IPO株の買い方を理解しよう!4ステップに分けてわかりやすく解説
新規株式公開とも呼ばれるIPOの株を入手するには、買い方を理解しなければなりません。証券口座開設、目論見書確認、ブックビルディング申込、購入申込が主な流れです。
IPO株を取得しようとする方が買い方を理解できるように、各段階で必要な手続きについて詳しく解説します。
株価の決め方は主に2種類
IPOとは、Initial Public Offeringを省略した言葉で、未上場企業が自社の新規公開株式を公募・売り出すことです。日本語で新規株式公開と表現することもあります。
企業はIPOを選択することで、証券会社を通じて株式を一般投資家に売却し、資金調達が可能です。IPOについての詳しい概要は、以下の記事を参考にしてください。
IPOとは新規株式公開のこと!投資するメリットや注意点を解説
IPO企業の株価の決め方は、ブックビルディング方式と入札方式の2種類あります。ブックビルディング方式は投資家の需要状況に応じて公開価格を決定する方式で、入札方式は投資家が一定期間に希望価格を入札した結果に基づいて公開価格を決定する方式を指します。
現在はブックビルディング方式で決めることが主流のため、本記事はブックビルディング方式を前提として解説します。
IPO株が上場するまでの流れ
企業がIPO株を上場するには、まず証券取引所に上場申請しなければなりません。申請時には、申請直前2期間分の監査証明が必要です。
IPO株の上場承認以降の流れは以下の通りです。
1.IPO株の上場承認
2.仮条件決定・ブックビルディング
3.公開価格が決定
4.抽選・購入申込受付後に上場
各プロセスの概要を確認しておきましょう。
1.IPO株の上場承認
新規上場申請で提出された有価証券報告書の記載内容等に基づき、証券取引所から企業に対して書面質問やヒアリングなどをおこないます。質問事項への回答やヒアリングの結果、上場に問題がないと判断されると、IPO株が上場承認されます。
対象企業のIPO株が上場承認されたことは、上場予定の証券取引所のホームページで確認可能です。例えば、東京証券取引所(日本取引所グループ)で上場予定の場合、投資家は同社の「新規上場会社情報」を通じて上場承認の旨を確認できます。
2.仮条件決定・ブックビルディング
IPO株の上場承認後に、仮条件が公表されます。仮条件とは、証券会社が機関投資家や他の金融機関にヒアリングした結果や価格変動リスク、類似会社との比較などさまざまな点を考慮して決められる公開価格の価格帯のことです。
続いて仮条件の範囲で投資家が需要を申告するブックビルディングに入ります。対象IPOの主幹事や幹事を務める証券会社に証券口座がなければ、投資家はブックビルディングに参加できません。
3.公開価格が決定
ブックビルディングで投資家が提示した申し込み株式数や希望株価を参考に、上場予定企業と証券会社が最終的な公開価格を決定します。公開価格とは、新規で投資家に公開される株式の発行価格のことです。
上場後最初に取引が成立した値段(初値)が公開価格より高ければ、IPO株を所有する投資家は含み益を出していることになります。一方、初値が公開価格より低ければ、投資家は含み損を抱えます。
参考:日本証券業協会「金融・証券用語集 初値(はつね)」
参考:日本証券業協会「金融・証券用語集 含み益、含み損(ふくみえき、ふくみそん)」
4.抽選・購入申込受付後に上場
IPO株の購入を希望する投資家が多い場合、抽選が実施されます。主な抽選方法は、1人1票の抽選権をもつ「完全平等抽選」、一定条件を満たす投資家を優先する「優遇抽選」、各証券会社の裁量で大口先・得意先などに配分する「店頭配分」の主に3種類です。
抽選・購入申込受付を経て、最終的にIPO株上場に至ります。東京証券取引所の市場のひとつ、プライム市場の場合、一般的に上場する日(上場日)は、上場承認を発表してからおよそ1カ月後です。
IPO株の買い方を4ステップで理解しよう
IPO株の買い方は、通常の買い方と異なるため、ここから詳しく解説します。一般的な株の買い方については、以下の記事を参考にしてください。
「株の買い方を4STEPで紹介!押さえておきたい2つの注意点も説明」
投資家がIPO株を買う際の流れは、以下4ステップに分類できます。
1.IPO株を取り扱う証券会社で口座開設
2.目論見書を確認
3.ブックビルディングに申込
4.当選後に購入申込
それぞれ詳しく解説します。
1.IPO株を取り扱う証券会社で口座開設
まず、対象IPO株の幹事会社(主幹事、引受幹事、委託幹事)で証券口座を作っていなければなりません。持っていない場合は、口座を開設しておきましょう。
主幹事会社とは、全体の作業運営やスケジュール管理などで中心的役割を果たす証券会社です。そのほか、売れ残りが出た場合にIPO株を自社で買取ることでリスクを肩代わりしたり(IPOの引き受け)、一般投資家に販売したりもします。
引受幹事会社とは、IPOの引受・販売をおこなう証券会社です。委託幹事会社とは、各幹事からIPOの販売を委託された証券会社を指します。
2.目論見書を確認
企業は上場にあたって、対象のIPO株の内容を投資家に説明するための目論見書(もくろみしょ)を作成します。投資家は目論見書を読み、詳しい情報を把握します。
目論見書の情報量が多くて何を見ればよいかわからない場合でも、対象企業の業種・業務内容や既存株主、想定発行価格、発行株数、今後のスケジュール、主幹事証券や幹事証券、業績や財務データなどは最低限チェックしておきましょう。
3.ブックビルディングに申込
続いて、ブックビルディングに申し込みます。申込は、何円・何株購入を希望するかを幹事証券会社に提示することで可能です。
仮条件の範囲内であれば何円での提示も可能ですが、申込金額が公開価格を下回ってしまうとその後の申込抽選に参加できなくなります。どうしてもIPO株を入手したいのであれば、仮条件の上限金額で提示しておくとよいでしょう。
4.当選後に購入申込
ブックビルディング後、抽選対象外にされなければ、特段手続きなしにIPO株抽選に参加できます。当選した場合は、IPO株を入手するために購入申込が必要です。購入申込は、各幹事証券会社を通じて手続きができます。
なお、証券会社によっては、当選したにもかかわらずキャンセルした場合にペナルティを課されることがあるため注意しましょう。
IPO株を買う際に知っておくべきこと2つ
初心者でもIPO株の取得は可能です。しかし、IPO株ならではの特徴があるため、興味がある方は購入前に一定の知識を蓄えておきましょう。
特にIPO株を購入する前に知っておきたいポイントが以下の2つです。
1.申込株数が多いと当選確率が上がる場合がある
2.上場後に価格が下落することもある
それぞれ詳しく解説していきます。
1.複数の証券口座を保有していれば当選確率が上がる場合がある
抽選方式に完全平等抽選を採用している場合、どの申込者も付与されるのは各証券会社につき1抽選権のみのため、複数の株式に申し込み当選確率を上げることができません。
また、複数の証券会社で証券口座を保有していれば、その分IPO株抽選の機会も増えるため、当選確率は上がることが一般的です。
2.上場後に価格が下落することもある
一般的に、相場環境が良ければ公開価格より初値の方が高くなる傾向にあるため、IPO株は注目を集めます。しかし、初値が公開価格を下回る可能性や、初値が高くついても直後に下落する可能性がある点を理解しておかなければなりません。
また、IPO株の抽選に外れた際に、「上場後初値が高くついたから今後も上がる」と見込んで慌てて通常の方法で株式を購入すると、当該企業の業績や市況次第で株価が下落した際に損失を抱えることになります。
IPO株の買い方を理解して抽選に参加しよう
企業は、上場承認、仮条件決定・ブックビルディング、公開価格決定、抽選・購入申込受付というプロセスを経て、IPO株を上場します。一方、買い方の流れは、証券会社で口座開設、目論見書確認、ブックビルディング申込、当選後に購入申込です。
IPO株に関心のある方は、特徴や買い方を十分に理解した上で、抽選に参加してみましょう。
参考:日本証券業協会「金融・証券用語集 ブックビルディング方式(ぶっくびるでぃんぐほうしき)」
参考:日本証券業協会「金融・証券用語集 株式公開価格の決定(かぶしきこうかいかかくのけってい)」
参考:日本取引所グループ「新規上場基本情報」
ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。個人向けの投資信託、各種保険商品や、法人向けのデリバティブ商品等の金融商品関連業務の経験も長い。2012年3月ファイナンシャルプランナー1級取得。2016年2月日商簿記2級取得。現在は公益社団法人管理職。