企業にとって賃上げは本当にマイナスか?
提供元:野村證券(FINTOS!編集部)
例年より高い伸びでの賃上げ表明が相次ぐ
岸田首相は、物価上昇率を上回る賃上げと、持続的に賃金が上がる構造を実現するため、労働市場改革を進める方針を示しました。歴史的なインフレが続く中、インフレ率を上回る賃金上昇でなければ、実質的な所得が目減りしてしまうため、2023年は賃上げ圧力が高くなっています。これに対し、例年よりも高い伸びでの賃上げを表明する企業が増加しています。
賃上げによる企業の利益への影響が懸念されるが・・・
日本企業の賃金は、高度経済成長から安定成長を遂げる中で1970年~1980年代にかけて、着実に上昇しました。しかしその後、2002年初から2007年末までの長期にわたる景気拡大局面では、企業利益の増加にも拘わらず、賃金が伸び悩む傾向が続いていました。春闘の賃上げ率は、前年比+2%程度で定着し、安倍政権下で賃上げが強く求められた時でも、2015年の同+2.38%が最大の伸び率でした。
足元で賃上げ圧力が高まる中、賃上げによる人件費の上昇が、企業の利益を圧迫することが懸念されます。しかし、日本企業はこの10年程で確実に成長し、経常利益は過去最高を更新し続けています。労働力人口が減少する中で、賃上げが人材の確保とともに、労働者の生産意欲の高まりと結びつき、企業の利益が一段と拡大する好循環を生み出すことが期待されます。
(野村證券投資情報部 澤田 麻希)