経済的豊かさトップは「三重県」最下位は「東京都」!?

移住を考えるなら「お金」も大事! もっとも安く暮らせる都道府県は?

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近年、取り上げられることが多い「移住」。以前は就労がネックになり移住をためらうケースもあったようだが、リモートワークが一般化したことで現在の仕事を続けながら移住するケースも出てきた。

都市部から地方に移住することで生活費を抑えられるというメリットがありそうだが、現実はどうなっているのだろうか。

首都圏と地方都市の両方で生活した経験のあるファイナンシャルプランナー・原絢子さんに、移住とお金の関係について聞いた。

「物価」「支出」「収入」から見る都道府県の特徴

「地方に移住すると、生活費を抑えられるというイメージがあると思います。実際にはどうなるのか、さまざまなデータを見てみましょう。最初に見ていくのは、総務省が出している消費者物価指数の全国平均を100とした際の各地域の水準を示した『消費者物価地域差指数』です。数値が高いほうが物価が高い地域ということになります」(原さん・以下同)

●消費者物価地域差指数が大きい都道府県

●消費者物価地域差指数が小さい都道府県

出所:総務省「消費者物価地域差指数 -小売物価統計調査(構造編)2021年(令和3年)結果-」

「単純に物価だけを見ると、消費者物価地域差指数の小さい宮崎県、群馬県、鹿児島県などは生活費を抑えられるといえます。ただし、ネット通販で買い物をする暮らしをしていたら、物価は関係ありません。もう少し生活に即したデータとして、同じく総務省が出している家計調査の統計を見てみましょう」

●二人以上世帯のひと月の消費支出が大きい都道府県


●二人以上世帯のひと月の消費支出が小さい都道府県
出所:総務省「統計でみる都道府県のすがた2022」

「消費支出とは、食費や水道光熱費、住居費、家具用品費、被服費、医療費、交通費、教育費など、あらゆる生活費を網羅したものなので、物価指数よりも現実的な数字といえるでしょう。沖縄県がダントツで低く、愛媛県、和歌山県などが続きます。大阪府の消費支出が意外と少ないのは、節約上手な県民性が関係しているかもしれません。ちなみに、固定費のなかでも特に大きな住居費を抑えられると、生活費が少なくなりやすいといえます」

地方ほど住居費は低い傾向にあるが、地方に移住したからといって、必ずしも生活費を抑えられるとは限らないという。

「地方は車社会であることがほとんどで、大人一人に一台ないと生活がままならない地域もあります。そうなると、住居費は抑えられても車両費がかかる可能性が出てくるのです。また、特に寒冷地においては、冬場の光熱費が高くなりやすいという特徴があります。住居費と車両費、光熱費のバランスが取れるか、シミュレーションすることが大切です」

支出だけでなく収入に関するデータもチェックすることで、興味深い傾向が見えてくるという。

●二人以上世帯のひと月の実収入が大きい都道府県

●二人以上世帯のひと月の実収入が小さい都道府県

出所:総務省「統計でみる都道府県のすがた2022」

「消費支出と実収入のデータから、生活費が抑えられる地域ほど収入も下がる可能性があるということがわかります。地方にはほとんど大企業がないので、都市部から地方に転職する、または地方で起業する場合は、収入が2~3割減ると考えておいたほうがいいでしょう。生活費が下がることだけを見るのではなく、自身や家族のライフプランを立てたうえで、移住を考えることが大切です」

「経済的豊かさ」は都市部より地方が高い!?

原さんが「もうひとつ、興味深いデータがある」と教えてくれたのは、2021年3月に開催された「企業等の東京一極集中に関する懇談会」の参考資料として国土交通省が提出した「都道府県別の経済的豊かさ」に関する調査の結果。

「各都道府県の『中央世帯(可処分所得上位40~60%の世帯)』を対象にした調査で、収入から税金などを差し引いた『可処分所得』と『基礎支出(食費・水道光熱費・住居費)』に加え、『可処分所得』から『基礎支出』を引いた差額がランキング化されています。差額が大きいほど自由に使えるお金が多く、経済的に豊かであるとしたデータです」

●ひと月の可処分所得ランキング

●ひと月の基礎支出ランキング

●差額(可処分所得-基礎支出)ランキング

出所:国土交通省「都道府県別の経済的豊かさ(可処分所得と基礎支出)」

「このデータでは、三重県、富山県、茨城県が経済的に豊かだといえます。東京都も『可処分所得』では12位と、決して可処分所得が低いわけではないのですが、『基礎支出』がずば抜けて高いために、『差額』では42位となっています」

さらに、この調査では、通勤時間を費用換算した金額(通勤の機会費用)を「差額」から差し引いたランキングも出している。

「通勤の機会費用は、通勤時間に出勤日数や時給を乗じて算出したものであり、通勤によってどれだけ金銭的に損失があるかを示しています。通勤時間が長く、時給が高い傾向にある都市部が上位に入っています」

●通勤の機会費用ランキング

※通勤の機会費用については、次の統計の数値をもとに算出。「平成30年住宅土地統計の通勤時間」、「令和元年毎月勤労統計地方調査における一ヶ月当たり出勤日数」及び「令和元年賃金構造基本統計における一時間当たり所定内給与」の積。(所定内給与は居住都道府県における数値を適用)

●「差額-通勤の機会費用」ランキング

出所:国土交通省「都道府県別の経済的豊かさ(可処分所得と基礎支出)」

首都圏の神奈川県、千葉県、埼玉県は通勤時間が長い人が多いことから差額がさらに小さくなり、経済的豊かさが低くなっている。東京都に関しては、もっとも経済的豊かさが低いという結果に。一方、経済的に豊かな都道府県は三重県、富山県、山形県、茨城県と、前述のランキングとほぼ変わっていない。

「首都圏だと1時間~1時間半かけて電車で通勤する人も多いのですが、地方では自動車通勤が一般的で通勤時間も30分以内の人がほとんどということが、結果に影響しているといえます。地方のほうが収入は少ないものの、通勤時間が短く、家族と過ごす時間や趣味に費やす時間が得やすいというメリットがあるといえそうです」

原さん自身、通勤手段が電車から車に変わったことで、思いがけない作用があったという。

「私の経験談ですが、自動車通勤だと家と職場の単純な往復になるので、帰り道に最寄り駅のデパ地下でお総菜やスイーツを買うといったことがなくなり、食費の節約という効果が得られました。このような点では、地方のほうが生活費を抑えられるといえるかもしれません」

移住先の検討で大切なのは自分と家族の「ライフプラン」

さまざまなデータを見てきたが、総合的にどの都道府県が金銭面において暮らしやすいといえるのだろうか。

「生活費はその人の生活次第という側面があるので、一概に『ここの生活費が安い』と言うのは難しいところがあります。物価や消費支出が低い都道府県に住んだとしても、連日外食をするような生活をしていたら、生活費は膨らんでいきます。客観的なデータをきっかけに各都道府県を知ることは大切ですが、移住を考える場合は、自分がどのような生活を送りたいかを考えて、その希望にマッチした地域を選ぶことが重要です」

生活費において個人差が出てくるポイントのひとつに、子育てに関する部分が挙げられるという。

「いま、少子化・過疎化対策として、子育て支援に力を入れる自治体が増えています。例えば、新潟県佐渡市は子どもが生まれると一律10万円の出生祝い金が支給され、第3子以降は成長祝い金もプラスされて総額200万円が支給されます。長野県飯綱町では誕生祝い金に加え、卒園・卒業時にも祝い金を支給しています(※)。自治体から補助金などを得ることができれば、生活もラクになりますよね。支援制度を探す場合は、都道府県ではなく市区町村の情報を見ていくことをおすすめします」

※自治体の子育て支援の内容は頻繁に更新されるため、予め確認が必要。

ただし、子育て費用に関しても、必ずしも地方であれば抑えられるとは限らないそう。

「都市部と比べると地方のほうが学校や習い事の選択肢が少ないので、教育にかける費用は抑えやすい面があります。ただし、大学進学の際に都市部の大学を選ぶとなると、1人暮らしの費用や仕送りも考えなければいけません。目先の生活費だけでなく、自分や家族のライフプランをトータルで考えた時にどこに住むといいか、考えられるとベストです。移住の検討を機に、改めてどのような生活を送りたいか、考える機会にできるといいと思います」

思い描くライフプランによって、ベストな地域は変わってくる。移住を考える場合は、理想の人生を思い描きながら、物価や消費支出、経済的豊かさのデータをもとに各都道府県を知るところから始めてみよう。
(有竹亮介/verb)

お話を伺った方
原 絢子
ファイナンシャルプランナー。FPサテライト所属。自身で保険の見直しを行った際にお金の知識を身につけることの大切さを実感し、ファイナンシャルプランナーの資格を取得して活動を開始。移住に関する相談にも対応している。モットーは“自分のお金を他人任せにしない”。
著者サイト:https://fpsatellite.co.jp/
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