【日経記事でマネートレーニング35】資産形成編(2)金融副業力を身につける~4つの視点でポートフォリオ構築
提供元:日本経済新聞社
このコーナーでは日経電子版や日本経済新聞の記事を題材に、投資のリテラシーや資産形成力の基礎知識を身につけることを目的にしています。
これまでは株式相場や金融市場に関するテーマが中心でしたが、2023年からは資産形成全体にジャンルを広げて解説します。毎回できるだけ異なるテーマを取り上げ、読み続けるうちにぐるりと資産形成の話題を一巡して網羅的体系的に基礎リテラシーが身につくように配信していく予定です。
2月は副業を取り上げます。副業は副業でも「金融副業力」です。私が2018年ごろからアピールしている株式投資や投信保有などへのアプローチで、厳密には資産形成ではなく資産活用の領域に入ります。これから投資を始めるひとはもちろん、すでにリスク資産を保有している方にも参考になるはずです。
安定性・継続性・現金性・資源投下――で線引き
サンプル記事をご覧ください。2022年以降、大手商社など企業の間で副業解禁を伝える記事が相次いで掲載されています。副業とはなんでしょうか?
業とはなりわいを意味し、生計を立てる手段という趣旨です。ですから宝くじや賭博では目的がかないません。本業を毎日の暮らしを支える収入のよりどころと考えると、副業はその「補完的な収入源」といえるでしょう。もう少し理屈っぽくいうと4つの条件・要素を満たす収入源です。
ひとつは安定性です。きょうは赤字だがあすは黒字かも、ではギャンブルです。晴れの日しか商売できない、というように日毎一定しないのも減点です。不定期・随時、スポット的で収入に継続性がないこともなりわいとはいえません。
3つ目は現金収入であること、もしくは生計を支えるための手段性、対価性などが求められます。たとえば、ふるさと納税の場合、謝礼品をリゾート宿泊に充てるのではなく生鮮食品に絞れば副業的アプローチといえるでしょう。
最後に資源の投入です。労働には自身のあらゆる資源を投じます。物理的労働だけではなく知見や経験、さらには時間など有形無形の「自己」資本を投じるわけです。ここでもギャンブルのような不労所得と異なり、投下資本を必要とする点が線引きになるでしょう。
生計を支え得る選択と構築、短中期売買やFXなどは対象外
上記の考え方を株式や投信などの金融資産、あるいは非課税の個人向け金融制度にあてはめ、副業的な視点で資産活用、資産運用に取り組むのが金融副業力です。
まず、イデコやつみたてニーサなど制度活用型の金融資産形成は収入ではなく支出です。リスク性資産に自動的に投じる点でリテラシーも不要ですし、労務や時間というような資源投下もありませんから副業性はありません。
大家さん、賃貸不動産の保有はどうでしょうか?これは立派な副業ですが、金融副業とはいいにくいですね。
株式や投信はやり方で副業性の有無が変わります。
投信ではたとえば、「複利効果が得られず買ってはいけない」と一部の評論家や識者が声高に否定する毎月分配型投信が副業性を帯びます。元本の取り崩しになるケースもありますが、毎月安定・継続してキャッシュを得られるので資産活用では有力な運用対象になりうるわけです。商品性が悪いのではなく使いようなのです。
同じ脈絡で株式だと、月に何回も回転売買したり、高成長期待の無配株で値上がり益を追求したりするような取引は副業とは相いれません。
逆に高利回り銘柄や好配当銘柄を保有し続けると副業性が高まります。
この考えを援用すれば外貨建て預金はOKだが、FXなど証拠金取引はなじまないというようにいろいろな金融商品の取捨が可能になります。
時期と収入を平準化、前提に要リテラシー
あたかも副業であるかのようにインカム収入を得る、そういうポートフォリオをどう構築すればよいでしょうか。一例を紹介しましょう。
ポイントはインカムゲインの時期を分散し、収入を平準化することです。
たとえば、3月期決算企業の高利回り株に集中させないで、12月期決算企業の高配当株も持つことで平準化できます。6月期や9月期の銘柄も探してみましょう。株式よりもREITやETF、債券型投信は決算期がさまざまですので時期を散らすにはおすすめです。株主優待も年に複数回利用できる企業があるので要注目です。
入金時期をならすことができれば、次は金額もある程度一定になるように調整します。こうしたポートフォリオを意識することで年金を補完する毎月一定額の資金が得られるようになります。
最後の最後にポートフォリオ全体のリスク(ブレ)が低くなるようチェックしましょう。過去に何度かこのコラムでふれていますが、銘柄を上手に組み合わせることでポートフォリオ全体の値動きを小さくすることが可能です。
12カ月にわたってインカムゲインを得られる副業型ポートフォリオには相応の資金も必要ですし、一朝一夕には構築できないので現役時代から長い時間をかけて取り組むことが求められます。
そして何よりもキャッシュが豊富で経営力、財務とも安定している銘柄を選別することが必要になるので、企業を分析できる高いリテラシーが求められます。まさにすべての点で副業ならしめる条件と一致するわけですね。
私の母親は他界していますが、生前は通信株を多く保有し、配当金を保険料や孫へのお小遣いなど様々な支出に充当していました。勉強さえすれば誰でもお手軽に取り組める金融副業にぜひ挑戦してみてください。
(日本経済新聞社コンテンツプロデューサー兼日経CNBC解説委員 田中彰一)
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