自由に使えるお金が減る?
国民負担率46.8%は今後も上昇するのか
提供元:Mocha(モカ)
「税込給与の約半分が税金や社会保険料」これは本当の話で、それを表しているのが国民負担率です。財務省の統計資料によると、昭和50年度の国民負担率は25.7%でした。それが年々増えたり減ったりを繰り返し、平成21年度からは年々ほぼ増加の一途をたどっています。2023年度の国民負担率は46.8%になる見通しですが、今後も国民負担率の上昇は続くのでしょうか?そこで今回は、国民負担率についてと今度の動向について解説します。
2023年度の国民負担率は46.8%の見通し
財務省は、2023年度の国民負担率は46.8%になる見通しと発表しました。
国民負担率とは、国民所得に占める税金や社会保障費の割合のことです。その計算式は以下の通りです。
〇国民負担率(%)=(租税負担+社会保障負担)÷ 国民所得(個人や企業の所得)
2022年度までの日本の国民負担率は、以下のような推移となっています。
●国民負担率の推移
では、主な年度の負担率をピックアップしてみます。
・1999年度(平成11年度) 35.4%
・2009年度(平成21年度) 37.4%
・2019年度(令和元年度) 44.4%
これだけを見ても、ここ20年は国民負担率が年々増加していることがわかります。
このあとコロナ禍になり、国民負担率は以下のように推移します。
・2020年度(令和2年度) 47.9%
・2021年度(令和3年度) 48.1%
・2022年度(令和4年度) 47.5%(実績見込み)
・2023年度(令和5年度) 46.8%(見通し)
※2021年度から2023年度は財務省「令和5年度の国民負担率を公表します」より。上記グラフの数値から変更になっています。
コロナ禍のピーク時よりは下がっていますが、それでも国民負担率は5割に近い数値が続いています。ネット上でも、2022年度の国民負担率の実績見込みが47.5%になると報じられると、江戸時代の年貢の割合を示す「五公五民」(収穫した米の5割を年貢として納めること)という言葉が話題になりました。
国民負担率が増えるとどうなるの?
国民負担率が増えるということは、私たちの税金や社会保険料の負担が増えることを表しています。2023年度の見通しでいうと、税込年収の46.8%が税金と社会保険料で天引きされ、53.2%しか手元に残らないということです。この中から生活費などを負担するわけですから、物価が上がれば生活費として消えていくお金が増えることになります。これはつまり、私たちが自由に使えるお金が減るということです。国民負担率がさらに上昇すれば、余暇や好きなことに使えるお金を捻出する余裕がなくなるかもしれません。
こうして国民負担率だけを見ると、税金などの負担が増えて損をしているように見えるかもしれません。しかし、国民負担率が高いということは、社会保障サービスが充実していることにもなるのです。
ここで主な諸外国の2019年度の国民負担率を見てみましょう。
・米国 32.4%
・イギリス 46.5%
・フランス 67.1%
・スウェーデン 56.4%
・フィンランド 61.5%
たとえば、米国は日本に比べると国民負担率はかなり低いです。しかし、米国は国民皆保険制度ではないので、社会保障負担が少ない代わりに、医療費の自己負担はかなり高額です。
そして、北欧のスウェーデンとフィンランドの国民負担率は日本よりもかなり高くなっています。ただ、消費税や社会保障費の負担が多い代わりに、福祉サービスがかなり充実しています。
日本でも、医療費は国民皆保険制度で一定割合の負担で済みますし、介護保険制度でも限度額までは自己負担が抑えられます。北欧諸国ほどの充実度というわけではありませんが、福祉サービスは受けられているので決して損をしているわけではないのです。
ただ、さらなる福祉サービスの充実を期待するなら、国民負担率の上昇は避けられないでしょう。あとは大企業に広がる賃上げが中小企業などにも広がり、社会全体での収入アップが実現することを期待するばかりです。
国民負担率の今後の動向はどうなる?
今、超高齢化社会が進行中です。2025年には団塊世代が75歳以上となり、さらには出生率の低下で今後も少子高齢化は避けられない見通しです。高齢者を支える現役世代の人口が減少するため、場合によっては増税や社会保険料の値上げに至る可能性があります。そのため、今後の国民負担率は増加の方向に進んでいくことが考えられます。
ただ、今後は国民負担率が増えたとしても、子育て支援をはじめとする福祉サービスが充実することを期待したいです。子どもから高齢者まで、福祉サービスが充実すれば、国民の負担感も少しは薄れるのではないでしょうか。私たちは収入の半分近くの税金と社会保険料を納めているわけですから、所得アップと福祉サービスのさらなる充実につながる国の政策が実現することを期待したいものです。
[執筆:ファイナンシャルプランナー 前佛朋子]
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