若いほど「みんなが買ってるから自分も買う」傾向が高い!?

金融リテラシー調査から見えた「若者の投資の考え方」

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金融広報中央委員会が3年ぶりに実施・公表した「金融リテラシー調査」。18~79歳の男女3万人に金融リテラシー(お金に関する知識・判断力)や投資行動について聞いたもので、日本人の金融に対する考え方が見える結果が出ている。

金融リテラシー調査https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/literacy_chosa/

今回のデータからは、この調査のなかで18~29歳の特徴が色濃く出てきているようだ。そこに着目したのは、第一生命経済研究所総合調査部の鄭 美沙さん。果たしてどのような特徴がつかめたのか、聞いた。

若年層の間で投資意欲は高まりつつあるが…

「『金融リテラシー調査』から見えるものは、金融リテラシーと投資行動の傾向です。金融リテラシーに関しては、年齢や資産額が高いほど高くなるという関係が見られるのですが、実は2016年、2019年の調査と比較しても、全世代的に目立った変化が見られないという結果が出ています」(鄭さん・以下同)

●年齢層別金融リテラシー正誤問題正答率

出所/「金融リテラシー調査(2016年、2019年、2022年)」より第一生命経済研究所作成

「年代が高い人ほど金融リテラシーが高いのは、住宅ローンや保険に触れる、高額の買い物をするといった機会が多くなるため、自然と経験値が上がるからだと考えられます。若年層が低いのは、メディアを通じて金融経済情報に触れる頻度が低いことも関係しているかもしれません。18~29歳が金融経済情報を見る頻度は、他世代と比べてかなり低いという結果が出ています」

●年齢層別金融経済情報を見る頻度が月1回以下もしくはまったく見ない人の割合

出所/「金融リテラシー調査(2022年)」より第一生命経済研究所作成
※「金融リテラシー調査」Q.48「あなたは、新聞、雑誌、テレビ、インターネットなどを通じて、金融・経済情報をどのくらいみていますか」に対し、「月に1回程度」「上記より少ない頻度」「まったくみない」と回答した人の割合を合計。

年代ごとに金融リテラシーの差はあるものの、レベル感は各世代ともほぼ横ばい。一方で、投資行動には変化が出てきているという。

「『過去に1カ月の生活費を超える金額のお金を運用したことがあるか』『株式、投資信託、外貨預金・外貨MMFのいずれかひとつでも購入したことがあるか』といった設問に『ある』と回答した人の割合が、18~29歳で特に伸びていることがわかりました。この結果から、若年層の投資への関心は高まっていると考えられます」

●過去に1カ月の生活費を超える金額のお金を運用した人の割合

●株式、投資信託、外貨預金・外貨MMFのうち、いずれかひとつでも購入したことのある人の割合

出所/「金融リテラシー調査(2016年、2019年、2022年)」より第一生命経済研究所作成
※「過去に1カ月の生活費を超える金額のお金を運用した人」は、「金融リテラシー調査」Q.32「過去に1カ月の生活費を超える金額のお金を運用したことがありますか」に対し、「(他の金融機関あるいは他の金融商品と)比較したうえで、資産運用を行った」「比較せず、資産運用を行った」と回答した人の割合を合計。

金融リテラシーは上がっていない一方で、若年層の投資への関心は高まりを見せている。その理由を、鄭さんはこう分析する。

「もともと金融リテラシーのあった層が、昨今の株式市場の状況やスマホ証券などの普及で投資のハードルが下がったことを受けて、動き出したのかもしれません。ただ、一点、『金融リテラシー調査』で気になるデータが出てきています」

●金融商品購入者のうち、その商品性を理解せずに購入した人の割合(出典/金融リテラシー調査(2022年))
【全体】
株式 24.7%
投資信託 29.7%
外貨預金・外貨MMF 28.7%
【18~29歳】
株式 31.7%
投資信託 32.5%
外貨預金・外貨MMF 45.8%

「18~29歳で金融商品の特性を理解しないまま買っている人が、3割以上いることがわかります。ネット証券やスマホ証券を通じて投資しやすくなっている状況は、リスクを意識せずに投資できてしまうともいえます。この部分は、現代の問題点といえるでしょう」

「横並び行動バイアス」が投資に影響する可能性あり

商品性を理解せずに金融商品を購入してしまう。この行動には、若年層に特に多く見られる“ある判断軸”が関係している可能性があるとのこと。

「『金融リテラシー調査』では、金融行動への影響が強いと考えられる3つの行動バイアスも測っています。そのひとつである『横並び行動バイアス』が、若年層は他世代と比べて高く出ています。『横並び行動バイアス』とは、周囲の多くの人が取っている行動に追随しやすい傾向のことで、若年層は家族や同僚の行動、SNSなどの情報に影響されやすく、投資にも同じことがいえるのではないかと考えられるのです」

出典/金融広報中央委員会「金融リテラシー調査(2022年)」

「損失回避傾向」とは、利益を得た喜びの感情より同額の損失を被った悲しみを強く感じる傾向。「近視眼的行動バイアス」は、目先の利益にとらわれるあまりに長期的には不利益な行動を選択する、または目先の労力や負担を避けるために長期的には有利な行動を回避する心理的傾向。この2つは年齢を重ねるごとに高まる傾向があるが、「横並び行動バイアス」は若いほど高い。

「『横並び行動バイアス』が高いと、ボラティリティ(価格の変動性)が高い商品であっても、周囲の人が買っているなら自分も買う、という判断につながりかねません。そのため、一部の人は商品性を理解せずに買ってしまうのかもしれない。投資というよりも消費に近い感覚で、金融商品を取り入れているともいえます」

金融教育に必要なものは「横の一貫性」「デジタル化への対応」

投資への関心とあわせて、商品性の理解度も上げていくためには、ここ数年横ばいの状態にある金融リテラシーの向上が求められるだろう。

「今回の調査では、金融教育を受けた経験がある人の方が、金融教育を受けていない人よりも金融リテラシーに関する問題の正答率が高かったというデータも出ています。また、『金融教育を学校で行うべきか』と聞いた質問では、71.8%が『行うべきと思う』と回答し、金融教育のニーズが高いことも明らかになっています」

●金融教育経験別金融リテラシー正誤問題正答率

出所/「金融リテラシー調査(2022年)」より第一生命経済研究所作成
※「金融教育を受けた人」とは、「金融リテラシー調査」Q.39「在籍した学校、大学、勤務先において、生活設計や家計管理についての授業などの『金融教育』を受ける機会はありましたか」に対し、「受ける機会があり、自分は受けた」と回答した人。

金融教育が金融リテラシーに紐づくという裏づけがあり、世間のニーズがあるにもかかわらず、実際に金融教育を受けた人の割合はまだまだ少ない。

「これからの日本では、金融教育の量と質の向上が求められると考えられます。2022年から高校の家庭科の授業に資産形成に関する内容が盛り込まれるようになりましたが、どの程度のボリュームで教えるかは学校や教員次第です。また、家庭科の教員はもともとのカリキュラムもこなさなければならないため、一人で担ってもらうのは厳しいでしょう。外部人材の活用も議論すべきだと思います」

現在、公教育として取り入れられている金融教育の内容は、小学校から高校にかけて連続性のあるプログラムになっている。そこに加えて、「横の一貫性もプラスできるとなおいい」と、鄭さんは話す。

「横とは、複数の科目で金融や資産形成を扱うということ。現状、高校では家庭科と公民の授業で金融教育を取り入れていますが、複利の話は数学にかかわる部分です。数学ができる人ほど金融リテラシーが高いという研究もあるので、数学の授業で投資を扱うのもいいでしょうし、社会科でSDGsや環境問題を扱う流れでESG投資についても教えられるかもしれません。あらゆる教科と金融のつながりを意識した展開も必要でしょう」

さらに、デジタル化への対応も、金融教育においては重要な観点のひとつだという。

「スマホ証券や家計簿アプリなど、金融行動とフィンテックは切っても切れない関係になっています。これまで日本の情報教育では“危険性があるものは使わない”と制限をかけることが多かったのですが、もはやデジタル化は避けては通れないもの。海外ではデジタルシティズンシップ教育が注目されていますが、日本でもデジタルを用いて社会参加することを前提とした教育、金融とデジタルの融合を前向きにとらえていく教育にシフトするタイミングに来ていると考えています」

日本は、ようやく金融教育を公教育に取り入れた段階。この取り組みによって国民の金融リテラシーがどう変化するかはこれから見えてくるかもしれないが、一人ひとりの金融に対する意識も大切になってくるだろう。

(有竹亮介/verb)

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