株式投資? 預貯金? 経済状況によって手法を変えるべき?

「インフレ」「デフレ」それぞれの状況にぴったりの投資とは

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物価や金利が継続的に上昇する「インフレ」。逆に、物価や金利が継続的に下落する「デフレ」。それぞれの状況下で、家庭や企業が受ける影響は異なる。そうなると、選ぶべき投資の手法も変わってくるのではないだろうか。

そこで、ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんに、「インフレ」「デフレ」それぞれの状況で有利に働きやすい投資について、教えてもらった。必ず利益が得られるというわけではないが、投資の参考にしよう。

好景気のインフレ下では「株式投資」が有効

「インフレは、一般的に景気がいい状況で起こるものなので、企業も売上が上がり利益を得やすくなります。業績が拡大し、株価が上がりやすいので、株式投資を行うことでリターンが大きくなる可能性が高まるといえるのです。また、インフレのときには物件価格や家賃も上がりやすいので、REIT(不動産投資信託)も好調に推移する可能性が高いでしょう」(高山さん・以下同)

株式投資が好調とはいっても、適当に投資すればいいわけではない。インフレ下で伸びやすい業界は、どのようなところが挙げられるのだろうか。

「景気がいいと社会全体の購買力が上がるので、高価格帯の商材が伸びやすくなります。例えば、ブランドものやデパートなど。旅行に出かける人も増えるため、観光・レジャー業界も伸びやすいでしょう。インフレ下では金利が上がることから、金融業界も見逃せません。原油や鉄鉱石、レアメタルなどの資源価格も上がるので、資源を扱う業界も伸びると考えられます」

一方で、インフレによって株価が下がりかねない業界もあるという。

「インフレ下で厳しいのは、外食業界。材料費が上がるため、うまく価格転嫁できないと利益を得にくい業界だといえます。また、エネルギー価格の変動の影響をダイレクトに受ける航空業界・鉄道業界も、業績を見極めるのは難しいでしょう」

インフレは為替にも影響する。

「基本的にインフレのときはお金の価値が下がるので、円安になる可能性が高まります。実際、今の日本は円安傾向にありますが、円安のときには外貨建ての資産の価値は高まります。円安傾向が続く場合、外貨資産に投資するのは有効といえるでしょう」

デフレ下での株式投資のキーワードは「低価格帯」

継続的に物価が下落するデフレ下では、どのような投資が有効なのだろうか。

「基本的にデフレは不景気のときに起こるので、企業は業績が伸びず、株価が低迷しやすいといえます。つまり、株式投資のハードルが高くなります。一方、物価が下がることによって、お金の価値は上がります。100円のジュースが50円で買えるようになるといったことが起こるからです。そのため、デフレ下では現金で備えておくといいといわれています」

不景気で物価が下がるということは、インフレ下で好調に推移しやすいREITや高価格帯の商材を扱う業界の株式は要注意といえるかもしれない。ただ、すべての業界が厳しい状況に追い込まれるわけではないという。

「不景気で賃金が上がらないなかでも生活に必要なものは買わなければいけないため、低価格帯の商材を扱う企業は人気が出やすいといえます。実際に近年の日本では、ニトリやしまむら、100円ショップが業績を上げていますよね。また、レジャーは減る一方、日々の生活に根差したところでお金を使うようになるので、スーパーなどは安定しやすいといえます」

デフレのときには、生活に密着した低価格帯の商品や店舗をチェックすればいいというわけだ。ただし、デフレならではの注意点がある。

「インフレのときは、株式市場全体が盛り上がり、あらゆる業界の株価が上がる可能性がありますが、デフレ下ではそうはいきません。不景気だと株式市場全体が低迷しやすいため、しっかり企業を選別しないと利益を得にくいのです。株式投資を行う際は、社会全体や各企業の動向をしっかりチェックして、投資先を選びましょう」

安定的な投資を目指すなら「長期・積立・分散」

「お金の価値が上がるデフレ下では、現金で備えるといい」と教えてもらったが、あらゆる投資運用をやめて、現金だけにしていいということだろうか。

「理論上、デフレ下では現金が強いといえます。しかし、今の日本は預貯金の金利が低く、賃金も上がっていないため、デフレだからといってすべての資産を現金にしておくのは、リスクといえるでしょう。資産が増えないので、インフレに転じた際に打撃を受けかねないからです」

そうはいっても、デフレ下での株式投資はさらなるリスクがありそうだ。リスクを抑えつつ、利益を得られる運用方法について聞いた。

「デフレであってもインフレであっても、投資の基本である『長期』『積立』『分散』を押さえることが大切です。ドルコスト平均法で投資をすれば、株価が高いときには少ない口数でしか買えませんが、株価が低いときは口数を増やすことができます。その結果、平均購入単価を下げる効果があるので、株価が上がれば利益が得やすくなります。株価に応じて投資手法を変えるのではなく、少額でも着実に積み立て、株価の変動に動じずに続けていくことで、安定した利益につなげることができるでしょう。2022年6月現在のように『物価は上がっても給与は上がらない』といった異例の状態でも、『長期』『分散』『積立』を続けていくことが肝心です」

社会の変化をキャッチすることも重要だが、それとは別に粛々と積立投資を続けていくことも大切なのだ。「分散」を考える際には、外国にも目を向けるといいそう。

「例えば、日本がデフレだったとしても、ほかの国はインフレの可能性があります。国内だけでなく海外にも投資することで、リスクを下げることができるのです。『国際分散投資』を意識して、投資先を考えてみましょう」

インフレとデフレ、それぞれに利益を得やすい投資手法や投資先はあるものの、安定的な運用を目指すのであれば、株価に一喜一憂せずに積立投資を続けていくことがカギとなりそうだ。今回の話を参考に投資計画を立ててみよう。
(有竹亮介/verb)

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