REITのメリットとデメリットを比較!選ぶ際のポイントも解説
REITのメリットとしては、証券市場で自由に売買できる点や安定した分配金・相対的に高い利回りを期待できる点などが挙げられます。一方、災害リスクや投資法人の倒産リスクがおもなデメリットです。
本記事では、REITのメリット・デメリットをいくつか紹介したうえで、実際に投資する際のポイントを解説します。
REITの5つのメリット
REITは、Real Estate Investment Trustを略した用語で、不動産投資信託のことです。REITの詳しい内容については、以下の記事も参考にしてください。
REITで不動産投資を始めると、主に以下のメリットが期待できます。
1.証券市場で自由に売買できる
2.比較的少額で投資できる
3.物件管理の手間がかからない
4.長期的に安定した分配金が期待できる
5.相対的に高い分配金利回りが期待できる
REITのメリットを確認していきましょう。
1.証券市場で自由に売買できる
REITは証券市場に上場しているため、流動性が高く自由に売買できる点がメリットです。2022年6月1日現在、東証Jリート市場には61銘柄のREITが上場しています。
また、現物不動産は売却するにあたって査定や売却先探しなどの段階を踏まなければいけないのに対し、REITは現金が必要になった時に換金しやすい点もメリットです。
2.比較的少額で投資できる
実際に物件を購入して所有する不動産の現物投資には、最低でも数百万円以上の資金を要します。それに対し、REITには1単位10万円前後の銘柄も存在するため、比較的少額で投資できる点がメリットです。
少額で購入できることから、自己資金で複数の商品を購入しやすいです。値動きの異なる複数の商品に投資すれば分散投資になるため、リスク軽減にもつながります。
3.物件管理の手間がかからない
不動産の現物投資では、自分で物件を所有するため、火災保険料や固定資産税、修繕費などの維持コストや、管理会社への委託や入居者との賃貸契約などさまざまな手間がかかります。REITでは、物件の維持や入居者との契約など全て運用会社側が担うため、物件管理の手間がかからない点がメリットです。
また、REITは不動産投資の知識を有した専門家が運用するため、初心者や不動産管理の時間が確保できないという方も、手軽に不動産投資をはじめられます。
4.長期的に安定した収入が期待できる
不動産投資法人が投資家から集めた資金で運用をおこない、不動産の賃貸料や売却で得た収益の一部を投資家に分配するのがREITの仕組みです。REITで分配されるお金(分配金)の主な原資は賃料のため、投資家は入居者がいる限り長期的に安定した収入を得られる点がメリットです。
値動きが激しい株価と比べると、家賃収入は景気や社会情勢の急変がない限り短期間で大きく変動しません。
5.高い分配金利回りが期待できる
日本のREIT(J-REIT)の場合、不動産投資法人は利益の90%超を配当すれば法人税が実質的にかかりません。そのため、不動産投資法人はREITで得た不動産収入の多くを分配金にまわそうとするため、投資家は高い分配金利回りを期待できる点がメリットです。
なお、2022年6月末時点のJ-REIT平均分配金利回りは、3.73%でした(出所:日本取引所グループ「月刊REITレポート」)。
REITの4つのデメリット
メリットだけでなく、REITで不動産投資をすることによるデメリットもいくつか存在します。主なデメリットは、以下のとおりです。
1.災害リスク・価格変動リスクなどがある
2.投資法人の倒産・上場廃止リスクがある
3.REIT向けのローンは借りられない
4.配当控除が受けられない
REITの4つのデメリットを詳しく解説します。
1.災害リスク・価格変動リスクなどがある
不動産投資全般に共通することですが、災害リスクや価格変動リスクが存在する点がREITのデメリットです。
災害リスクとは、地震や台風などの影響からREITの投資対象不動産が損壊・損傷することで、収益が失われたり損失が発生したりするリスクのことです。日本は災害の多い国として知られるだけに、十分に注意しなければなりません。
また、価格変動リスクとは不動産市場や社会情勢の影響から価格が上昇したり下落したりするリスクです。価格変動リスクがあることで、売却時に投資元本を大幅に下回ってしまう恐れもあります。
2.投資法人の倒産・上場廃止リスクがある
万が一投資法人が倒産した場合、対象のREITは上場廃止となります。上場廃止基準は、証券取引所で独自に定められています。
上場廃止が決定されると、流動性が低くなり対象銘柄の価格が大幅に下落する恐れがある点がデメリットです。また、投資法人が清算される場合、全債権者に弁済した後の残余財産から投資金額を回収することになるため、投資金額全額を回収できないことがあります。
3.REIT向けのローンは借りられない
現物の不動産投資の場合、アパートローンや不動産投資ローンなどで金融機関から融資を受けられる場合があります。それに対し、一般的にREITの投資金額に対して融資する商品はありません。
ローンが借りられなければ、現物の不動産投資のように少ない自己資金で大きなリターンを狙うレバレッジ効果を働かすことができません。
ただし、レバレッジ効果が高ければその分リスクも大きくなります。REITでレバレッジを効かせにくいことはリスクを抑えられるというメリットの裏返しでもあるので、一概にデメリットといえない点も把握しておきましょう。
4.配当控除が受けられない
REITで受け取った分配金は、株式投資の配当金や投資信託の分配金と同じく配当所得に該当します。しかし、株式投資や投資信託では配当控除を受けられることがあるのに対し、REITの分配金は対象外である点がデメリットです。
また、REITはNISA口座を利用できますが、それ以外の部分での節税効果は決して高くありません。
参考:日本取引所グループ「上場制度-上場廃止基準」
参考:国税庁「No.1250 配当所得があるとき(配当控除)」
参考:金融庁「一般NISAの概要」
REITを選ぶ際のポイント
REITで投資をはじめる際は、メリットやデメリットを十分に理解しておくことが大切です。また、数十種類以上もあるため「自分がどの銘柄を購入すればよいかわからない」という場合は、以下のポイントに注目しながら選んでみましょう。
1.各指標に注目して選ぶ
2.エリアや不動産の種類から選ぶ
各ポイントについて、詳しく解説します。
1.各指標に注目して選ぶ
不動産投資には、分配金利回りやNAV(Net Asset Value)倍率、LTV(Loan To Value)といった指標が存在します。各指標を比較することで、銘柄の特徴を把握することができます。
分配金利回りは、投資金額に対するリターンの大きさを示した指標で、年間の予想分配金÷投資額で算出できます。分配金利回りが高いほど魅力的な銘柄といえますが、翌年度以降も同様の分配金が出るとはいえないため注意が必要です。
NAV倍率は、対象REITの現在価格が純資産の何倍であるかを示した指標で、1口当たり投資口価格÷ 1口当たり純資産額で算出できます。一般的に、計算結果が1倍を超えていれば割高、下回っていれば割安です。
LTVはREITの総資産に対する有利子負債の比率を示した指標で、有利子負債÷総資産で算出できます。有利子負債とは、借入金や社債など利息を付けて返さなければいけない負債のことです。一般的に、LTVが低ければ低いほど健全性が高いとされます。
2.エリアや不動産の種類から選ぶ
国や地域によって、リスクやリターンの大きさが異なるため、投資エリアに注目することがポイントです。また、投資対象の不動産の種類によっても特徴が異なります。
例えば、住宅は景気に左右されにくい分、一般的に利回りは低いです。一方、オフィスビルは大きなリターンが期待できる分、景気に左右されやすいという特徴があります。
REITのメリットを把握して不動産投資をはじめよう
REITは、証券市場で自由に売買できる、比較的少額で投資できる、物件管理の手間がかからないなどの点がメリットです。一方で、投資法人の倒産などにより上場廃止リスクがある点や他の不動産投資と同様に災害リスクや価格変動リスクを抱える点などがデメリットとして挙げられます。
不動産投資に関心がある方は、メリットやデメリットを意識しつつREITに挑戦してみましょう。
ライター:Editor HB
監修者:鈴木 靖子(ファイナンシャルプランナー、AFP認定者)
監修者の経歴:
銀行の財務企画や金融機関向けサービスに10年以上従事。企業のお金に関する業務に携わる中、その経験を人々の生活に生かすためFP資格を取得。現在は金融商品を売らない独立系FPとして執筆や相談業務を中心に活動中。フリーランスがお金の知識を持つことの大切さを実感しており、フリーランス向けマネーブログを運営している。