投資信託のトレンドが分かる!
2023年7月 投資信託の資金フロー
提供元:三菱アセット・ブレインズ
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投資信託は個人の資産形成における中心的な金融商品として多くの人が利用している。投資信託の資金流出入などの動向は、資産形成を考えるうえで重要な情報だろう。
そこで、毎年1000ファンド以上の投資信託を評価・分析する三菱アセット・ブレインズより、以下で2023年7月における投信市場の動向(注)についてご紹介する。
(注)ETF、DC専用、SMA専用、公社債投信等を除いた公募投信
1.投信市場における資金の流出入動向
「前月に引き続き、当月も資金流入超」
資金流出入は約7,080億円の資金流入超と、前月(約3,500億円の流入超)に引き続き流入超となった。
資産別の資金流入では、流入額の大きい順に、外国株式(約3,390億円)、国内株式(約1,440億円)、エマージング株式(約1,180億円)となった。当月は利上げ長期化への懸念が世界的に後退し株価が堅調に推移したことで、国内外の株式型ファンドを中心に資金が集まった。また、エマージング株式は10ヵ月連続で資金流入超となった。主に景気が堅調に拡大しているインドに関連するファンドを中心に資金が流入した。
資産別の資金流出では、不動産投信(▲約200億円)、エマージング債券(▲約5億円)のみ流出超となった。不動産投信は15ヵ月ぶりの資金流出超となった。米景気の底堅さが好感され先進国を主要投資対象地域とする不動産投信を中心に評価額が上昇し、利益確定売りが優勢となったことなどが影響した。
個別ファンドでは、前月に引き続き「インベスコ世界厳選株式オープン(ヘッジなし・毎月決算型)」(インベスコ)(約850億円)が資金流入で1位となった。2位は「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」(三菱UFJ国際)(約710億円)、3位は「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」(三菱UFJ国際)(約630億円)となった。
主要資産の資金流出入動向(過去3ヵ月と直近月)
2.投信市場のパフォーマンス動向
「エマージング株式、外国株式がパフォーマンス上位」
7月の金融市場は、各国でインフレ率の鈍化が見られたことから利上げ長期化への懸念が後退し、国内外株式を中心に株価は上昇した。金利は各国で小幅に上昇した。
株式市場は、インフレ率の鈍化や堅調な米経済指標を好感しおおむね上昇した。
米欧株式は、月前半は米雇用統計が市場予想を上回ったことを受けて米長期金利が上昇し上値の重い展開となった。月中旬は、インフレ率の鈍化を受けて米長期金利が低下したことからハイテク株を中心に株価は反発した。その後月下旬にかけて米ハイテク企業の好決算などを受けて株価はさらに上昇し、S&P500は昨年4月以来の高値圏となった。
日本株式は、月前半は大企業の業況判断が改善したことを受けて株価が上昇した後、利益確定売りが優勢となり株価は下落した。月中旬は、米長期金利低下に伴う日米金利差縮小から円高が進行し、株価はおおむね横ばいと上値の重い展開となった。その後月下旬にかけては緩やかに上昇し、東証株価指数(TOPIX)は1990年7月以来の高値を付けた。
債券市場は、日米独金利は上昇(債券価格は下落)した。
米10年国債利回りは、月前半は米雇用統計が市場予想を上回ったことなどから米国の底堅い景気を受けて4.1%付近まで上昇した。月中旬は追加利上げ長期化への懸念が後退し3.7%付近まで低下した。月後半は良好な雇用環境やFOMC(米連邦公開市場委員会)による追加利上げが決定したことから再び4.0%付近まで上昇した。
独10年国債利回りは、月前半は2.7%強まで上昇するも、月中旬以降経済指標の悪化などから景気先行き懸念がくすぶり2.4%付近まで低下した。日本10年国債利回りは、月前半から中旬にかけて横ばいとなったが、月後半は日銀が長短金利操作の運用柔軟化を決めたことを受けて0.65%強まで上昇した。
為替市場は、米ドル・円、ユーロ・円ともにやや円高が進行した。米欧の長期金利が一時低下したことから国内外の金利差が縮小したことが影響した。ユーロ・米ドルでは、米国で利上げ長期化懸念が後退したことからユーロ高がやや進行した。
これらを背景に、当月はエマージング株式、外国株式がパフォーマンス上位となった。外国株式は米長期金利上昇の影響から評価額が一時下落するも、好調な経済指標から米国の底堅い景気が好感されリターンは上昇した。
エマージング株式は、景気が堅調に拡大しているインドや景気刺激策への期待から株価が上昇した中国などがプラスに寄与した。ただし、中国は、軟調な経済指標や不動産市況の低迷などからゼロコロナ政策解除後の景気減速が目立っており今度の動向には注視する必要がある。
パフォーマンス上位5資産のランキングと実績
3.新規設定ファンドの動向
「設定本数、設定額ともに前月とほぼ同水準」
当月の新規設定は29本、設定額は約1,160億円と、本数・設定額ともに前月(28本、約1,150億円)とほぼ同水準であった。設定額は1位の外国株式型ファンドで全体の約5割を占めた。
新規設定ファンドのうち、設定額が最も多かったのは、「半導体関連世界株式戦略ファンド」(三井住友トラスト)(約560億円)、次いで「あおぞら・新グローバル分散ファンド(限定追加型)2023-07(あおぞら)(約160億円)となった。
1位の半導体関連世界株式戦略ファンドは、世界の半導体関連企業の中から成長性や株価の割安度を分析し銘柄を選定するテーマ型ファンドである。なお、当ファンドの実質的な運用はマニュライフ・インベストメント・マネジメント社が行う。
新規設定金額、設定本数の推移
最後に、7月の資金流入上位15ファンドを掲載しておく。
資金流入上位15ファンド一覧
(三菱アセット・ブレインズ)