有価証券報告書とは法律で提出が義務づけられた書類!従業員の平均年収の確認も可能

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有価証券報告書とは、上場会社や一部の非上場会社に提出が義務付けられている書類です。会社の概況や事業・設備の状況など幅広い情報が盛り込まれています。

本記事では、有価証券報告書に記載されている内容を詳しく解説します。

有価証券報告書とは

有価証券報告書とは、会社の概況や事業、設備などの状況、財務状況まで多岐にわたる情報が盛り込まれている書類のことです。ここでは、有価証券報告書の概要について、詳しく解説します。

法律で提出が義務付けられている

上場会社は各事業年度終了後原則3カ月以内に、有価証券報告書を内閣総理大臣へ提出することが義務付けられています(金融商品取引法第24条)。上場会社とは、発行する株式を証券取引所で売買する資格を与えられた会社のことです。

また、たとえ上場していない会社(非上場会社)であっても、以下に該当する場合は同じように有価証券報告書を提出しなければなりません。

・店頭登録会社
・有価証券届出書提出会社
・過去5年間に、事業年度末日時点の株主数が1,000人以上となったことがある有価証券発行者

店頭登録会社とは、取引所を通さずに証券会社や金融機関などの店頭で取引する「店頭市場」で取引を認められている会社のことです。

なお、有価証券報告書で開示する財務諸表は、原則公認会計士か監査法人の監査証明を受けなければなりません(金融商品取引法第193条の2)。

各社ウェブサイトなどで確認できる

有価証券報告書は、各社ウェブサイトやEDINET、TDnetなどで見られます。

EDINET(エディネット)とは、金融商品取引法に基づく開示書類を電子開示するために開発されたシステムのことです。有価証券に関する情報を正確・公平かつ適時に開示するため、基本的に24時間365日稼働しています。

また、TDnet(適時開示情報伝達システム)とは、投資判断上重要な上場会社の情報を掲載するシステムのことです。東京証券取引所が運営しています。

決算書の内容も含まれている

有価証券報告書には、決算書の内容も含まれています。決算書とは、財務状態を表す書類(財務諸表)のことです。

財務諸表の具体例として、以下の書類が挙げられます。

・貸借対照表
・損益計算書
・キャッシュ・フロー計算書
・株主資本等変動計算書

決算書の内容は、出資者の投資判断や金融機関の融資判断の参考材料としても使われる大切なものです。

対象企業の従業員の平均年収もわかる

有価証券報告書を読めば、対象企業の従業員の平均年収も確認できます。

EDINETを使う場合、確認方法は以下のとおりです。

1. 「書類簡易検索」で会社名などを入力して有価証券報告書を開く
2. 左側にある目次から「第一部 企業情報」「第1 企業の概況」「5 従業員の状況」をクリックする
3. 従業員の「平均年間給与(円)」を確認する

なお、2021年度の東京商工リサーチの調査によると、有価証券報告書をもとに分析した上場会社3,213社の平均年間給与は、605万5千円でした(前年比+10万4千円)。

情報量が決算短信とは異なる

「決算短信」は、有価証券報告書と同様に企業の決算内容をまとめた書類です。ただし、有価証券報告書が各事業年度終了後3カ月以内の提出が義務付けられているのに対し、決算短信は決算日から遅くとも原則45日以内の開示が適当とされています。

有価証券報告書の方が発表までに時間がかかる分、速報性を重視する決算短信よりも情報量が多く、正確性も高いです。決算短信についてより詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
「決算短信とはどんな書類?いつどこで見られるのかも解説」

参考:東京商工リサーチ「上場3,213社 平均給与605万5,000円、2018年度に並びこの10年で最高 ~ 2021年度「平均年間給与」調査 ~」

有価証券報告書に記載されていること

有価証券報告書に記載されている内容は、主に以下のとおりです。

・企業の概況
・事業の状況
・設備の状況
・提出会社の状況
・経理の状況
・株式事務の概要

それぞれの具体的な記載内容を解説します。

企業の概況

企業の概況には、会社(企業)の基本的な情報が記載されています。主な内容は以下のとおりです。

・主要な経営指標等の推移
・沿革
・事業の内容
・関係会社の状況
・従業員の状況

「主要な経営指標等の推移」は、売上高や経常利益・当期純利益や純資産額などを示したものです。「沿革」には、設立年月や上場した年月などが記載されます。

「事業の内容」は、グループ企業を構成する会社を示したものです。また「関係会社の状況」では、関係会社の名称や資本金、事業内容、関係内容などが記載されています。

「従業員の状況」は、対象会社の従業員数や平均年齢、平均年間給与などを示したものです。

事業の状況

事業の状況は、企業の概況以上に詳細な情報を示したものです。主に以下の内容が記載されています。

・経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
・事業等のリスク
・経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
・経営上の重要な契約等
・研究開発活動

「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」には、対象企業の経営方針・経営計画や戦略、経営環境などが記載されています。「事業等のリスク」は、投資者の判断に重要な影響をおよぼす可能性のある事項をまとめたものです。

「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」には、経営成績や借入先の状況、キャッシュ・フローの状況が記載されています。

設備の状況

設備の状況では、どの設備にどのような投資をしているかを示しています。主な内容は以下のとおりです。

・設備投資等の概要
・主要な設備の状況
・設備の新設、除却等の計画

「設備投資等の概要」には、各事業や全体でいくらの設備投資を実施したか記載されています。「主要な設備の状況」は、各設備の内容や帳簿価額などを示したものです。

「設備の新設、除却等の計画」では、現時点で計画している重要な設備の新設や改修についてまとめています。

提出会社の状況

提出会社の情報では、配当政策など主に株式に関する情報をまとめています。主な内容は以下のとおりです。

・株式等の状況
・自己株式の取得等の状況
・配当政策
・株価の推移
・役員の状況
・コーポレートガバナンスの状況等

「株式等の状況」には、発行済みの株式数や大株主の氏名や所有株式数などがまとめられています。また、「配当政策」とは配当を通じた株主還元の方針について企業が示したものです。

「コーポレートガバナンスの状況等」には、企業のコーポレートガバナンスに関する考え方が記載されています。企業経営を監視する仕組み(企業統治)のことです。

経理の状況

経理の状況には、連結財務諸表や財務諸表などが記載されます。

連結財務諸表に含まれるのは、主に以下のとおりです。

・連結貸借対照表
・連結損益計算書
・連結包括利益計算書
・連結株主資本等変動計算書
・連結キャッシュ・フロー計算書
・注記事項

また、財務諸表には主に以下の内容が含まれます。

・貸借対照表
・損益計算書
・製造原価明細書
・株主資本等変動計算書
・注記事項

投資家は経理の状況を確認すれば、決算書の内容がわかります。

株式事務の概要

(提出会社の)株式事務の概要には、事務的な情報が記載されます。主な内容は以下のとおりです。

・事業年度
・定時株主総会
・基準日
・1単元の株式数
・公告掲載方法

「1単元の株式数」とは、通常の株式取引で売買される単位のことを指します。また、「公告掲載方法」は、債権者や株主に伝えなければならない事柄をどの媒体を通じて伝えるか示したものです。

今回紹介した有価証券報告書に記載されている項目以外に、「提出会社の参考情報」や「提出会社の保証会社等の情報」があります。「提出会社の参考情報」は、「親会社の情報」やその他の参考情報などが記載したものです。

「提出会社の保証会社等の情報」は、有価証券発行にあたって保証会社が関連する際に記載します。

株式投資にあたって確認すべきポイント

有価証券報告書にはさまざまな情報が掲載されているため、株式投資の参考になるでしょう。有価証券報告書を確認する際は、経営数値などの指標をチェックすることがポイントです。

たとえば、企業の概況の「主要な経営指標等の推移」を見る方法があります。過去と比較し、異常な数値がないか確認してみましょう。

また、経理の状況にある「貸借対照表」や「損益計算書」を確認する方法もあります。各数値から自己資本比率や流動比率などの指標を計算すれば、より企業のことがわかるでしょう。

有価証券報告書とは企業が外部へ開示する資料

有価証券報告書とは、企業が外部へ開示するために多岐にわたる情報をまとめた書類です。決算短信よりも発表までに時間がかかる分、詳細な情報が盛り込まれています。

具体的に記載されている情報は、会社の概況や事業、設備などの状況、財務状況などです。株式投資を始めた方や今後検討中の方は、まず興味のある会社の有価証券報告書を確認してみましょう。

参考:日本取引所グループ「有価証券報告書」
参考:EDINET「書類簡易検索」

ライター:Editor HB
監修者:鈴木 靖子(ファイナンシャルプランナー、AFP認定者)
監修者の経歴:
監修者の経歴:銀行の財務企画や金融機関向けサービスに10年以上従事。企業のお金に関する業務に携わる中、その経験を人々の生活に活かすためにFP資格を取得。現在は金融商品を売らない独立系FPとして執筆や相談業務を中心に活動中。フリーランスがお金の知識を持つことの大切さを実感しており、フリーランス向けマネーブログを運営している。

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