「指数に連動しながら構成銘柄をカスタマイズ」できるらしい

米国発「ダイレクトインデックス」ってどんな投資商品?

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株式や債券、投資信託、ETFなど、投資商品にはさまざまなものがある。その中で、近年、アメリカで注目を集めているのが「ダイレクトインデックス」だ。投資家ごとに構成銘柄をカスタマイズできるインデックス投資だという。

まだ日本では扱われていない投資商品のようだが、いずれ展開する動きはあるのだろうか。野村総合研究所シニア研究員の前山拓哉さんに、「ダイレクトインデックス」の特徴やメリット、日本で導入される可能性について、聞いた。

メリットは「節税効果」「構成銘柄のカスタマイズ」

「ダイレクトインデックスは、TOPIXやS&P500などのインデックス(指数)に連動するインデックスファンド(投資信託の一種)に近い商品ですが、構成銘柄の中身を投資家自身がカスタマイズできます。構成銘柄のひとつひとつを個人単位で買うイメージの商品なので、特定の銘柄を増やしたり除外したり、投資ウェイトを調整することができるのです」(前山さん・以下同)

カスタマイズするとなるとかなりの手間がかかりそうだが、個人投資家でも利用できるものなのだろうか。

「どの銘柄のウェイトを上げたいか、除外したいかといったことを金融機関に伝えることで、金融機関側がそのロジックを織り込み、自動で売り買いしてくれるのがダイレクトインデックスです。そのため、投資家は自分の意思さえ伝えれば、自分で売り買いやリバランスのようなことをする必要はありません」

構成銘柄を変えるとなると、パフォーマンスに変化が出そうだが、インデックスファンドと比べて大幅に利益が出る、損失が出るということにはならないという

「特定の銘柄を外せばインデックスと連動しなくなる、と思うのは当然です。しかし、ダイレクトインデックスでは、除外した銘柄にもっともパフォーマンスが近い銘柄を買い足すなど、極力インデックスと連動するような調整を行うことで、リスク・リターンはインデックスファンドとほぼ同等を目指しています」

構成銘柄を変えることでパフォーマンスを上げる商品ではなく、あくまでカスタマイズできることが特徴となるようだが、投資するメリットはあるのだろうか。

「アメリカでは1990年代ごろからある商品なのですが、当初は節税効果を見込んでつくり出されたといわれています。アメリカは所得に応じて投資への課税率が異なるのですが、課税率50%程度の富裕層にとって、損失が出ている銘柄を売却して損失を確定させ、ほかの銘柄の利益と損益通算ができるダイレクトインデックスは重宝されたようです。この節税効果は、現在もダイレクトインデックスのメリットのひとつといえます」

現在は、節税効果以上にもうひとつのメリットに注目が集まったため、アメリカで盛り上がりを見せているとのこと。

「もうひとつのメリットが、自分が好きな銘柄を組み込むなどカスタマイズができるという点です。技術的な進歩でカスタマイズしやすくなったことに加え、端株取引が可能になり最低投資額が下がったこと、『ESGスコアの高い企業を増やしたい』『武器を製造する企業を除外したい』といった投資家のカスタマイズニーズが高まっていることが追い風となり、ここ3年くらいで富裕層以外のマス層にも浸透してきているのです」

アメリカでのダイレクトインデックスの資産規模は、2015年から2018年までは1000億~1300億ドルほどで推移していたが、2020年には約3500億ドルに増加。2025年には1兆5000億ドルに達するとの予測も出ているそう。

「カスタマイズというシステム的な負荷がかかるので、インデックスファンドと比べると手数料が高くなるというデメリットはあります。ただ、節税効果と相殺になる可能性もありますし、何よりカスタマイズできるというメリットの方が大きいため、アメリカでは成長しているのだと考えられます」

米国では“当たり前に存在する商品”になりつつある

ダイレクトインデックス市場の急成長を受けて、アメリカの金融機関も変化してきているという。

「グローバルな大手金融機関のほとんどは、システム開発を行っているフィンテック系ベンチャーと連携し、ダイレクトインデックスを提供している状況です。現在のアメリカは、サービスラインナップにダイレクトインデックスが入っていないと投資家が離れてしまう状態にあるので、当たり前に存在する商品になりつつあります」

ちなみに、構成銘柄のカスタマイズはいつでもできるところが多いようだ。

「金融機関のサービスにもよると思いますが、基本的にはいつでも構成銘柄を調整でき、その回数にも制限を設けていないところが多い印象です。『ESGスコアの高い企業のウェイトを上げたい』など、個別銘柄に限らず、業種や属性に応じたカスタマイズに対応するところも増えてきているようです」

カスタマイズとなると、金融機関と投資家のコミュニケーションが重要になるため、最近までは対面での販売が主だったという。

「投資家から聞いたニーズを投資に落とし込むには密なコミュニケーションが必要になるため、2021年までは対面での販売がほとんどでした。しかし、2022年に入ってからダイレクトインデックスもコストを下げる局面に入り、非対面でも提供できるよう、ロボアドのようなシステムを採用する金融機関も増えてきています。インターネット上で連動したいインデックスや除外したい業種などに関する質問を投資家に投げかけ、カスタマイズを行うというもので、実際に手数料も下がっているようです」

「投資初心者の新たな一歩」になり得るダイレクトインデックス

アメリカでは1990年代からあるダイレクトインデックスが、なぜ日本には導入されなかったのだろうか。

「大きな理由としては、日本の投資に対する税率は一律であり、アメリカの富裕層ほど節税ニーズが強くなかったことが挙げられるでしょう。また、投資のカスタマイズというハイレベルなニーズを持った投資家がいなかったことも、日本で広がらなかった理由のひとつと考えられます。ダイレクトインデックスを導入するにはシステム開発や人材の教育という先行投資が必要になるので、一定のニーズを確立できないと金融機関も動けないという現実があります」

日本に取り入れられなかった理由から考えると、徐々に投資への関心が高まりつつある現在の日本であれば、「カスタマイズできる」というダイレクトインデックスのメリットは今後響くかもしれない。

「日本でカスタマイズニーズが盛り上がるという仮説は立てられると思います。インデックスファンドで投資を始めて経験を積み、リスク・リターンだけで選ぶのではなく自分の思いも投資に乗せたいと考える投資家が増えれば、ダイレクトインデックスはそのニーズを満たすために必要な商品となるでしょう」

また、「ダイレクトインデックスは、投資初心者にとっても新たな一歩を踏み出すきっかけになり得る」と、前山さんは話す。

「インデックスファンドで投資を始めた後、新たな商品に踏み出したいと思っても、アクティブファンドや個別株となるとハードルが高いですよね。その点、リスク・リターンはインデックスファンドとほぼ同等で、自分の考えに基づいて構成銘柄を変えられるダイレクトインデックスは、投資の次なるステップになるのではないかと思います。既製品を少しカスタマイズできるような投資商品はいままでなかったので、日本にも入ってくる可能性は大いにあると感じています」

構成銘柄をカスタマイズできるという、ありそうでなかった「ダイレクトインデックス」。いまはまだ日本にはない投資商品だが、今後入ってくるかもしれない。いち早く特徴をつかんでおくと、導入されたときに投資の選択肢のひとつとして活用しやすくなるだろう。
(有竹亮介/verb)

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