物価が上がる「インフレ」はマイナスの影響だけではないらしい

「インフレ」「デフレ」が家計に与える影響って?

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最近、ニュースで耳にする機会の増えた「インフレ」。“物価が上がる時期”と、ざっくりと捉えている人も多いかもしれないが、実は家計にとってはそのほかの影響もあるようだ。

「インフレ」だけでなく、逆の状態である「デフレ」についても、どのような影響が考えられるのか、ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんに聞いた。

本来の「インフレ」は物価も賃金も上がる状況

インフレとは、継続的に物価が上昇していく状態を指す。物価が上がっていくということは、家計の負担が増えていくように感じるが、実際はそうとは限らないという。

「一般的に、インフレは好景気のときに起こるもので、物価上昇とともに賃金も上がっていく側面があります。そのため、多くの人にとっては、そこまで家計負担は増えないものと考えられるのです。給与が上がれば、購買力も上がって消費が増えます。商品やサービスの需要が高まると価格がさらに上がり、企業も利益を得やすくなり、さらに給与が上がるというスパイラルが生まれていくのです」(高山さん・以下同)

好景気によるインフレであれば、個人にとっても企業にとっても悪いことはなさそうに見える。

「インフレのときには、金利も上がる傾向があります。そのため、預貯金の金利が上がるので、預けているだけでお金が増える可能性があるのです」

ただし、金利が上がるということは、家計においてはメリットだけではないそう。

「住宅ローンの金利も上がるので、住宅を買う人にとっては負担が重くなるといえます。既に変動金利で住宅ローンを組んでいる人も、返済額が増える可能性が高いでしょう。また、物価の上昇は、お金の価値が下がることを意味します。例えば、100円のジュースが200円に値上がりしたとすると、100円の価値は半分になったといえるからです。物価上昇を上回る形で、給与や資産を増やしていくことが求められます」

「デフレ」で金利が下がるとローンを組みやすくなる

一方、デフレは継続的に物価が下落する状態のことを指す。単純に物価が下がれば、負担は減るように感じるが、実際のところはどうなのだろうか。

「一般消費者からすると、物価が下がれば家計負担は軽減するので、歓迎されることですよね。また、一般的には物価と共に金利も下がる傾向にあるので、住宅をはじめとしたローンを組みやすくなります。住宅購入の後押しになりますよね」

これまでの日本では、デフレが長く続いたため、「住宅ローン金利が史上最低」といわれるまでになったのだ。そうなると、デフレも悪いばかりではなさそうに感じるが。

「そもそもデフレは不景気のときに起こるもので、企業は利益を得にくく、賃金が上がりにくくなります。そのため、長い間デフレだった日本では、給与が上がっていないのだといえます。預貯金の金利も低くなるため、銀行に預けていてもお金は増えません」

デフレで給与が上がらないと、購買力が下がるため、企業の利益が少なくなり、給与がさらに下がるという負のスパイラルも生まれやすいという。

「ただ、企業にとっても金利負担が下がるというメリットはあります。デフレの方が金融機関からお金を借りやすくなるため、新たな工場を建てるなどの設備投資を行いやすくなるのです。デフレ下でのメリットを生かし、インフレに備えることができると、業績を上げやすくなるでしょう」

経済状況を踏まえて将来のための備えを

インフレ下では、物価の上昇とともに給与も上がるのが一般的。しかし、現在の日本は、物価が上がっているものの、給与が上がっているとはいえない。

「今はインフレとデフレ、それぞれの悪い部分が重なってしまっている印象です。長期的に見ると、少子高齢化がさらに進み、個々の社会保険料や税金が上がる可能性も高いでしょう。特に若い世代は先が長いので、将来に向けて備える必要があるでしょう」

給与が上がらない一方で、物価だけ上がるとなると、購買力は下がるため、企業は利益を得にくくなってしまう。そうならないためにも、物価上昇を見据えて資産を運用し、お金を増やしていくことが重要といえそうだ。

「インフレ下では金利が上がる傾向があるとはいえ、預貯金の金利はほとんどゼロに近い状況です。給与も増えないのであれば、資産運用を行ってお金を増やし、お金の価値が目減りする分を補う必要があります。貯めることもとても大切ですが、余裕資金があるならば運用も行うことで、将来の不安を軽くすることができるでしょう」

インフレだからきっと給与も上がるだろうと楽観視できない今の日本。できる備えを行っていくことが将来の自分のためになる。社会の状況を捉え、今何をするべきか考えてみよう。
(有竹亮介/verb)

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