきたい国際金融」金融財政事情研究会、「2020年 消える金融」日本経済新聞出版社(共著)、「異次元緩和脱出」日本経済新聞出版社(共著)、「地銀 構造不況からの脱出 「脱銀行」への道筋」金融財政事情研究会。

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